その日の帰宅の車中は最悪でした。

父は今日のことを朝から並べて、車中に響き渡る大声で思いのままに怒鳴りました。

いつも止めてくれる母はいません。

私達は黙って下を向いていました。

いい加減終わりにしてくれないか、と思っていた時に、突然車がガタン!!と大きな音を立てました。


信じてもらえないかもしれませんが、本当のことなので書きます。


まるでタイヤが四角になったように、車はガタンガタンと縦横に揺れながら走りました。

父は焦り、スピードを落とします。

しかし、車の揺れは直りません。

急カーブに差し掛かった時、目の前に突然自分と父の死が見えました。

それは、私達の葬儀の様子でした。

遺された弟妹が互いに背を向けて座っていました。

白黒の映像です。

私は、このカーブで死ぬ、と思いました。


その源は、妹でした。

静かに激昂していた妹の強い念が、車を事故に追い込もうとしていました。

隣に座る妹の拳を抑え、やめて、とだけ言いました。

それ以上言うと、本当になってしまう、と分かったのです。

そして、車の揺れは母の怒りが元だと気づきました。

母の姿が車の天井の辺りに見えたのです。

滅多に見たことのない、怒った表情でした。

それは父に向けられたものです。

『おかあさんが怒ってる、いい加減にして!』

その言葉に、父ははっとなったようでした。

すると揺れはおさまり、何でもなかったように車は動きました。

母はいないけれど、そこにいたのです。 


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