公衆電話からの着信音
「おとうさ~ん、もうここ嫌や家帰る」
「どうしたんや」
「私、廊下に寝かされとるんやぞ」
「えっ、すぐ病院に電話してやるから」
まさかと思うけれど取りあえず病院へ電話する。
「入院して下さいと言っていて病室足りないのかい?」
言っている私も半信半疑での電話
病棟の電話も要領を得ないし、妻からの電話も今一理解できていない。
そんな電話が何度かかかる。
「家、帰る」
「鍵届けてくれたら一人で帰るから・・・」
そりゃ規則でいろいろ言われる病院より自宅は我儘一杯であり何事も気儘に過ごせる・・・
でも良いんじゃない。
この家は妻の言う通り、君の家。自由に過ごせれれば一番・・・・
そう、子供の頃
叱られても、喧嘩して帰っても自分の家、
いや自分たちの家が一番落ち着き、
何があっても自分を守ってくれる言ってみれば要塞みたいなものであったと思う。
結果はそう希望通りいかなかったけれど
母、バアチャンもどんなことがあっても家へ帰りたがり、
家で最期を迎えたがっていた。
今も私が持っている母の日記には『そうだ、家で家政婦を頼んで過ごそう・・・』ってある。