大変長らくお待たせ致しました音譜


最後にこの「怖い絵展」の看板、
こちらの絵のご紹介デスラブラブ



ポール・ドラローシュ作

「レディ・ジェーン・グレイの処刑」




期待に違わぬ圧巻の絵でしたラブラブ
観れて良かった音譜音譜

等身大かしらはてなマーク
想像以上に大きな絵で、なのに細部に至るまで繊細に描かれていて、写真にも負けない程の質感ですビックリマーク音譜
あまりの出来映えに度肝を抜かれますラブラブ




英国初の女王と言われる、レディ・ジェーン・グレイの最期を描いた作品ですキラキラ


まるで舞台のラストシーンのような、劇的な絵でしたキラキラ


中央に置かれている小さな木の台は、当時の断頭台ですあせる
この上に罪人の首を乗せ、斧で薪割りのようにスパッと首を落とすのガーン

ジェーンは、これから斧で首をはねられて、
彼女の純白のドレスが、間もなく真っ赤に染まるのだろうな、

と否応なしに想像させられますあせる

まずそれが怖いですわあせる




処刑された時、なんと16歳ですよ!!しょぼん
逮捕時は15歳ビックリマークあせる 罪状は反逆罪でしたあせる


15歳で反逆罪って(^_^;)

盗んだバイクで走り出す程度じゃないのよはてなマーク(笑)


しかも女王としての在位は、たったの9日間でしたあせる



イギリス初の女王にして、
歴代最も若い女王にして、
最も短命な女王、
なのだそうですしょぼんあせる


そのため、彼女を王と位置付けない説もあって、
「クイーン・ジェーン・グレイ」ではなく、
「レディ・ジェーン・グレイ」と呼ばれていますしょぼん







なぜ彼女は、このような死に方をしなければならなかったのでしょうかはてなマーク






元を質せば、彼女の祖母の兄、つまり大伯父にあたる英国王、ヘンリー8世になかなか世継ぎが産まれなかった事に始まります。

このヘンリー8世って王様が、
大概ヤバい人でした!!あせる(笑)

彼は世継ぎ欲しさに、男児を産まない妻と離婚しようとしますあせる

彼はカトリック教徒だったのですが、カトリックって基本、離婚を認めてないのねあせる
そこで、ローマ・カトリック教会から国ごと離脱して、プロテスタントの英国国教会を作りましたあせる

つまりは、

離婚したくて宗教改革しちゃいました(笑)。


そして、婚姻を無効にしたり、妻を処刑しちゃったりして、次々6人もの妃を迎えましたあせるあせる

こうして、後に女王となるメアリー1世エリザベス1世といった王女が産まれますが、
次々妻をすげ替えたせいで、この2人は一時期庶子の身分に落とされてしまったのねしょぼんあせる

それでようやく待望の王子、エドワードが生まれましたキラキラ
奇しくも、ジェーン・グレイと同い年で生まれた王子でした。
やがてヘンリー8世が亡くなると、彼はエドワード6世として、僅か9歳で即位しますビックリマーク

でも、エドワードは生まれつき病弱で、長くは生きられないだろう、と思われていましたあせる


ちなみにこの時、ジェーン・グレイの王位継承権は、1位のメアリー、2位のエリザベスより低い、第4位でした。



誰もが、次の王はメアリーだ、と思っていましたキラキラ


しかし、
エドワード6世が15歳で亡くなると、

その遺言で次の王に指名されたのは、同じく15歳のジェーン・グレイでした!!




実は、
エドワードやエリザベスはプロテスタントなのだけど、
カトリックの国、スペインの王族を母に持つメアリーは、敬虔なカトリックだったのね。

ココ重要です!!ニコニコ(笑)

メアリーは自分が王位に就いたら、英国をカトリックの国に戻すつもりでした。つまりプロテスタントの貴族達は失脚するのが目に見えていたのねあせる
(実際、メアリーが王位に就いた後、プロテスタントを弾圧・虐殺して、ブラッディメアリー(血まみれメアリー)と呼ばれるようになりますあせるあせる)


当時、宮廷の実権を握っていた貴族のジョン・ダドリーもプロテスタントで、メアリーに危機感を持ってましたあせる

そこでダドリーは、同じプロテスタントであるジェーン・グレイに目を付けます。

17歳になる自分の息子とジェーンを政略結婚させ、
一時期庶子の身分だったメアリーやエリザベスには王位継承権が無いと主張し、
死の床にいたエドワードに、ジェーンを次の王に指名させたのですビックリマーク

宮廷からカトリック勢力を一掃し、
更には王権を我が物にしようとの陰謀でした。


「貴女が今日から王です」
と言われ、何も知らなかったジェーンは、それはそれは驚いたそうですあせるあせる

ジェーンは即位を嫌がりましたが、
もし今更即位をやめたら、メアリーによって処刑されるだろう、という所まで事態は進んでいましたあせる




選択の余地もなく即位させられ、

直後に、挙兵したメアリーの軍に攻められ、

反ダドリー派の貴族や、カトリック、更にはエリザベスや、ジェーンの即位を一度は認めた枢密院にも離反され、

間もなく捕らえられ、たったの9日で廃位させられてしまいますしょぼんあせる





彼女の悲運は更に続きますあせる




新たに女王となったメアリー1世は、この陰謀の首謀者であるジョン・ダドリーはすぐに斬首にしましたが、
ジェーン・グレイの命は助けたい、と思っていたようですキラキラ
あの悪名高いブラッディメアリーがですよ!?キラキラ

ジェーンが陰謀に巻き込まれただけなのを、メアリーも分かっていたのでしょうニコニコ
そのうち頃合いを見て恩赦を出し、助けようと考えていたようですキラキラ



しかし、その希望はあっけなく絶たれますしょぼん



メアリーとスペイン国王との結婚話が浮上すると、
カトリック勢力の拡大を恐れた貴族達が、結婚に反対して反乱を起こしますビックリマーク

それにジェーンの実父が加担していて逮捕された事で、彼女の命運は尽きますあせる



枢密院やカトリック勢力は、ジェーンがプロテスタントの反乱の旗頭になるのを恐れて、彼女の処刑を強硬に主張しますあせる


それでもメアリーはジェーンを救おうとして、
「カトリックに改宗するなら命は助ける」
と持ち掛けますキラキラ




しかしジェーンは、

「自分は夫と共に、生涯プロテスタントを貫く」

と答えて、





最後は自ら処刑を選んだの!




自分がここで生き残っても、必ずまた騒乱の火種にされるという事が、彼女には分かっていたのかも知れませんしょぼんあせる





こうして、

即位して逮捕されてから7ヶ月後、
結婚から数えても僅か9ヶ月後、


夫と共に、ロンドン塔で斬首の刑に処されます。







この絵、
「レディ・ジェーン・グレイの処刑」に描かれている本当の怖さは、

宗教争いや政治闘争のむごさ、

なのかも知れませんしょぼん








作者のドラローシュさんも、その辺りがより浮き彫りになるように、
歴史的事実を踏まえつつも、少し史実とは異なる演出も加えて、この絵を描き上げていますニコニコキラキラ





ではでは、絵を観ていきましょう音譜





目隠しをされたジェーンが、おぼつかない手つきで断頭台を探していますしょぼん
見かねた聖職者が、ジェーンを抱え込むように支えて、優しく彼女の手を断頭台に導こうとしていますしょぼん
伸ばされた彼女の左手には、結婚指輪が外されずに光っていますキラキラ

首を切り落としやすいように、
首もとの大きく開いた純白のドレスを着て、髪を片側に束ねていますあせる

準備万端ですしょぼん

おぼつかないながらも、
自らの意思で断頭台を探し、自らの意思で死のうとしているのね。


運命に翻弄され続けた、こんな小柄で華奢な少女の中に、こんなにも凛とした覚悟が秘められている。

これだけでもう号泣ですよ!



我々が「断頭台」と聞くと、まずギロチンを連想しますが、
一発で確実に首をはねてくれる「人道的な処刑道具」であるギロチンは、この時代はまだ発明されていませんガーン
このような首置き台に首を乗せて、斧で叩き斬る、という処刑方法でしたあせる
斧の衝撃で台がずれないように、鉄の金具で床にしっかり固定させています。

これから彼女は、膝の下に置かれている豪華なクッションの上に腹這いになって、顎を台の上に差し出すのしょぼん
台の手前の床には藁が敷かれています。吹き出した血を吸わせるためのものですガーンあせる



実は史実では、

ジェーンの処刑はこのような薄暗い室内ではなく、野外、ロンドン塔の中庭でしたビックリマーク
そして、ジェーンの服は純白ではなく、当時のしきたり通りの黒い服だったそうですビックリマーク

それをドラローシュさんは演出を加え、
薄暗い室内で、純白のドレスを着たジェーンが、まるでスポットライトを浴びているように輝きを放っていますキラキラ
このまばゆい白が、彼女の潔白を我々に訴えかけているかのようで、マジで胸を抉られますしょぼん
実にナイスな演出デスラブラブ(笑)

特に、断頭台に触れようとしている左手に最も光が当たって見えるのですが、
指輪を嵌めたこの左手が、今最も天国に近付いているのかな。
なんて思ったりニコニコ


このジェーンの手を導いてる聖職者ですが、カトリックの僧侶なのね。
だから彼にとっては、カトリックに改宗しないジェーンは、本来は疎ましい存在なのあせる
なのに思わず、助けの手を差し伸べずにはいられなかったのねキラキラ
彼もきっと、ジェーンの境遇を哀れに思ったのかなニコニコ




それにしても、
この辺りの描き込みは、本当に素敵デスビックリマークラブラブラブラブ

シルクのドレスの光沢の美しさは、尋常じゃないのビックリマーク もう神の手腕ラブラブ(笑)
豪華なクッションの質感も、「ええええええ!!」と声出ちゃう程素晴しいし、
聖職者の茶色い上着のモフモフ感ったら、もうたまらんですよ!! すげ触りたいビックリマーク(笑)

唯一不満があるとすれば、
床の藁のもっさり感が物足りないッビックリマークあせる(笑)

……あくまで個人の感想デスニコニコ(笑)







左手にいるのは、ジェーンの侍女ですニコニコ

奥の侍女は、悲しみのあまり取り乱し、柱にすがっているようですあせる

手前の侍女は泣き崩れているのか、失神寸前のようにも見えますしょぼん
膝の上には、ジェーンが斬首の邪魔にならないようにと渡した、ケープやアクセサリーがありますキラキラ






右の男性は、処刑人です。
腰には、万一斧で首をはね損なった時に、無理矢理に首を切断する為のナイフがありますガーンあせるあせる 怖っあせる

ジェーンを見つめる彼の顔には、憐れみの表情が浮かんでいますしょぼん

史実では、処刑人は本当は仮面を被っていたそうですが、
ドラローシュさんはここにも演出を付けて、処刑人の表情が見えるようにしたのデスキラキラ


ここに描かれている誰一人として、
処刑を命じたメアリーですら、
ジェーンの死を望んでいないのに、
それでも彼女は、ここで死ななければならない。


もう、悲しくてやりきれませんあせる







ワタクシが凄く気になったのは、画面の一番右下の部分ビックリマーク
黒い布がめくれて、その下の木の台が覗いてますキラキラ

黒い床だと思っていたのは、
実は一段高くなった木の舞台の上に、黒い布を敷いた床だったのビックリマーク




そう思って、改めてこの絵を観てみますと、


「まるで舞台のラストシーンのよう」

と思っていたこの絵の中の出来事全体が、
実は一段高くなった舞台の上で起きていたのビックリマーク




この巨大な、実物大程の絵の前に立って、
一段低い場所から眺めていると、


ワタクシ、絵を観ているのではなくて、


「レディ・ジェーン・グレイの処刑」という舞台を観ているのかな??


という気分になりますニコニコ




この布のめくれは「これはお芝居」と言いたいのかしらはてなマークあせる
ドラローシュさんが史実に演出を加えてこの絵を描いた事を、暗に示唆しているのはてなマーク

何このブレヒトの戯曲みたいな感じあせる




このめくれた黒布については、資料を調べてもよく分かりませんでしたあせる

何これ誰か教えて!!あせる

ワカラナイとなんか怖いし!(笑)








最後に。


今回、この絵について調べていて思ったのですが、

レディ・ジェーン・グレイ。

その結婚は明らかな政略結婚で、結婚生活は僅かな期間でしたが、

夫のギルフォード・ダドリーとは、もしかしたら本当に愛し合っていたのカモラブラブ


ギルフォードが幽閉されていたロンドン塔の一室の壁には、彼が刻んだと言われる「ジェーン」の文字が今も残っています。

ジェーンも、メアリーに宛てて書いた釈明の手紙の中で、自分のことを「夫を深く慕う妻」と書いていましたニコニコ


もし、彼女らの結婚が幸福なものだったなら、
この悲劇の物語も、少しだけ救われるかなはてなマーク

なんて思ったりニコニコ






怖い絵展日記、これでおしまいデス音譜
お付き合いありがとうでしたニコニコ