「おとうさんって入院の用意もすぐ出来るね」
ポツンと病室で妻が言う

「私、おとうさんの入院でも出来んわ」
「そうかなぁ」
そりゃ、そうだろう妻の入院は全て具合が悪くなっての入院。
とりあえず身の回りの物を持ってからぼつぼつ・・・・
妻の必要なものは後で・・・・・

自分の場合は下着と洗面具だけ・・・・
あとは売店で・・・・
だから時々
箸まで忘れて割り箸で朝、昼、夕方なんてこともある。
タオル持ってバスタオル忘れることもある。


「おとうさん、家に帰っても何もできないと思うよ」

病院は上げ膳下げ膳時間がくれば薬は持ってきてくれるし、
風呂には入れてくれるし、
そう、体力も使わせずただひたすら静養の場所。


「おとうさん、私、何処の施設入れるんやろね
「それは儂には分からんぞ」

背中の曲がり、外反母趾、
歩けないから・・・・歩けないから・・・・
自信を無くしているのは痛いほどわかる。
妻はベッドの中でそんな事ばかり考えているのだろう。

「お父さん、若年性アルツハイマーは早く進むから・・・」
『アルツハイマーでは無いと思うよ。少し忘れることが多くなっているけれどな』

「お父さん、老人ホームを申し込んでおかないと・・・・・」
いやはや、娘たちはいろんなことを言って、
単純な父親はウロウロしている。

「おとうさんは何しても上手やし・・・・」

「おとうさんは頭良いから・・・・」
「お前は・・・?」
「私、馬鹿だから・・・」

なんてことはない上手く誉められ、
おだてられなんか私の母親みたいなこと云っている。

病室から帰り際に云われた
明日は足のタコ切ってやらないと・・・