ドイツの小学校と就学猶予について | ドイツの木のおもちゃ ホルツリーベ

ドイツの木のおもちゃ ホルツリーベ

ドイツの障害者福祉工房で作られたおもちゃを日本にご紹介しています。
ヨーロッパの厳しい安全基準CE規格に合格した、
赤ちゃんにも安心のおもちゃです。


ドイツの木のおもちゃ ホルツリーベ

↑ ドイツの小学校校内。壁がピンクでドアやロッカーは赤で、とても明るくてきれいです。


新学期なので、日本とは大きく制度が異なりとても興味深い、ドイツの小学校入学の年齢についてご紹介します。

日本の学校はどこも新学期が始まるのは4月ですが、ドイツの学校は夏休みが終わってから新学期が始まります。夏休みの時期は毎年、しかも州ごとに異なります。(以前も書きましたが、夏休みは民族大移動のように誰もが長期バカンスに出るので、夏休みをずらさないと国中渋滞して大変だからという理由からです。)だいたい、8月中旬から、9月上旬に新学期がはじまる場合が多いです。

そして更に驚くべきことに、日本と違い学齢期に幅があります。日本だと、4月1日の時点で満6歳になっていないと入学できませんが、ドイツの場合は1月1日~6月30日の間に6歳になる子供は「その年に就学しなくてはならない子供」で、7月1日~12月31日の間に6歳になる子供は、「次の年度まで待って入学させてもよい」し、「子供の発達が小学校入学に十分適応していると判断された場合はその年に入学してもよい」子供なのです。新学期が9月であることを考えると、6月生まれの子供はいわゆる早生まれで、6歳になって間もないけれども就学しなくてはいけません。逆に、7月、8月生まれの子供は、入学式の日にはすでに7歳をむかえています。7月~12月生まれの子供が1年早く入学した場合、この子達は入学式の時点でまだ5歳です。つまり、ドイツの小学校1年生は、入学時点でほとんどが6歳ですが、5歳の子も7歳の子もいるということです。

ではその判断はどうやって下すのでしょうか。親(もしくは子供)の希望と学校側の検査による判断で決まります。まず10月頃に、小学校進学対象児童に学校で簡単なテストがあります。これは幼稚園の先生がまとめて引率してくれる場合もあります。その時点で、「ドイツ語力が不足している」と判断された場合は、11月~4月くらいの間、いわゆる「助走コース」とよばれるクラスで毎日もしくは週数回、ドイツ語の授業が任意で受けられます。

次に、入学前適正検査があり、子供の発育状態を小児科医が検査します。ここでは簡単な単語の聞き分けができるかどうか、1~5まで数えられるかどうか、片足で何秒間立っていられるか、などじっくり検査します。ここで、「子供のドイツ語力が不足している」、「子供の発達状態が十分でない」と判断された場合は、1月~6月の間に6歳になる子供はそれでも小学校に入学する義務があるので、Vorklasseといういわば準備クラスに入学して、1年間かけて小学1年生になる準備をします。7月~12月の間に6歳になる子供は、翌年まで入学を待たなくてはなりません。

7月~12月生まれの子供を学齢どおり進学させると、彼らはクラスの中で年上の部類に入り、体も大きく勉強にも有利だと考えられますが、子供の中には「幼稚園にあと1年いるには発達しすぎている子」や「早く勉強をはじめたい子」もいます。親や幼稚園の先生が子供の状態を的確に判断して最良の決断を下す必要があります。「日本みたいに誕生日で区切られていたほうが悩まなくていいのに・・・」とこぼしていたドイツ人の知り合いもいましたが、ほとんどの両親は「発達状態に適した年齢で進学するべき」と考えています。

他に日本と大きく違う点は、ドイツは移民国家であり、外国人の子供がたくさんいることです。地域によってはクラスの半分以上が外国人ということも珍しくありません。外国人の中には移住して3代目になるけれども自分の国のコミュニティでしか生活しないためドイツ語ができない子供もいるし、難民として命からがらたまたまドイツにたどりついた子供もいます。なので、入学前の「助走コース」に加えて、入学してからも授業時間外に強制的に受けなくてはならない「ドイツ語コース」もあります。

なお、障害児の場合は、事情が少し違ってきます。インクルージョン(包括的な教育)に積極的なドイツでは、「どんな重い障害を持った子供でも普通学校で学ぶ権利」が与えられています。ただし、それが子供にとってベストの選択であるとは限りません。特別支援級のない学校に入学するよりも、少人数制できめこまかい教育が受けられる特別支援学校で学んだほうがいい場合もあります。私の知る特別支援学校は、一クラスの生徒は4,5人。あえて縦割りで1年生から4年生が1つのクラスで学びます。学校内で療育を受けられるシステムも整っています。なお、障害児の就学猶予に関しては親が希望すれば猶予の希望が通ることが多いようです。この場合も、入学前適正検査を受けて、医師が「1年間の猶予を推奨する」と判断すれば自治体でそれを許可し、1年間長く幼稚園に通えます。ただしこの就学猶予は1年のみです。

義務教育のスタート時点で子供に年齢の幅がある上、飛び級や留年も起こります。ドイツの教育は、日本とは大きく違って、能力別教育といえます。


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↑ 入学式のひとコマ。手に抱えているのはシュールテューテといって、親からのプレゼント。中にはおかしや文具、小さなおもちゃなどが入っています。入学式には必ずこれを抱えて学校に行きます。背負っているのは色とりどりのドイツ版ランドセル。かなり大きくてけっこう重いのですが、子供達はみんな誇らしげです。