首相がトヨタ・ホンダ工場訪問、労組切り崩す狙いか…国民は戸惑い隠さず

 岸田首相(自民党総裁)は17日、愛知、三重両県のトヨタ自動車やホンダの工場などを訪れた。首相の訪問は異例で、参院選を前に、野党・国民民主党を主に支援する民間労働組合の取り込みを図ったとの見方が出ている。

 「自動車産業は我が国の成長産業であり、クリーンエネルギー戦略の大黒柱だ」

 首相は、電気自動車(EV)などを製造する愛知県豊田市のトヨタ元町工場で蓄電池の製造工程などを視察後、記者団にこう強調した。今秋にも脱炭素化などに向け、首相と関係閣僚が業界のトップらと対話する場を設ける考えも示した。

 視察には、トヨタ自動車の豊田章男社長が同行。豊田氏は首相に対し、今年の春闘での賃上げの取り組みも説明した。

 首相はその後、三重県に移動し、半導体大手キオクシアとホンダの工場も訪問した。三重、奈良両県知事との会談では、リニア中央新幹線の早期開業を目指す決意を示した。

 愛知、三重両県では、国民や立憲民主党が強固な地盤を築いている。首相が両県に足を運んだのは、労組票を切り崩す狙いがあると見る向きが多い。

 首相はトヨタの工場で、「参院選に向け、タイミングを考えたということではない」と語ったが、豊田氏は「一番の理由は選挙でしょうね。選挙の直前だから応援団作りに来る。それでも、現実を見てもらえるならありがたい」と笑ってみせた。

 トヨタ自動車グループの労組が加盟する「全トヨタ労働組合連合会(全ト)」は参院選で比例選に国民から組織内候補を立てており、愛知選挙区の同党候補も支援している。


 全トは昨年の衆院選では、政策実現に向け、与党と連携する方針に転じ、野党系の組織内候補を擁立しなかった経緯がある。

 自民党幹部は首相の訪問について、「組合員に対し、賃上げで頼りになるのは政府・自民だという絶好のアピール機会になった」と評価した。自民は国民とは、政策や国会運営で連携を強めているが、参院選での選挙協力は不調に終わったため、揺さぶりを強めた面もありそうだ。

 国民は戸惑いを隠さない。玉木代表は「自民の動きを心配しても仕方がない。うちはうちで支持を広げるだけだ」と周囲に漏らした。連合幹部は「労組に手を突っ込んでいくという宣言だろう」と不快感を示した。