午前中の検査も終わり
夕方近くの病室。
 
ドアにトントンと力の無いノックの音。
顔中シワクチャにした母がヘルパーさんに連れられて。。。。
 
 
「tsuneちゃん、何処が悪いの。。。。。」
案じていると云うより問い詰められるような口調。
 
「何処って云われても何処も大した事ないよ。。。。」
母も元は看護士と云うより看護婦さん。
それも慶応出。
 
だから今時の病気は知らなくても
昔からの病気の事は良く知っている。
だから詳しいことは云わない。
 
「ごめんなさい、お母さんがどうしてもと仰るから」
「好いんです、何ればれますから。。。。」
ヘルパーさんにだけ伝えて、
後は「ばあちゃん、一寸病院へ検査に行ってくる、一晩は泊ると思うけれど・・・」
そんな風に母に伝えての3日目。
 
連絡もない母は待ちくたびれてヘルパーさんに・・・・
心配かけまいとヘルパーさんも頑張ったけれど毎日毎日では・・・・
 
 
そんなんだよなぁ。
小学生の頃、何かあるとは忙しい中を良く大学病院へ連れて行かれたなぁ。
フッとそんな事を思い出す。
 
「心臓が悪いです、激しい運動はさせないで下さい」
そんなことを云われながらも運動会で一等になると喜んでいた母。
 
選手になっての学校対抗の運動会には仕事を休んで応援に来ていた母。
そんな心臓のことも何時の間にか忘れていた母と私。
 
そして冬になると目の中に星みたいのが出来る何とか云う病気。
考えたら色んな病気をして、怪我をして、
柔道でも肩を脱臼したら母に連れられて外科へも走ったし。。。。
 
 
「tsuneちゃん、オマエに何かあったらおかあちゃんどうすればいいか。。。」
ぽろぽろと涙
「大丈夫や、お医者さん、何処も特別悪くないと云ってるし。。。」
「なら良いんだけど」また涙
 
「ばあちゃん、下へ行ってお茶でも飲んで来るか」
「オマエ、動かないでじっと寝ていた方が好いよ」
「寝ていたら余計悪くなるし、下行こう。。。ヘルパーさんの時間もあるし」
 
食堂の南側の窓から射す陽は暖かい。
 
「ばあちゃん、儂の心配しなくてもいいから風邪だけ引かんようにせんなんぞ」
 
病院の食堂の珈琲だから大して美味くは無いけれど
見舞の人やら次々と。。
 
「ばあちゃん、ヘルパーさんの云うこと聞いてしっかり御飯食べんといかんぞ」
「あと何日くらい入院や、私聞いてくるか・・・・」
「直ぐ退院や」
たった8日間の検査入院に2回も見舞いに来た母。
そして勝手に涙を流す母。
私の事で泣かれるとなにか悪いことしたみたい。。。。
 
 
詳しいことを云うと余計な心配をかけるし。。。。
 
「ばあちゃん、遅くなると寒くなるしいい加減に帰らんと・・・・」
 
 
運転も出来ないし誰も連れてこない妻は独りで家に。
娘にも云ってない入院生活。
 
でも母にだけは伝えておかないと
 
余計な心配かけるけれど病院のなかで
私の事で母の涙は見たくない。