朝の時間、
お握りを買って何時ものように母の処へ寄ってみた。
「おはよう、ばあちゃん」
と何時ものように声だけは大きくて元気が良い。
「おはよう」
との返辞を聞きながら母の顔を見ると
額、目の廻りが内出血で青黒い。
「どうしたん?」
転んだくらいは分かっているけれど・・・
「一寸、縁側から落ちて・・・・」
ベッドはその縁側に置いてある。
その足元あたり・・・・大きく引き戸が開いている。
風は五月の風、
寒くも無く爽やかな風が時折部屋の中へ入って来る。
縁側から中途半端な姿勢で履き物か何かを取ろうとしたのだろう。
頭の方から踏み段の方へ倒れたのか・・・・
母の故郷の海は青く広がる

今更原因を聞いても仕方がないこと。
「ばあちゃん、痛かったやろ」
そんな慰めに近い言葉しか出て来ない。
「病院に行って来る?」
「もう痛くないし行かない・・・・」
強情な処だけは昔のままみたい。
心配はあるけれど喋り方も普通であれば
左程の事は無いのかもしれない。
今度からそんな危ないことをするなとも云えず、
こんな時は同居していない私が
ああしろとか、
こうしろとかは云えず
「今度から気をつけないと・・・・」
それで精一杯でもある。
熱い味噌汁とお握り、そして目玉焼き・・・・
こんなことなら誰でもできる・・・・でも、誰もしてくれない・・・・
母と過ごす僅かの時間である。
そんな時間を母は毎朝のように待っている。
そんな母をどうする・・・どうにも出来ない・・・・
そんな事の繰り返し。
でも頭を強く打ったり、切り傷でなくて良かったのかもしれない。
何時も傍にいることが出来ないもどかしさがある。