六時過ぎて家に帰ると
妻殿は又ベッドの中
「お帰りなさい・・・」
「うん、ただいまぁ・・・・寒くないか?」
一昔前なら人が仕事して疲れて帰って来たのに寝ているなんて・・・
勝手気儘にも限度があるなんて、無茶苦茶に腹が立ったけれど
今はもうすっかり妻の病気ということも理解している。
 
「おかあさん、御飯にするか・・・」
暫くして妻がポツリ
「おとうさん、何時の間にか御飯の用意もおとうさんの仕事になったねぇ」
「そう云えばそうやな・・・・じゃ御飯仕掛けるぞ、それまで寝てて良いぞ
「うん」
僅か一合足らずの米の入っている電気がま。
スイッチを入れるだけで十分程で炊きあがってくる。
そんな間にタラの白子の入った味噌汁を作って、
麹漬けの鮭をホイルで包んでオーブンに入れて・・・・・
そんな間にもう御飯は炊きあがってしまう。
 
冷蔵庫から幾つかのモノも出して・・・・
暫く蒸された御飯をかき回して、先ずは仏壇へ・・・・
『山中祖父ちゃん、山中祖母ちゃん、○子をしっかり守って下さい・・・』
朝も夕方も同じ願い事ばかり・・・
そして、
「おかあさ~ん、御飯の用意出来たぞ・・・」
「ありがとう・・・・」
ママゴトみたいな夕食を終えたら、妻の分も食器も洗って、
朝炊く御飯の用意をして、食卓には朝ごはんの用意をして・・・・
妻が拭いた食器を食器棚に並べて・・・・ほんの僅かの時間。
「どうや、おかあさん、儂したら早いやろ・・・」
妙な処で威張っている。
 
母がこんな事知ったら・・・怒るかも知れない。
 
でも妻は今、病気。
いいじゃない、こんなことくらい・・・・
 
「おとうさん、何でも出来るし、早いから助かるぅ・・・・」
 
今の病院へ通い出して少しは薬が効いているのかも知れない。
テンションは少し下がり気味・・・・
妻の苦しい時位・・・・
何時までか・・・分からない。
こんな程度だったら簡単なこと。
 
昔、子供の頃、御飯を焚かされて、味噌汁の用意をして、魚を焼いて・・・・
全てが何十年も経って、役に立っている。親たちはこんな日を考えていたのかも?
暫くして
「おとうさん、寝るし好いか?」
「好いけれど薬飲んだか・・・」
「うん、飲んだ・・・・おやすみ・・・」
 
ほんの暫く前、ある日辛そうだったから
『御飯の用意してやるわ』
そんな一言から云わなければ良かった・・・かも
でも夫婦は五分と五つ、どちらがしても悪い訳でもなく、罰が与えられる訳でもなくお互いさま・・・
明日は何のオカズにしようか
夕方話していた『牡蠣鍋』が良いかも・・・・
「私、牡蠣、嫌い・・・」又云われそう・・・
 
ほんとに好き嫌いの多い妻殿です。