【茨城】<点検 避難計画>複合災害、放射能… 避難先に不安かすむ
太平洋に面し、千葉県北東部に位置する人口約六万六千人の旭市。東海村の日本原子力発電東海第二原発から放射能が漏れる重大事故が起きた場合、大洗町民約一万七千人のうち、三千人弱が避難することになっている。
大洗町と旭市は避難の際の取り決めを定めた協定を結んでいるが、旭市が無条件で避難を受け入れてくれるのかは分からない。旭市の防災担当者は「避難者の受け入れは、自分たちが被災していないことが前提になる」と指摘する。
この説明の背景には、東日本大震災の被災経験がある。旭市は約七・六メートルの津波に襲われ、十三人が死亡し、三千七百六十八棟が損壊。その被害から、関東最大の被災地ともいわれた。
市によると、震災当日に公民館や学校など十カ所の避難所を開設。最も多い時には二千八百人超が身を寄せたという。
こうした災害と原発事故が重なった場合、大洗からの避難者を受け入れる余裕はあるのか。旭市の担当者は「人道的には拒否できないが、手いっぱいになり、うまく対応できないかもしれない」とする。原発事故で逃げてきた大洗町民が、旭市の避難所に入れず、行き場を失う恐れがある。
また、複合災害ではなく、東海第二からの放射能そのもので、避難先が使えない恐れもある。東京電力福島第一原発の事故では北西に風が吹き、五十キロ離れた福島県飯舘村などでも、深刻な汚染にさらされることとなった。
城里町の避難先には、東海第二から西に五十キロ圏内の栃木県益子町も指定されている。益子町の法師人(ほうしと)弘副町長は「風向き次第で避難先としてふさわしくなくなる可能性がある」などと警鐘を鳴らす。
県もこうした問題を念頭に、避難先が使えないときのために、第二の避難先を探し始めているが、見つかるめどは立っていない。
東海第二の三十キロ圏に入る十四市町村の中には、日立市の住民団体のように、自力で第三の避難先を見つけようとする動きもあるが、避難ルートや移動距離など課題は多い。
机上の調整すら思うように進まない現状で、有事に住民の生命を守ることができるか、不安は尽きない。 (越田普之)
東京新聞