金持ちトーキョーの《沼》…沈殿する「賃金格差」の薄暗い悲鳴

「格差是正」「分配」といったテーマが急速に広まった昨今。金持ちの街として存在するのは、言うまでもなく東京です。大企業の本社がひしめく印象を受けますが、やはり大部分を占めているのは、他道府県と同じく、中小企業の数々。はたして賃金はいくらなのでしょうか。東京都産業労働局『中小企業の賃金・退職金事情』(令和2年版)より見ていきます。
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賃金、資産総額、貯蓄額「何もかもトップ」の東京だが
東京都産業労働局は、「大企業については、行政機関や民間研究機関等で各種の調査が実施され、調査結果が公表されているものの、企業数の大半を占める中小企業については、必ずしも十分とはいえない」とし、従業員10人~299人の都内中小企業について、賃金や退職金の実態を調査しています。
賃金ランキング、資産総額ランキング、貯蓄額ランキングをはじめ「カネ回り」に関しては首位を総なめしている東京都ですが、一部の富裕層や大企業の高給取りが全体値を底上げしていることは間違いありません。実際の働き手の資金繰りはいかほどなのか? 見ていきましょう。
令和2年7月の全常用労働者※の平均賃金は、所定時間内賃金が「35万477円」、所定時間外賃金が「2万9803円」、合計で「38万280円」となっています(平均年齢42.1歳、平均勤続年数11.0年)。なお労働組合がある企業は、ない企業と比べて所定時間内賃金が「1万1704円」高くなっています。
※常用労働者……雇用期間を定めず雇用されている労働者のこと。日雇労働者や季節労働者、雇用期間に定めがあり、契約期間を更新している労働者等は除く。
企業規模別に見ていきましょう。全常用労働者が10人~49人の企業は、所定時間内賃金が「34万383円」、所定時間外賃金が「2万5771円」で、年間給与支払額は「512万4598円」。50人~99人の企業は、所定時間内賃金が「35万4628円」、所定時間外賃金が「3万4726円」で、年間給与は「554万6533円」。100人~299人の企業は、所定時間内賃金が「35万8261円」、所定時間外賃金が「3万254円」で、年間給与は「588万2875円」。一言で中小企業といっても、やはり企業規模別の賃金格差は存在しています。
産業規模別にも見ていきましょう。東京都の所定時間内賃金、最も高額となったのは金融業・保険業の「44万1530円」。不動産業・物品賃貸業「39万74円」、学術研究・専門/技術サービス業「38万5483円」と続きます。
一方所定時間内賃金の低い産業は、運輸業・郵便業の「29万8808円」、医療・福祉業の「30万4318円」、宿泊業・飲食サービス業の「27万9361円」でした。運輸業・郵便業は所定時間外賃金が「4万7750円」と比較的高額ですが、宿泊業・飲食サービス業、医療・福祉業については、所定時間外賃金「1万7347円」、「1万7250円」と他業種と比べても低額であり、厳しい賃金の実態が明らかになっています。
特にこのコロナ禍、宿泊・飲食サービス業は多くの苦難を強いられました。休業、それに伴う雇止めが相次ぐなか、最低賃金は上昇したものの、労働者にとっては今だ不十分であり、経営者にとっては会社の資金繰りを大きく左右するマターとして、双方の頭を悩ませている現状があります。
なお先ほども述べたように本データ、日雇い労働者や季節労働者の方など、雇用期間に契約がある方は調査対象に含まれていません。平均賃金の高い東京ですが、その濃淡は鮮明です。
【ちなみに】東京は2025年に人口のピークを迎える?
東京都政策企画局は2060年までの東京都の人口推移を予測しています。2021年現在、東京の人口は1396万人ですが、2025年、1398万人に達したあとは減少に転じ、2060年、1173万人になる見込みです。
現在東京の人口ピラミッドを見れば、団塊ジュニア(40代前半)の層がもっとも多く、若年層は減る一方です。2060年にはそのまま人口が上にスライドし、85歳~となった団塊ジュニアが東京都で最多の年齢層となります。
少子高齢化の影響を受け、日本の先行きが懸念されるなか、突出した活気を持つ街、東京。都道府県間の格差是正はもちろん早急に対応すべき課題として在りつつ、都内の現状、そして行末を明らかにすることが求められています。