社説[新資本主義と骨太方針]「分配」の具体策見えず

 岸田文雄政権下で初めてとなる経済財政運営の指針「骨太方針」が決まった。

 今回の方針は、岸田首相が就任時に唱えた「新しい資本主義」の中身が期待されていた。「分配なくして次の成長なし」とし、経済成長の果実を分配し次の成長を促すため、あらゆる政策を総動員すると表明していた。

 しかし方針では、新しい資本主義に向けた改革を中心に据え、人への投資と科学技術・イノベーションやスタートアップなど重点4分野への投資をうたった一方で、両輪である「分配」の具体策についてはほとんど示されなかった。

 賃上げは「全国各地での機運の拡大を図る」「適正な賃金引き上げの在り方について検討を行う」との表現にとどまり、企業がどのように賃上げを実現するかの方策は見えない。

 最低賃金は現在930円の全国加重平均について、千円以上への引き上げを目指すというが、手法は従来の最低賃金審議会で「議論する」とした。

 少額投資非課税制度(NISA)や個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」の制度改革による「資産所得倍増プラン」も掲げるが、これにより「所得の分厚い中間層」が実現するかは不透明だ。

 分配の方向性として打ち出した格差是正策は見当たらず、結果としてアベノミクス路線を継承する内容になっている。成長果実の分配によって、経済成長率を高めるという岸田首相の看板政策は後退している。

   

 国際環境の変化への対応として、防衛力は5年以内に抜本的に強化するとした。

 岸田首相は先の日米首脳会談でも「日本の防衛力を抜本的に強化」するとし、「(バイデン大統領に)裏付けとなる防衛費の相当な増額を確保する決意を表明した」と話していた。

 しかし「相当な増額」の内容についてはまだ国民に説明がない。方針では、北大西洋条約機構(NATO)加盟国が国防予算を対GDP比2%以上とする合意について触れており、仮に日本に適用すれば5兆円規模の大増額となる。

 「外交・安全保障の強化」の中には、「在日米軍再編および基地対策の推進などを図る」との一文もある。安全保障政策は国民の負担を伴うものだ。丁寧な議論が必要で、具体的な予算の積み上げを提示して国民と対話する姿勢が求められる。

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 ウクライナ情勢の緊迫化などで日本を取り巻く国際情勢が深刻化する中で影を潜めたのが財政健全化だ。

 「健全化の旗を降ろさず取り組む」としたが、国と地方の基礎的財政収支を黒字化する年限の明示を見送った。一方、財政健全化で「重要な政策の選択肢を狭めることがあってはならない」と明記した。

 安倍晋三元首相に代表される防衛費の増大を求める自民党内の声が色濃く反映された形だ。

 党内力学を背景にした内向きの方針を「骨太」とは呼べない。