英国紳士と米国軍人の葛藤-NoName_0006.jpg

ジャム親父達の奮戦は凄まじかった
数十人のサブキャラが全て当千の働きをし、ドラ軍の足を止めた
しかし、やはり数の差はその健闘をも次第に圧倒していった
1人、また1人とサブキャラ達は姿を消してゆく

「チーズ!バタコ!」

ジャム親父の声に返事はなかった

「ちっ、もうこれだけになっちまいやがった」

自分以外に生きている味方をほとんどジャム親父は発見出来なかった
その時である
猫型の動きの鈍さに業を煮やしたドラえもんが自ら前面に押し出て来た

「ドラえもんっ!!」

ジャム親父がドラえもんに向かって突進する
しかしドラえもんに動揺する様子はなかった
ドラえもんは猫型からどら焼きを受け取り、それを凄まじい勢いでジャム親父に向けて投げた
力を得たどら焼きは空を切り裂き、ジャム親父の厚い胸を貫いた
絶望的な呻きとともにジャム親父の身体がスネ夫から落ちてゆく

「愚か者よ、可惜その猛勇を無駄に捨て去ろうとは」

ドラえもんは嘲笑したが、次の瞬間、その笑いは消え失せた
彼の前方で、胸を貫かれたジャム親父が立ち上がったのである
1歩ずつドラえもんに近付くジャム親父に無数のどら焼きが飛来し、彼の身体に当たっていく
そしてそのどら焼きがジャム親父の身体を覆い尽くした時、遂に彼の歩みが止まった

「ちっ、しくじったぜ……俺はあと10人は倒しておく予定だったんだ……」

ジャム親父の瞳はそのまま光を失ってゆき、彼は息絶えた
殺しただけでは飽き足らぬらしい猫型達が死体を斬り刻むべくその周りに群がってゆく

「やめよ!貴様らはそれでも名誉を知る我が猫型か!」

ドラえもんの怒りに満ちた瞳と声で猫型達を叱責した
アンパンマン達が遂に突破を果たし、機動力にものを言わせて離脱するのに成功したのはまさにこの時であった

「逃したか……この親父もさぞかし本望であろう。しかし、これでもはやおぬしらに勝機は失われたぞ」

ドラえもんの心は既にしずかちゃん家の風呂場へ飛び、その壁に刻み込まれるべき自らの栄光を思い描いていた