「泰平の眠りをさます上喜撰 たった四盃で夜も寝られず」
上喜撰 とは緑茶の一種であり、それを蒸気船に掛けた川柳である。
幕末のペリー率いる黒船の来航によって、眠っていた幕末の日本に大激震が走った。



 2022年4月における東京証券取引所(JPX)の改革で、従来の一部、二部、マザーズ、JASDACの4市場を、プライム、スタンダード、グロースの3市場に再編した。しかし、現状では不十分として、さらに東証は改革を進めている。2023年3月には、プライム市場とスタンダード市場に上場する企業に向けて、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」を発表し、経営者に資本コストや株式を意識した経営を推進するよう要請した。

 

 

 具体的には、JPXは、経営者に、資本コストを上回る資本収益性を達成していない場合、また、PBR(株価純資産倍率)が1を切る場合については、それらの要因を明らかにし、かつ、それらの改善計画の策定と実行、また、その進捗報告を要請している。続けて、2023年10月には、「『資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について』に関する開示企業一覧表の公表等について」を発表し、2024年1月より企業の取り組み状況の公表を始めた。

 

 JPXは「資本コスト経営」推進によって、プライム市場における企業の選別を意図している。資本コスト以上の収益を上げていない企業や、株価の低すぎる企業に、市場からの退出を求めている。一連のJPXの動きに同期して、株式市場に海外からの資金が流入し、史上最高値を超える株価高を演出している。

 

 これを契機に、ほとんどの経営者が「資本コスト」という言葉を始めて聞き、「資本コスト」以上の資本収益性を意識するようになった。日本企業の加重平均資本コスト(WACC)は5~7%とされており、企業はそれ以上の対応する資本収益率(ROIC)を達成しなければならない。もしくは、株主資本コスト(COE)は7%程度とされており、企業はそれ以上の対応する自己資本利益率(ROE)を達成しなければならない。

 

 JPXの要請により、経営者はROEやPBRを意識した経営をせざるを得なくなった。ROEやPBRが1を割れるような企業経営者は、経営者失格の烙印を押されることになる。すでに、機関投資家による経営者の選別が始まっている。
「東証が眠りさまさす脱落戦 株主利益で夜も寝られず」
サラリーマン経営者も東証による「資本コスト経営」導入で、ネボケまなこでいられなくなった。

 

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB28CQP0Y4A220C2000000/?fbclid=IwAR1qbLSfAcmp0OTWkCKF1XTGjaK4zEhymVvlZYr1X6p5W7crCD8bDf15gyo