とても残念ですが、あなたは人生の終焉を迎えることになりました‥ | TC隊長

とても残念ですが、あなたは人生の終焉を迎えることになりました‥

つづき








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半年が過ぎ、東京で暮らす妻と息子はあなたからの便りを待ち続けていました。





「便りが無いのは元気な証拠!」











妻は曇りそうな表情を抑え息子にそう言い聞かせてましたが、
本当にそうなのでしょうか?‥








。。








その頃、
あなたはトンネル掘削で崩した瓦礫(ガレキ)が入ったモッコを担いでひたすら運び続けていました。


モッコとは長い棒の両端に大きなバケツのようなものがぶら下がった形をしており、
天秤棒の要領で肩に担ぐのです。



瓦礫を満タンに入れたモッコを担ぐと、あまりの重さに身体じゅうの骨が砕けそうでした。



実際、タコ達の背骨はみるみる曲がってゆきました。



どんなに重たくてもトンネルの中から瓦礫を積むトロッコまで休むことは許されません。



トロッコに瓦礫を積んだなら、今度は直ぐにセメントをモッコに満杯まで入れてトンネル掘削現場へ折り返すのです。



瓦礫と変わらない重さがあり、やはり身体じゅうの骨が砕けそうになりますが、一瞬たりでも立ち止まれば容赦なく殴る蹴るの暴行を加えられるのです。



タコの中には途中で足がもつれて転倒し、
監視人を怒らせてスコップで頭をカチ割られ絶命する者もありました。



そしてそのまま線路の傍らに埋められるのです‥


弱っている仲間に手を貸そうとして監視人の怒りに触れ、
手足を縛られて生きたままセメント樽の中に投げ込まれ絶命した者もいました。



ここでは自分ありきなのです。



唯唯諾諾とするのが長生きするコツなのです。








。。








気の遠くなるような一日の作業を終え、あなたは今日も無事にタコ部屋に帰ることが出来ました。


部屋の顔ぶれが少しずつ変わってゆきます。



亡くなる者あれば直ぐに補充されるのです。





新しく赴任してきた新参者は驚愕の表情で我々先輩タコを凝視する。





モッコの棒で叩きのめされ、風船のように腫れあがった顔の者



落盤事故に遭い、肘の関節が逆側に曲がったままの腕を抱えて悶絶する者


バカになり壁に向かってブツブツとうわごとを言い続ける者



監視員に反抗した見せしめとしてペンチで前歯を全部抜かれ、血を吐き出しながらのたうち回っている者





おまけに長い者で一年以上風呂に入ってないタコもいるので部屋には耐えがたい悪臭が漂う‥





新参者は

「騙された‥
トンデモナイ所に連れてこられてしまった‥‥」





うろたえる様子に先輩タコ達はうすら笑みを投げかける。





笑うしかないでしょう‥




翌朝、
新参者は隙をついて早々にもタコ部屋脱出を試みて走り出すが、
ピストルを持った監視人が馬で追い掛けてゆき、ほどなく「パンッ!パンッ!」と山合に銃声がこだまする‥





家族を食わせるため勇んでやって来たのに、まさか北海道のこんな辺境な地でピストルで撃たれ絶命するとは‥





亡くなる者あれば一応警察がやってきて検視をしたことにしますが、
全て病死や事故死として片付けられるのです。



家族にもそのように伝えられるのです。



いちいち監視人をおとがめしていたらトンネル掘削が遅くなるからやむを得ないのです。



二人の警察官は監視人から袖の下として貰った酒をぶら下げ、細く微笑みながら帰ってゆきました。



北海道開拓に正義など必要無い。



タコを酷使して元請け業者がたっぷり儲ければよい。








。。








自分の分身である子供をこの世に残して絶命したタコはまだ幸せだったのかも知れない。



女の柔肌に一度も触れること無く線路の傍らやトンネルの壁に埋められ、人柱となっていった若いタコの無念さは男として全く言葉にならない。








。。








。。








白い使者がやって来ました。





北海道の冬は厳しい。





極寒の中、作業着一枚と足袋で働かされてるタコ達‥





トンネル掘削が三分のニまで進んだ頃でしょうか、
連日のマイナス20度を下回る気温の中、あなたは凍傷で足の指を2本失ってしまいました。



もちろん病院には連れて行ってもらえず、壊死した指の付け根の痛みに耐えながらモッコを担ぎ続けていました。



「トンネルさえ開通させれば家族の元へ帰れる」



その一心で働き続けてきましたが、疲労困憊して日に日に自分の意識が遠退いていくようになりました。



痛い足のおかげで動きが鈍くなり、監視人から殴る蹴るの暴行を受ける頻度も増してゆきます。



作業を終えてタコ部屋に帰っても暖をとる手段があるわけでもなく、
ひたすら寒さに耐えながら過ごさなければならないし、睡眠もままならない。



朝になると壁の隙間から吹き付けた雪がタコ達の頭を白く覆っているのです。



栄養失調からカッケになり弱ってしまい、あえなく凍死したタコも数知れず‥








。。








想像を絶する劣悪非道な環境の中、あなたはよく働きました。





でも、、
















‥‥





‥‥‥





とうとうお迎えがきます

















いつも通りタコ部屋で握り飯ひとつと味噌を舐めるだけの朝食を済ませ、トンネル貫通まで残り僅かとなった掘削現場へ向かいました。





足が不自由になったため隊列から遅れをとってしまい、いつもなら監視人から「早く歩けっ!」と暴行を受ける場面なのですが、今日はとくにおとがめなく歩かされています‥











吹雪の中を三里(12キロ)ほど歩き通し、ようやくトンネルの入り口が見えてきました‥





そこには四人の監視人があなたを凝視しながら待ち構えています。





「?‥」





「なんだろう‥」





監視人の目はあきらかに「何か」を行動に移さんとする形相です。





誰が合図するわけでもなくあなたは一気に監視人に取り囲まれ、手際よく手足を縛られ、口も塞がれてしまいました!



弱り果てたあなたに抵抗する力なんて残っているはずがありません。





「ふごぉ~ふごぉ~!!」




慌てふためくあなた‥





人柱になる順番が巡ってきたのです!!





身動き出来ないあなたは更に等身大の丸太に縛りつけられ、薄暗いトンネルの中を四人の監視人に担がれて奥へ進んでゆきます。



作業中のタコ達はみんな通り過ぎるあなたに手を合わせる。



自分が人柱になるわけでもないのに恐怖のあまり手足を震わせながら合掌するタコや失禁する者も‥




「ゔぉ~~~ん!」
「ゔぉ~~~ん!」





泣いても始まらない





終わるのです





【タコ部屋労働者に情けはいらぬ、情けかけるなら縄かけろ】





「こんな死にかたってあるのか??」





「これで本当に終わるのか??」





「妻や子供には何と伝えられるのか??」





「嫌だっ!!
死にたくないっ!!」





縛り付けられたまま号泣するあなたは人柱として埋められる場所まで淡々と運ばれてゆきました。




優しい妻と無邪気な子供の顔が物凄い映像と化して頭を駆け巡ります。





もう会うことはありません‥





山の神様の気を鎮めるための儀式が執り行われるのです。





トンネルの壁の、人がひとりスッポリと収まる大きさの窪みに押し込まれ立たされました。





「ゔぉ~~ん!」
「ゔぉ~~ん!」





監視人があなたを足元からセメントで埋めてゆきます。





あなたは二目と見られない凄まじい形相をしてますが監視人は気にとめることも無く‥

















とうとう首まで埋められました





最後に見る風景がこんなだとは誰が想像出来たでしょうか





大いなる未練を残したまま、
あなたの顔は大量のセメントで一気に塞がれ、





闇の世界が訪れました‥















































息子

「ねぇ、おとーちゃんまだかなぁ~」







「そうだねぇ~、春までって言ってたからもうじき帰るはずなんだけどねぇ~

お金いっぱい稼いだもんだから上野辺りで遊んでるかもよ~ニコニコ





























「俺はここだよ‥」