先日、奈良県桜井市にある、聖林寺 というお寺に行く機会があった。

そこで、十一面観音を拝観した。

 

天平時代の仏像の特徴として、

美しい卵型のお顔立ち、

広い肩幅と引き締めた腰が偉丈夫なお姿となる。

腕と引き締まった腰との間にできる空間は

天平の仏像にしか見られない美しさである。

 

天衣の流れ方や、

手の表情などの解説を聞きながら、

目にしたものを言葉にして説明される表現力に、

さすが大学教授だなぁ、と心服していた。

 

 

「ふわっとお顕れになるんです。

この時代の人びとはそういう顕れ方を望んでいたんですね。

その時代時代に受け入れられた仏様の顕れ方が

仏像のかたちに表れているのです」

 

仏さまの顕れ方!!!

その時代の人々が望む顕れ方!!!

 

目から鱗が落ちる、耳からは何を出そうかというくらい

衝撃的な発想だった。

仏教美術研究を生業とする方々の目には

眼の前の仏像以外に何が見えているのだろう?

 

もっともっと、

他の仏像を見てみたい、という衝動が抑えきれない。

 

今度からは、この仏像はどんなふうに

望まれていたのかという視点を加えて拝観してみよう。

 

そのとき一緒にいた同僚たちにも、この驚きを伝えたけれど

私の語彙力では伝わらなかった。

それでも、誰かとシェアしたい発見なので

備忘録として残しておきたい。

 


 

聖林寺は、本堂の引き戸を開け放つと

三輪山から吹いてきたかのような

心地よい風が感じられる

とても素敵な、静かなお寺だった。

 

奈良には、交通アクセスが悪いがために

手垢のついていない素晴らしい社寺がたくさんある。