その先生との話が終わると、今度は主治医となる、女性のM先生と対面しました。

男性への恐怖心が強くなっていたため、Fは、病院選びも女性の先生を探すことから始めてくれていました。

M先生はとても朗らかな人でした。

対面した時には既に涙でぐちゃぐちゃだったタオルと顔を見て、ティッシュを差し出してくれました。

その優しさにまた涙が出て、勝手に溢れ出す涙もあり、また、この原因不明の苦しみの話をしなければいけない、というしんどさで泣きました。

当時の私は、つらさの原因が本当に分からず、それはとても苦しいものでした。

例えば風邪だと分かっていれば、風邪薬を飲んで治すことが出来ます。

でも風邪だと認識出来ず、頭痛や発熱に苦しんでいたら、風邪薬を飲めず『原因不明』として悪化するばかりです。

この場合に当てはめると、私は完全に後者でした。

そんな私の本当に要領を得ない話を、M先生はただひたすら聞いてくれました。

自分でも何を言ってるのか分からない状態でしたが、先生は優しく聞いてくれました。

なぜこんなに涙が出るのか分からない、とにかく苦しい、しんどい。

どうしていいか分からない。

自分は怠け者で悪者で、死んだ方がみんなのためになる、消えてなくなりたい。

父親は悪くない、父のことは好きだとも殆ど庇うように言いました。

当時の自分は、無意識に父を庇っていました。

原因の大きなひとつが父にあると、全く感じていませんでした。

無意識に庇っているということは、頭のどこかで原因は父にあると分かっているということです。

それでも否定し続けました。

父は、自分の妻を亡くしてショックを受けている。

だからかわいそうなんだ、と繰り返しました。 


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