日本人の平均給与433円…もうすぐ切り捨てられる、氷河期世代の不憫

欧米型の雇用システムの導入……最近よく耳にするこのワード。新卒一括採用、終身雇用、年功序列といった日本型の雇用システムが変わろうとしているいま、窮地に立たされる人たちも。みていきましょう。

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富士通「ジョブ型雇用」導入…日本型雇用の転換期か

先日、IT大手の富士通は2022年4月をめどに「ジョブ型雇用」をグループ企業従業員11万人に対して導入すると発表しました。最近はこの手のニュースが多く、KDDIや日立製作所、NECなど、大企業を中心にジョブ型雇用の導入が相次いでいます。

ジョブ型雇用とは、ジョブディスクリプション(職務内容を記述した文書)をもとに雇用契約を結び。、職務内容を明確に定義したうえで働くというもの。欧米では主流の雇用システムで、よく成果主義と結び付けて語られることが多くなっています。それに対し、日本型の雇用システムとして、メンバーシップ型雇用という言葉がよく使われます。新卒一括採用で総合的なスキルが求められる方式と考えれば、その違いがわかるでしょう。それに加え終身雇用、年功序列といったものが、旧来の日本で多く採用されてきた雇用スタイルです。

なぜここにきてジョブ型雇用が注目され、大企業を中心に導入が進んでいるのでしょうか。注目を集めたきっかけとなったのが、経団連第元会長の中西宏明氏が「1つの会社で長くキャリアを積んでいく日本型の雇用を見直していく方がいいだろう」とはなし、面がーばシップ型の雇用を見直すべきと提言したことにはじまります。ここで日本型の雇用システムに対し、欧米で主流となっているジョブ型雇用に注目が集まったわけです。

政府の規制改革推進会議では、ジョブ型正社員を「専門スキルを活かして働きたい人」「専門スキルを磨き続けたい人」「転勤をしたくない人」「子育てをしながら働きたい人」と定義付けています。

一方、日本の雇用制度で語られることの多い終身雇用。1958年に米国の経営学者ジェームス・C・アベグレンの著書『日本の経営』の中で、日本の雇用慣行を「Lifetime commitment」と称したことが語源とされています。

この日本型の雇用システムに対するアンチテーゼが語られるようになった理由のひとつが、日本の競争力の低下。その原因とされたのが、日本の労働生産性の低さです。ILO、国際労働機関によると、1人当たり労働生産性において、日本は世界44位。先進国の中でもひと際順位が低くなっています。またOECDによる時間当たり労働生産性も、主要国43ヵ国中24位と低迷しています。

【世界「労働生産性(1人当たり)】

1位「ルクセンブルク」232,676米ドル

2位「アイルランド」198,625米ドル

3位「シンガポール」156,159米ドル

4位「ブルネイ」136,055米ドル

5位「米国」131,218米ドル

6位「プエルトリコ」126,713米ドル

7位「ノルウェー」124,991米ドル

8位「スイス」124,242米ドル

9位「ニューカレドニア」117,839米ドル

10位「デンマーク」114,947米ドル

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39位「韓国」80,861米ドル

44位「日本」74,706米ドル

出所:ILO(2020年)

【世界主要国「労働生産性(時間当たり)】

1位「アイルランド」121.75米ドル/時間

2位「ルクセンブルク」111.76米ドル/時間

3位「ノルウェー」88.78米ドル/時間

4位「デンマーク」88.21米ドル/時間

5位「ベルギー」86.13米ドル/時間

6位「スイス」81.46米ドル/時間

7位「米国」80.54米ドル/時間

8位「オーストリア」79.38米ドル/時間

9位「フランス」79.19米ドル/時間

10位「スウェーデン」78.88米ドル/時間

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24位「日本」49.37米ドル

32位「韓国」43.78米ドル

出所:OECD(2020年)

日本の「給与の伸び率」は主要国で最下位…もう弱者を切り捨てるしかない!?

日本の生産性の低さ……これは私たちの給与が上がらない根本的な理由ともいわれています。国税庁『令和2年分 民間給与実態統計調査』によると、日本の会社員の平均給与は433万円。これは1990年代初頭と同じ水準です。またOECDによる製造業の給与の伸び率をみてみると、2020年、日本は32ヵ国中32位。先進7ヵ国に絞って経年でみても、バブル崩壊以降、日本は最下位の常連です。

このような状況下、日本型の雇用スタイルが変わることで給与があがるのであれば大歓迎!といきたいところ。しかし、そうなると絶対的に救われない人たちが出てきます。それが就職難でこれまで一度も正社員になることができなかった、40代の氷河期世代の人たちです。

現在の40代は、大卒時、有効求人倍率が1を下回り、内定を得られた人が大勢いました。仕方なく「一時的な仕事に就いた」という人が、ピーク時には2万人を超えた時代です。その後、ITバブルの崩壊、リーマンショックと続き、雇用環境が回復してきた2010年代。満を持して正社員へ……しかし、そう上手くはいきません。30代になった彼らは、企業が求められるキャリア・スキルを有していることは稀で、年齢的に正社員になることが困難だったわけです。50代を前にして、大卒でありながら、1度も正社員になれず、低収入に甘んじてきたわけです。

そんな氷河期世代の人たちに向けて、政府は就労支援を行っていますが、そこにきてジョブ型雇用……企業が求める専門的な職務を全うできるか。なかには専門的なスキルを習得し、欧米型の雇用システムにマッチした人もいるでしょうが、たいていは難しいといわざるをえません。

このまま欧米型の雇用システムが一般化していくのか、といえば、懐疑的な声も多く、新卒一括採用、終身雇用、年功序列……旧来型の日本の雇用形態はこれからも続くというのが大半の意見です。一方で、日本企業には終身雇用を維持するだけの体力がなく、欧米型雇用システムを取り入れざるをえない、という声も聞かれます。

ひとついえるのは、いま、日本は過渡期であるということ。ここで氷河期世代を支援し続けるのか、それとも切り捨てるのか。迫られているのかもしれません。