インボイスが開始されると免税業者から仕入れた時、発注者は支払った消費税の控除が受けられなくなります

一見すると、発注者側が被害者ぶっているように見えますが、発注者側は実は自分に都合のいい身勝手な主張をしているに過ぎません。
その理由は、今までは免税業者から仕入れることで益税を得ていた発注側が、いざインボイスが始まると発注側の益税を失うことを心配しているからです。
因みに、タバコ業者による不当な買い叩きも、『農家から請求された消費税分を値引いた』とは一言も言っていません。
請求されてもいないのに、インボイス登録拒否を理由に一方的に買い叩いたから独占禁止法違反に抵触したのです。
農家から消費税分の価格請求されていなくても、農家に消費税分を支払ったと見なして仕入税額控除して(農家に払わなかった分の)益税を得ていたのはタバコ業者の方です。

その理由を説明します。
取り敢えず現実の消費税法は脇に外して、今回は敢えて「預り金論」を逆手にとって説明します。

先ずは、免税業者は、課税業者と違い消費者に預り金(消費税分の価格転嫁)を請求しませんから、免税業者は益税を得てるという主張は「預り金論」から見ても真っ赤な大嘘になります。

免税業者は消費税分を請求しませんから、免税業者から仕入れた場合、発注側は免税業者に消費税分を払わなくても、消費税分を払ったと見なして(消費税分を払うことなく)仕入税額控除ができていた訳です。
つまり、免税業者と取引した分だけ、消費税分の支払いを免れることで発注側は利益(益税)を得ていたことになります。
しかし、いざインボイスが始まると、免税業者から仕入れた分の仕入税額控除ができなくなり、発注側は今までの益税分が無くなるという話です。
免税業者がインボイス登録して課税業者になると消費税分を価格転嫁されることになり、発注側の益税分を失います。
発注側が今までの益税を温存するには、免税業者をインボイス登録させた上で、消費税分を価格転嫁させずに買い叩くことが必要になります。

一方で、免税業者側も、発注側の身勝手な要求に絶対に屈してはなりません。
インボイス登録してもしなくても正々堂々と発注側に消費税分の負担を請求するべきです。
価格転嫁が拒否され値切られる状況ならば、インボイス登録せず、公正取引委員会に訴えるべきです。
あくまで、インボイスのせいで発注側の方が免税業者のお陰で享受できた益税を失うだけですから、免税業者側が一方的に責任を背負う義理は何もありません。


次に、以下の図1を使って例題1を示します。

小売店∶税込110000円で販売する場合を考えます。
①課税卸売から仕入れた場合∶税込77000円
②免税卸売から仕入れた場合∶税無70000円

インボイスが開始される前では、免税卸売から仕入れても、消費税分を払ったと見なして(消費税分を払わずして)仕入税額控除ができます。
このとき、
○課税卸売から仕入れた場合、小売店の納税額は3000円、粗利益は30000円。
○免税卸売から仕入れた場合、小売店の納税額は3636円、粗利益は36364円

よって、インボイスが無ければ、課税卸売から仕入れるよりも、免税卸売から仕入れた方が小売店は6364円の益税を得ることになります。

次に、インボイスが開始されると、免税卸売から仕入れた場合の仕入税額控除ができなくなります。
○免税卸売から仕入れた場合、小売店の納税額は10000円、粗利益は30000円

すなわち、小売店の粗利益は課税卸売から仕入れた状態と同じになり、免税卸売のお陰で享受していた6364円分の益税を失うことになります。
同様に、免税卸売がインボイス登録して課税卸売に移行すると、70000円に加えて7000円分の消費税コスト分を価格転嫁した77000円を請求されることになり、6364円分の益税を失うことになります。
仮に、発注側が益税を温存する為には、免税業者をインボイス登録させた上で、消費税分を価格転嫁させずに不当に買い叩く必要がある訳です。
よって、免税業者側は、価格転嫁を拒否される状況ならインボイス登録する意味はありません。
発注側の身勝手な値切り圧力に屈することなく、公正取引委員会に訴えるべきです。
そして、正々堂々と消費税分の負担を請求し、発注側が免税業者の恩恵の下に預かっていた益税を吐き出させるべきです。

例題2∶一番右側の小売業者のみが課税業者で、その他の左に向かって卸売業以下は全て免税業者であると仮定します。

例題3∶次に卸売業者以下の免税業者の全てがインボイス登録したと仮定し、小売業者と卸売業者と製造業者の各々が利益を確保する目的で価格転嫁を拒否し、左側の下請けに消費税コスト分を押し付けて行った場合一番左側の「下請け最下位」に位置する個人事業主の所得が激減し貧困化が深刻になり、生活困窮に陥るリスクがあります。
この例題では、インボイスが開始される前は、20000円あった個人事業主の所得はインボイス登録後では13636円に激減しています。
すなわち、インボイスが開始されると、社会的立場の弱い者に消費税コストの押し付け合いが累積することで、急速に貧困化したり破産に追い込まれる社会的リスクがあるのです。
こうした社会的かつ経済的なリスクが高い以上、インボイスは取り止めるべきです。
また、貧困を拡大させ、経済環境や社会環境を悪化させるだけの消費税やインボイスには税としての社会的意義は何一つなく即刻廃止すべきです。
国民生活の向上を目的とせず、単に税金課すことが目的なら、それは社会的意義のない極悪非道な殺生と同じです。


加えて、
政府側につく社会強者が架空の益税論で免税業者を叩く理由は、
免税業者をインボイス登録させた上で、消費税分の価格転嫁を阻止して発注側大企業の益税を温存し、社会的立場の弱い個人事業主などに損税を押し付ける為です。