聖霊降臨－自己実現から神実現へ－ 「夢を叶え、思い描いた自分になること」を目指して、誰もがささやかな人生を努力し て生きています。90年代から、なりたい自分になる「自己実現」と自分らしさを確立する 「アイデンティティー」が世間に受け入れられました。
30年が経過して、どうなったでしょ うか？自分探しをしたけれど、何をしていいか分からず自信を失った人、夢を追ったけ れど失敗して自分に価値を見い出せない人、勝ち組と負け組に分かれて格差社会が 生まれ、人生に希望を失い、今だけ、自分だけの快楽に閉じこもる人が増えました。こ の試みは失敗でした。
この現象は、神を失った人々が「神無しで幸せになろう」とする試みでした。無意識 のうちに、自分中心に人生を組立て、自分を満足させることを目指していたのです。
自 分さえよければ幸せになれるという発想です。これが大嘘なのです。
フランシスコ教皇 が断言しています。自分らしさを定義するときに「○○ではない」という否定形から出発す るのは、理想を追求しているようで、実際は現実を否定、拒否しているだけなのです。 現実を受け入れないので、理想が空想、夢想、妄想になってしまうのです。
この理想 主義をイデオロギーと言い、過去に何度も失敗を重ねています。社会主義の世界を創 る理想を目指したイデオロギーは失敗に終わったのが有名です。 自己実現もアイデンティティーも、失敗に終わりました。今の自分を否定して、その 弱さや惨めさを受け入れていないからです。
人生の価値は立派なのとをやり遂げるこ とだと考えていますが、正しいようですが、役に立たない人間は価値が無いという考え に通じます。
障害者や高齢者は役に立てないから、その人生は価値が無いことになっ てしまいます。これは間違いです。
人間の価値は、聖霊降臨によって大きく変わりまし た。
その人の価値は、神から愛されていることです。
神がその人の内に宿っていること です。
神が一人一人にストーリーを準備しています。それを実現させることが自己実現 の真の意味です。
それが、その人らしさなのです。 人生の価値は、欠点が無いことや立派な業績を残すこと自体ではなく、誰かのため に生きることなのです。
世間の自己実現は「何をするか」にフォーカスしますが、自己 内で完結する生き方は常に不完全です。「誰のために生きるか」を自分に問いかける ことで、真の生きる意味が見えてきます。聖母マリアは「神の計画が私において実現し ますように」と祈りました。これが真の自己実現です。それは「神実現」でもあるのです。
2024/05/17 グレース説教（小寺神父）
