令和6年度(2024)における税収予算は総額で69.6.兆円であり、その内訳は、所得税17.9兆円(25.7%)、法人税17.0兆円(24.5%)、消費税23.8兆円(34.2%)、その他10.8兆円(15.6%)となっている。

 

 令和6年度予算では、消費税が税収の約35%を占めるまでに至っている。

 

 消費税は、消費税法 第一条(趣旨等)2項で「消費税の収入については、地方交付税法に定めるところによるほか、毎年度、制度として確立された『年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する経費』に充てるものとする。」として、平成元年(1989)に3%の税率で導入された。

 

 

 

 消費税は、以降、1997年(5%)、2014年(8%)、2019年(10%)の3回の税率アップを経て、現在税率10%が維持されている。

 

 税収ウエイトの推移を見ると、所得税と法人税から消費税へと、税収が置き換わっているのがわかる。

 

 法人税の実効税率は、2011年以前の39.54%から、2012年には37.00%、2014年には24.62%、2016年には29.97%、2018年には29.74%へと低下している。

 

 「失われた30年間」と呼ばれるように、デフレにより経済成長がない中で、消費税の増税で消費者に税負担を増加させることによって、法人税の実効税率を低めたことがわかる。

 

 税負担の軽減により利益が増大する中で、企業は積極的な設備投資や研究開発投資を行わず、人件費を低減させる一方で、経営者の報酬を増加させ、また、配当金を増やした。

 

 

 

 消費税からの代替による法人税の低減は、金融資産を持ち株式配当が受けられるような一部の富裕層を利しただけで、一般国民には恩恵がなかったばかりか、消費税の増税により国民全体を貧しくしたのである。

 

 結果的に、消費税を原資にして法人税率を下げたことは、消費税創設の趣旨である、『年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する経費』に充てることに違反している。

 

 ちなみに、令和6年度予算の歳出における社会保障関係費は37.7兆円である。


 もし消費税を社会福祉関係の支出に充てるとすると、消費税の税収予算23.8兆円であるため、13.9兆円が不足することになる。

 

 

 

 消費税は、「第五条 事業者は、国内において行った課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れにつき、この法律により、消費税を納める義務がある」とあるように、事業者が納める税金である。

 

 海外では、消費税と言わずに、米国では売上税、また、EUなど他の国にでは付加価値税(VAT)と呼んでいる。

 

 所得税、法人税、都道府県民税のように、税金を負担する本人が納める税金を、直接税という。

 

一方、酒税、たばこ税、ゴルフ場利用税、印紙税などのように、税金を負担する人と税金を納める人が異なる税金を、間接税という。

 

 消費税は、消費税法第五条で事業者が納税者と定めているが、負担者が消費者であるとは定められていない。

 

 現実に、消費者を相手にする零細商店、下請け企業、フリーランスで働く人々などは、消費者や得意先に消費税を転嫁をすることができていない。

 

 これらの場合には、事業者自らが消費税を負担することになり、間接税とは言えない。

 

 しかし、国会の質疑等で、財務省は、消費税を消費に掛かる税金であるとして、消費者が税金の負担者であり、事業者が納税者であると解釈して、間接税と強弁している。

 

 

 

 消費財、あるいは、付加価値税は、事業者の粗利(売上総利益)と人件費に課税するものである。
それゆえ、第二法人税とも呼ばれている。

 

 所得税や法人税は、利益が出なければ課税されない。

 

 しかし、消費税は赤字の個人事業者や赤字企業も課税対象となる。

 

 消費税は、売上から仕入れを引いた粗利と、また、社長の給与や従業員の人件費に課税されることになる。

 

 すなわち、所得税や法人税で赤字を計上している事業者にも課税されることになり、収益力の低い事業者にとっては過酷な税金となる。

 

大企業では、利益捻出のために人件費に手をつけた

 正社員の従業員を派遣や委託に切り替えると、三分の一の人件費で済むばかりか、さらに、派遣費用や委託費用が消費税の控除対象となり、企業には税金が低くなるメリットがある。

 

 すなわち、人件費であれば消費税の支払いは控除できないが、委託や派遣に対する支払いは事業者に対する支払いとなり控除できる。

 

 

 

 

 2023年10月よりインボイス制度が始まり、年収が4~5百万円ほどしかない零細自営業者にも課税業者となるような圧力がかかり、課税されるようになった。

 

 例えば、フリーランスのサービス業の事業者であれば、簡易課税を使っても新たに20~25万円の消費税を支払うことになる。


 青色決算書が赤字で所得税の課税がないのにもかかわらず、新たに消費税の納税が生まれ、30~25万円分の生活費を切り詰めなければならなくなる。

 

 消費税は、赤字企業、零細事業者、所得の低い世帯などの、経済弱者にも広く課税の網をかけ、とってとりっぱぐれのない過酷な税金である。

 

 

 

 課税には、応益負担と応能負担の二つの考え方がある。

 

 応能負担は、便益を受けた割貝に応じて、税を負担させようとするものであり、応能負担は、支払いのできる能力に応じて、税を負担させようとするものである。

 

 担税力とは、租税を負担する能力のことであり、租税に関する能力説(応能説)の基本部分である。

消費税には、弱者ほどダメージが大きくなるという逆進的性格があり、経済弱者にとっては厳しい応能負担を迫るものとなっている。

 

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO80413210R00C24A5EN8000/