あなたは明治時代にタイムスリップしました | TC隊長

あなたは明治時代にタイムスリップしました

タコ部屋労働者になさけはいらぬ

なさけかけるなら縄かけろ





。。





一応、リバイバル急行大雪号の続きです。








列車が金華駅を通過するとディーゼル機関車はノッチ(アクセル)全開!

エンジンは激しく唸るも左右にカーブを繰り返し繰り返し速度がどんどん落ちてゆきます。



常紋峠サミット(頂上)にある常紋トンネルを目指して登る登る。



かつて、爆煙をたなびかせながら長大編成貨物列車を牽引する蒸気機関車の撮影地として名を馳せたこの峠路は、
今でも定期・イベント列車問わず撮り鉄さん達がコンスタントに訪れますし、
鉄道雑誌にもひっきりなしに登場するポイントです。



華やかな印象さえ覚えます‥





。。





隊長はとても幼い頃から常紋峠の存在を知っていました。



自身が列車で実際に常紋トンネルを潜り抜ける以前から知ってました。



トンネル建設の経緯を知っていた父の教えがあったからです。





ここからはとても忌まわしいお話です。





北海道に詳しくないブロガーさんには何だか縁遠いお話かも知れませんが、
もうひとつの北海道として読んでいただければと思います。





常紋峠=タコ部屋労働者=人柱=幽霊





隊長の常紋峠に対するイメージは今でもこんな感じです。



常紋トンネルを潜る時はビビります。



幼少の時に染み付いたイメージは消えることがありません。





北海道開拓の礎を築いた屯田兵のお話は学校の教科書にも腐るほど出てきましたし、
実際に多大な貢献をされてきたことは北海道に住むものとして百も承知です。



文献も数多く有りますし、
現代においても次から次えと書籍が出回ってきてます。



屯田兵による開拓はとてもクリーンなイメージを持たされる。

(もちろんそれなりに過酷であったことは勉強済みです)





学校の授業で先生が教科書を見ながら、そんなクリーンな話をする度に子供の隊長は





???‥





「とーちゃんの教えと何だか違うなぁ‥」





そんな感覚でした。





本当の意味で一番きつくて辛い場所で鉄道や道路開削をしてくださった集治監(現在の刑務所)の囚人さんや朝鮮・韓国からの強制労働者、タコ部屋労働者の存在が教科書に出て来なかったのは何故なのでしょうね。





囚人は囚人ではなく「囚人さん」です。



中には本当に悪い犯罪をおかした人もいたのでしょうが、
政治犯(それも単なる思想の違い)の方々が数多くいらっしゃったからです。


現代の物差しで図ったなら罪人ではないという意味です。



「野田首相まったくアホやわホンマに!」
って本当のことを口走っただけで強制連行された時代です。






ここで誤解を招かないよう説明致しますが、
囚人労働とタコ部屋労働は全く別なものです。



北海道開拓の順序としてまず始めに屯田兵がドバッっと入植してきたのは事実ですが、
言い方が悪いが過酷な労働はお金のかからない囚人さんに丸投げして、
屯田兵は楽な仕事してました。

(囚人さんよりはるかに楽という意味です)



囚人さんが集治監(刑務所)でどれほど悲惨で、どれほどあり得ない生活と仕事と死に方をしていたのかは網走監獄博物館などに行けばある程度知ることが出来ますし、
文献もたくさんあります。



道路と鉄道開削・ダム建設に多大な貢献をされ、隊長も間違いなくその恩恵に授かっています。



タバコ片手に、もう一方の手でケータイでメール打ちながらハンドル握り、
鼻歌まで奏でながらドライブする道は実は明治時代に囚人さんが切り開いてくださったものだった‥

北海道にはそんな道がたくさんあります。





囚人さんの強制労働は明治のうちにほぼ廃止され、後にタコ部屋労働が出現します。



囚人さんは集治監という国の施設制度のもとに酷い目に遭わされてきましたが、
後のタコ(他雇)と呼ばれた土工さん達は同じ平民によって酷使されてきたものです。



タコ部屋労働に関する資料は極端に少なく、
生き証人から口伝てに継承されてきたものが少なくありません。











あなたは今、明治時代にタイムスリップしました。











あなたは東京に住んでいますが、明治の終わりの混乱期の中で仕事もままならず食うや食わずの生活をしてます。



カミさんや子供に満足に着させてやる服も食べさせる物もありません。





ある日、いつも通り日雇いの仕事を探しに上野あたりの街へ出てみると、
「北海道行人員募集!」

っと書いた張り紙が貼ってあるのを目にしました。





「どんな仕事なんだろか‥」





そこにいた募集担当者に尋ねてみると、



「ほんの数ヵ月間北海道で肉体労働をしてくれば向こう一年は生活に困らないくらいの大金が貰えるよニコニコ

北海道開拓に貢献出来る内容だし応募者が殺到してるから決めるなら早いほうがいいと思うよ!

向こうへ行ったら部屋も生活道具もあるから手ぶらでいいし、給料の前借り制度もあるよニコニコ

全く俺が行きたいくらいだよぉ~ニコニコ

明日の夜に北海道行きの船が出るからパー





家族と別れての生活は悲しいけれど、
男であれば覚悟は直ぐ決まる。





翌日





「子供は任せたぞっ!
暇みて手紙書くから!」





家族の期待を背負ってあなたは船に乗ってしまいました‥



(過酷な常紋トンネル掘削現場へ連れていかれるとも知らずに‥)





船で二昼夜を過ごして小樽港着!

下船したなら直ぐに貨物列車に閉じ込められました。





なんだか様子がおかしい‥

客車ではなく、なぜ貨物列車なのか?

なぜドアに鍵がかけられてるのか?

なぜ外が見えないよう目張りされてるのか?

なぜ行き先を教えてくれないのか?

なぜ監視人がいるんだ?

なぜ?

なぜ??

なぜ???





食事も与えられず一昼夜を過ごし、貨物列車を降りる時は目隠しをされ、更に5里(20キロ)ほども歩かされました。





そして夜更けにようやく辿り着いた先は‥





外界から完全に遮断された恐怖のタコ部屋だった‥





まるまる三日間何も食べてないのに、
その日の夕食はおにぎり1個とおかずは味噌‥

味噌汁ではなく味噌‥





夜は何十人もの男が床の上に刺身のように折り重なって寝た。





ここは何処なのだろう‥


誰も知らなかった。





朝3時起床!

朝飯も洗面も無く直ちに作業現場にランプを頼りに歩かされる。

外は雪が散らついてるのに作業着一枚、
ツルハシとスコップとモッコを担いでトンネル掘削現場へ向かう。



数人の監視人はピストルを持っている。



数ヵ月前からこの現場で働いている(働かされてる)タコ達は身体じゅうアザだらけで痩せ細り、ビッコを引き、よたよたと今にも倒れそう‥



もうろうとした意識の中でうわごとを言いながら歩く者もあった。





「なぜ皆こんな酷い状態に?」





隊列から遅れをとったタコのひとりが監視人に蚊の鳴くような声でこう言った。





「すみません、、もう腰が痛くて歩けません、、少し休ませてもらえませんか?」





監視人

「なんだとキサマーッ!
よしっ!
俺が治してやるっ!」





監視人数人でタコを素っ裸にして立木に後ろ向きに縛りつけ、
スコップで腰を何度も何度も叩きつけだした。





「ギャーッ!」





声にならない悲鳴が上がる‥





監視人

「二度と減らず口たたけないようにしてやるからな!」





木から降ろし、腰骨が粉々に砕けて歩けなくなったタコの口の中に石をどんどん詰め込んでいく。




バキッ!



アゴが外れたのにそれでも更に口を開かせて石を詰め込んでいく。



やがてバタバタしてた手も動かなくなり虫の息に‥





監視人があなたに穴を掘るよう命じた。



あなたは訳もわからず怯えながら穴を掘る。



掘り終えた穴に先ほどのタコが生きたまま投げ込まれ、
監視人はあなたに「埋めろっ!」と命ずる。





「えっ??」





監視人

「サッサとしろコラッ!オメーも埋めてやるっ!」



あなたはスコップで頭を一撃され蹴飛ばされて穴に落ち、
上からどんどん土をかけられましたが命からがら這い上がり、許してもらえるよう悲願し、
その日は何とか助かりました。





「その日は」です。





トンネル掘削作業は休みなく夜10時まで続き、
食事は朝9時と午後3時にそれぞれおにぎり一個と、おかずは味噌のみ。

味噌汁ではなく味噌です。



言われるがままに作業を続け、あなたは心の中で
「騙された‥ 完全に騙された‥」

そう思いました。





逃げ出そうにも辺りは深い山合いであるし他に住むものは無い。

だいいちここが何処なのか全くわからない‥



何人か逃げ出したタコはいたようだが、
ある者は道を失ってのたれ死に、
ある者はヒグマに襲われ、
ある者は監視人に捕まり、見せしめとして皆の前で全身に油を浴びせられ火をはなたれ丸焼けになって絶命したと聞く。





「つくづくとんでもないところに来てしまった‥」





頭をスコップで殴られて血のりのベッタリついた服のまま床についた。






やがて一ヶ月が過ぎ、トンネルが三分の一程度まで掘り進んだ頃の出来事‥



いつも通りトンネル内で作業をしていると、
特に何をしたわけでもないタコがいきなり数人の監視人に取り囲まれ衣服を剥ぎ取られ、
身長と同じくらいの丸太に縛りつけられた!



いったい何が始まるのか??



丸太ごと抱えられたタコはトンネルの壁の、
ちょうど人間が一人収まるくらいの窪みに立たされた‥





「う"ごぉ"~ う"ごぉ"~」




口を塞がれたタコが必死で何かを訴えるも、
無情にも足元からコンクリートで埋められて壁の一部となってゆく。



やがてこの世のものとは思えない形相でうめき叫ぶ顔もコンクリートに埋められ、
完全に壁の中に閉じ込められてしまいました。





人柱です。



工事を安全に進めるための風習です。



生きた人間を壁の中に埋めて人柱として立てれば事故が起きない強いトンネルになると信じられていました。





なんと鬼畜非道な‥





あなたはこれから、
いつ自分が人柱にさせられるかも知れない恐怖に怯えながら日々を過ごさなければなりません。





。。





春から働かされていたタコ達は尽く栄養失調になり、カッケやその他の病気で動けなくなるも病院には連れていってもらえませんでした。



それどころか線路の傍らに生きたまま次々埋められてゆきます。





どれくらいの時が過ぎたのか、、
精も根も尽き果てた頃、突然警察がやってきました!!





「やった!!
これで解放される!!」



あまりにもおぞましい非道な行為を繰り返してきたコイツらは全員逮捕され、
タコ部屋は解散になるだろう!





でも、
しばらくすると警察はお酒の箱をぶら下げてニコニコ笑いながら帰ってしまいました‥





お酒は「袖の下」だったのです。





タコ部屋労働をおとがめすると北海道開拓が遅れてしまうことを警察も承知してたのです。





ここは非道な人間の集まりです。





トンネルが開通するまで生き延びられるだろうか‥





それともその前に‥





。。





つづく