「私という運命について」 白石一文 | holic-comic

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艶がについていろいろ。
基本、翔太くん推しです。

著者 : 白石一文
角川グループパブリッシング
発売日 : 2008-09-25
初めて読む作家さん。上司にお借りしました。明らかに新刊文庫なのに、チェーン店古本屋で108円の値札が・・・。
すごいなー。
新刊を買わないと書籍業界の流通に貢献できひんのかな・・・、と、思うんやけど、この値段を見ると古本屋に行きたくなるな(笑)。

さて、文字通り「長編小説」で、冒頭数ページを読んだときは

「あ、これ、無理かも」

と、思ってしまったぐらい、文章が面倒くさい(笑)!!
社会情勢をそこまで描写せなあかん!? と、思ったら、著者はもともと週刊誌記者やったのだそう。
また、「文章が難解」と、いうように解説で書かれている。
別タイトルは直木賞候補になったときに、「理屈っぽい」と、評されたりしているので、私が読んで
「めんどくさっ!」
と、思うのも道理なんやな・・・(と、読了後に思ったんやけど)。

結論からいうと、面倒くさくて理屈っぽくて難解な文章を、最後まで読んでよかった。これはこれで面白かった。
普段キャラ小説を中心に読む私なので、解説で書かれていたとおり
「こういう作品があってもいい」
と、思うし、たまに読むのもいい。実際、4日くらいかけて読んだけれど、1章を読了したあとはグイグイ引き込まれたなあ。

著者は女性なのかと最初は思ってたけど、男性なのかと気づいてからはなおのことこの面倒くささが納得できて、女性に対する夢? 母性本能に対する理想? みたいなものが根底にあるのかもなー、と、思った。

とはいえ、この本を読んでる週はとにかく私の仕事の失敗が多くて、ただでさえヘコみがちやったのにこんなヘコむ本はいかんと思った。
純平が語った「フォルムがない」「器がない」っていうのが、運命云々よりも一番ぐっときたかも・・・。
もしかしなくても、私は明日香ちゃん世代なんやろうな、たぶん・・・。

「すべてはまず形からはじまる」っていうの、確かにそうやろうなあ。
さすが、デザインの仕事をしている純平ならではの感性やと思う。
器がないのに中身ばっかり肥やす。やる前から、これは必要なんやろうかとか、自尊心とかやさしさばっかり発達させてしまって、肝心の器がないのだそう。

中身はあとからでいいんやって。まず、やってみる。それから、これは必要、これはいらん、と、取捨選択していけるのだそうだ。
仕事だけじゃなくて趣味も、人間関係もなんでも、そうなんやろうな。
私はスポーツを長くやってるんやけど、スポーツの精神がそうなんだよね。
まず思い切りやってみて、それから調整する。最初から調整してやると、「思い切りやる」と、いう感覚がわからないままになってしまう。

そういうのに、似てるのかも・・・。

ほんで、私の生きざまには器がないかもしれん。空っぽかもしれん。十代ならともかく、四十も超えてそれに気づかされるって、ちょっと、きつくないか・・・?

(と、思うのが、すでに器がない証拠か)

いくつからでもやろうと思ったらできるんやもんね。
今からでも器を作っていかなければ!

そんな感じで、年下でちょっと甘えた風味の純平のほうが私は気になったので、康との運命は回収したとはいえ、純平はあのままなのか・・・、と、ちょっと思っちゃった。(;^ω^)
純平に関しては生死の境はさまよってないので、いいんかな。いいの!?

手紙がいろいろなキーワードにもなってるけど、亜紀から康への手紙は、ここまでめんどくさい(笑)展開をこまごま読んできた身としては
「えっ、アッサリしてんな!?」
と、思った。これが、運命ってやつなのかな。

冒頭から細川連立内閣が云々で、あ、私ら世代よりちょっと上やな、と、思っていたのだけど、逐一時事問題が係わってくるので
「もしかして最終的には東日本大震災・・・?」
と、思ったら、初版が平成二十年。

ああ、じゃあ、違うな、と、思うんやけど、康の地元が新潟なので、もしかして、と、思ったら案の定・・・。
作中で達哉が東電に就職するとかいうてるので、さらにこの物語が続いたらますます
「ああ・・・」
と、思うな・・・、と、違う意味でこの物語の先を想像してしまった。(;^ω^)

そのぐらい、リアリティがある。だからこそ読んでてめんどくさいし、疲れるんやけど、「よくある」日常に、こんな「運命」が交差したらどうやろう、とは、思わせられる。
気づかないまま流れていく「運命」がほとんどのなか、亜紀をめぐる人たちはちゃんとその「運命」を、気づいて手繰り寄せていくのね。
(唯一できなかったのが純平と)

器があると、「運命」を、手繰り寄せられるのかもな。
自分の器に何を入れるか、日々緊張して生きているから、「運命」も逃さないのかも。
なのでますます、私には器がないかもなー、と、考えさせられてしまったのでした・・・。



ほんで、誰かを残して先に逝く人が、残された誰かへ償うとしたら、私たちが信じたい「死後の世界」から、こちらの世界はこんなだよ、と、伝えに来てくれればいいな。
少しでも死の恐怖から救ってくれればいいな。
そう考えると、先に逝くことも、残される人も、ずっとつながっていられるし、逝く順番にも理由があるのかもしれないと思えた。

くしゃみや咳より、笑うことが一番の腹筋運動になるねんて。そうかもなー・・・。
私、最近そういう意味では笑ってないなあ。
笑顔は作ってるし、笑うこともあるけれど、学生時代の友人たちとお腹を抱えて転げまわって笑ったみたいなのは、もうだいぶやってないな・・・。
友人たちと会っても愚痴ばっかりやもんな。いかん、いかん。



しかし、「運命」と、「結果論」ってびみょうに似てるね。
どっちでもええんよね。自分でそれを受け入れることができれば、それが「運命」だろうが「結果論」だろうが、どっちでもいい。
でも、「運命」と、思えるほうが、意味がある気がする。

いろいろな「運命」や「偶然」が重なって降り積もるこの小説は、確かに読了感が良かった。
終盤、いわゆる「縦糸の運命」と、「横糸の運命」が見事に織りかさねられていく瞬間は、「はっ」と、させられた。

30代、40代の女性が読んだら、どこかは共感できるところがあるかも。
読んでよかったなと思う。


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■周旋

1 売買・交渉などで、当事者間に立って世話をすること。とりもち。なかだち。斡旋(あっせん)。「下宿を周旋する」
2 事をとり行うために動きまわること。面倒をみること。
「生肉をな、一斤ばかり持参いたすんで、至極の正味を―いたいてくれ」〈魯文・安愚楽鍋〉
3 国際法上、国際紛争を平和的に解決するため、第三国が外部から紛争当事国の交渉をとりもって援助すること。
4 ぐるぐると回ること。めぐりあるくこと。周遊。


■インダストリアル

多く複合語の形で用い、産業の、工業の、の意を表す。


■爾来

[副]それからのち。それ以来。「爾来友好関係を保っている」


■奏功

( 名 ) スル

功績をあげること。

目的どおりになしとげよい結果を得ること。功を奏すること。成功すること。 「調停工作が-する」


■胸襟

胸のうち。心の中。


■茫漠

1 広々としてとりとめのないさま。「茫漠たる砂漠地帯」
2 はっきりしないさま。「茫漠とした話」


■露顕

1 秘密や悪事など隠していたことが表に現れること。ばれること。「旧悪が―する」

2 結婚してから3日目に他人に披露すること。ところあらわし。

(2017.04.08)