<コロナ緊急事態>「一人親方」苦悩 ゼネコン下請け「予定真っ白。補償あるのか」 | 時事刻々

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<コロナ緊急事態>「一人親方」苦悩 ゼネコン下請け「予定真っ白。補償あるのか」

真っ白になったスケジュール表をスマホの画面で見ながら「不安です」と話す黒木基男さん=東京都北区で

 大手ゼネコン清水建設が緊急事態宣言の対象となっている七都府県で原則、すべての工事を停止すると表明し、下請けで働く作業員に波紋が広がっている。建設業は休業要請の対象外で、政府の打ち出した給付金の支給開始時期も未定。「十分な補償はあるのか」。仕事の中止を言い渡された「一人親方」と呼ばれる自営の職人が取材に応じ、不安な胸中を語った。 (浅田晃弘、写真も)


 「ファクスを見て、びっくりですよ。スケジュール表が真っ白だ」。東京都北区の黒木基男さん(65)が、ため息をついた。建築用の金物取り付け「黒木工業」を一人で営む。清水建設が大手町で建設中の高層ビルの仕事を請け負っていたが、下請け会社から緊急事態宣言期間の五月六日まで工事は中止だと連絡が入った。今月の仕事は、別の現場で二日間あるだけだ。

 清水建設の工事停止は、都内の建設現場で働いていた社員三人が新型コロナに感染し、一人が死亡したことを踏まえた決定だ。黒木さんは、コロナ感染の話がひとごととは思えない。

 打ち合わせや休憩に使う「詰め所」では、ほかの作業員とすし詰めになっていた。最近、広い場所に移動し、テーブルや椅子の間隔が広がったが、テレワークが進むオフィスと比べれば差がありすぎる。声を掛け合いながら道具を運び、部品を取り付ける仕事は、人との接近が避けられない。エレベーターは忙しいとき長蛇の列ができる。二メートルの社会的距離の確保など無理。「いつ、誰が感染してもおかしくない」

 清水建設によると、七都府県には約五百の現場があり、下請けを含めた関連の作業員は約二万人に上る。ゼネコンでは、ほかにも西松建設が七都府県での工事停止方針を発表している。

 事故などで工事が中断されたとき、これまでは、ほかの現場を紹介してもらえることが多かったが、工事停止の動きが広がる中、それは期待できそうにない。

 黒木さんはひざの手術で、昨年末から春先まで仕事を休み、挽回を誓ったばかりのできごとだった。だが、政府の給付金の支給時期などは未定。このまま事態が収束せず、緊急事態宣言が延長されるかもしれないと考えると暗たんたる気持ちになる。「この間、収入がなくなり、どうやって生きていけばいいのか。安心できる説明をしてほしい」と悔しそうに話した。

 清水建設の広報担当者は工事停止中の休業補償について「具体的に回答できる段階ではないが、下請け、協力会社と協議しながら、作業員の生活に十分な配慮をしていきたいと考えている」と話した。