最近、ビジネスの世界ではKPIがはやり言葉である。

 

KPIは英語のKey Performance Indicator略であり、日本語に訳すと「重要業績評価事項」となる。

 

KPIは、企業や組織が目標を達成するために、目標達成の進捗プロセスの状況を、定量的に認識し、かつ、評価・分析するための指標である。

 

企業や組織では、目標達成のためにKPIを管理ツールとして利用する。

 

 

最もわかりやすい営業業務を例にとって、KPI管理について説明する。

 

目標売上を達成するためのプロセスでは、まず、飛び込み営業、電話営業、HPからのアクセスなどによる、潜在顧客へのファースト・コンタクトがあり、次に、潜在顧客との商談へと進み、さらに、潜在顧客からの見積依頼を受けて提案書の提出、受注へと進む。

 

営業業務における月次のKPIマネジメントでは、営業マンごとに、日、週、月ごとの、ファースト・コンタクト件数、商談件数、商談達成割合(ファースト・コンタクトから商談に結び付いた件数:商談件数/ファースト・コンタクト件数))、見積依頼件数、見積依頼獲得割合(見積依頼件数/商談件数)、受注件数、受注獲得割合(受注件数/提案書提出件数)を、KPIとする。

 

KPI管理方式では、成績上位者の数字をベースにして、各人のKPIの目標数値を設定する。

 

各営業マンのKPIの目標と実績を比較し、営業活動の改善改良の可能性を見つけ出し、活動の底上げを図ることを目指す。

 

 

 

KPIを用いた管理方式では、まず、達成すべき具体的な業績目標を設定し、目標を達成するためのメカニズムを明らかにする。

 

そして、そのメカニズムを形成する仕組みやプロセスにおいて、特に重要であり焦点を当てるべき内容をKPIとして抽出する。

 

すなわち、KPI設定のためには、業績目標が定義され、業績達成のメカニズムが明らかになっており、かつ、そのメカニズムにおける業績を左右する重要なドライバーが管理項目として認識されていることが前提となる。

 

 

さらに、KPI管理方式をKPIマネジメントとして組織全体に展開するためには、企業や部署部門において、適切な目標達成方法を明確にしておく必要がある。

 

企業や部署部門において、目標達成のために選択された有効と考えられる手段が、CSFである。

 

CFSは、Critical Success Factorsの略であり、日本語では「重要成功要因」である。

 

CSFとは、企業や組織が認識している「ビジネスや業務を成功させるやり方」であり、具体的には、企業活動や組織活動における「重点施策」として現れる。

 

例えば、前述した営業業務では、ファースト・コンタクトの質と量が、最終的な営業成績を決定する。

 

ファースト・コンタクトをとるためには、飛び込み営業、電話営業、DM(ダイレクト・メール)営業、Webによる営業、紹介営業など様々な方法がある。

 

CSFの策定では、これらの方法の中で、自社の製品やサービスに最も適しており、また、確度の高い潜在顧客を拾い上げることができ、さらに、自社が他社と比べて優れたノウハウを蓄積している手段について、自社が最も注力する営業方式として採用することになる。

 

従って、例えば、自社のCSFを、「最初に、入手した対象業種のリストを使い特定地域でFAXによるDMを打ち、次に、電話によるフォローを行うことによって見込み客を発掘して訪問に結び付けるという、営業方式を採用し」、「地域と業種を変えて、『DM→電話フォロー→訪問』による営業パターンを繰り返す」と策定する。

 

FAX‐DMは印刷費用が不要で、内容の更新も簡単であり、また、送信先では一度は目を通してもらえるようであり、印刷物のDMに比べて断然コスト・パフォーマンスがよい。

 

KPIマネジメントでは、策定したCSFの下で、業績達成メカニズムにおけるKPI管理が実行されることになる。

 

なお、KPIマネジメントでは、時間の経過によってCFSが変わり、また、事業展開や業務展開の進展によって業績達成メカニズムに対する認識が変わり、それに伴って、KPIも精緻化して行く。

 

CSF、業績達成メカニズムの認識、KPIは、磨き続けらるものであり、不変的なものではないことに留意しなければならない。

 

 

 

中間管理職の下で働く従業員にKPI管理が実行される。

 

管理者にとっては、KPI管理は部下の活動が「行動と結果の数字」で把握できるため、とても使いやすい管理ツールである。

目標による管理、すなわち、MBO(マネジメント・バイ・オブジェクト)の一環としてKPI管理が併用されることがある。

 

部下はKPIに裏付けられた目標設定を行う。

 

有能な上司の下ならば、仮に部下がKPI目標を達成できなければ、上司は有効な助言やサポートをしてくれる。

 

そのため、KPIを取り入れたMBOは、部下にとっても上司にとっても共に有効な仕事のツールとなる。

 

しかし、無能な上司の下では、部下は数字で追いつめられるだけになり、逃げ場がない。

 

このような場合には、KPIを取り入れたMBOは、部下を追い詰める拷問の道具となってしまう。

 

従って、上司から有効な上限やサポートが期待できない場合には、部下は極力MBOからKPI的要素を排除するようになる。

 

部下のMBOの目標設定では、行動と成果の関係性があいまいになる。

 

 

 

無能な上司についた時には、部下は成長のために自分のKPI管理を実行すべきである。

 

上司への説明責任では行動についてはあいまいな説明でいいから、結果を出すようにしよう。

 

結果を出すためには、仕事における業績達成メカニズムを自ら解読し、自分のKPIを設定して行動することになる。

 

自分の仕事が内発的動機づけに導かれているのであれば、仕事は楽しいし、より高い成果を求めようという気持ちにもなる。

 

ドラッカーの説いた本来のMBOは、内発的動機づけに基づくものである。

 

MBOとKPI管理を、他人から課される管理の道具としてではなく、自分のために使ってみよう!