手探りで始めた在宅介護。
この先は全く予想も見当もつかない。
多くの不安もあるし、何とかなるさとの開き直りもある。
山代温泉の街中の足湯でくつろぐ人。

兄弟の云う通り、施設に預ければずっと楽なのに・・・・そう思うこともある。
でも生きている限り自由にしてあげたいと思う。
残り少ない人生を好きなように生きられたら良いと思う。
出来るだけのことはしてあげたいと思う。
1人だけの母親、
母だけの人生、
母が生きたいように傍にいて手伝いをして・・・
でも・・・時々はほんの少しだけ私に時間を下さい。
そして夕食を早めに終わらせ、六時過ぎに病院へ迎えに行って来た。
何か少し時間が早すぎたのかも・・・・
食堂みたいな場所で皆で御飯を食べていた。
そんな母にそっと手を振る。
私の姿を見つけると御飯をかきこむようにして終わらせ走って来る。
本当にこんな時の足の速さには驚いてしまう。
両手を握って
「迎えに来てくれたの・・・」 そう云って涙ぐんでいる。
「今日迎えに来る約束だろ!約束通り来たよ、だから心配なんて要らないよ」
涙もろくなっている母である。周囲に恥ずかしい位・・・・
スタッフに声を掛けて
母と二人で腕を組んで・・・エレベーターで階下へ。
パックを下げて廊下を歩く。
先ほど余りに急いで食べた御飯を廊下で吐き出してしまった。
体のどこかが緊張しているのかもしれない。
バスタオルを持っていて良かった・・・・
口元やら足元やら廊下のその辺を皆な拭いて、又自販機の前に座る。
「ばあちゃん、今吐いたから冷たいモノが良いと思うよ。
余ったら捨てれば良いし・・・・」
手にしたスポーツドリンクを二口ほど・・・・
「さあ、帰ろうか・・・」 どちらからともなく口にした言葉。
私は
まるで自分の子供を初めて保育所に通わせた時を思い出している。
保育所へ送り届けて玄関先で泣きわめく小さかった我子・・・
気にしながらそんな子供を置いて来た。
遅れて迎えに行くと玄関ロビーで半べそてポツンと座って待っていたっけ。
母の場合は成長なんてある筈が無い。
益々判断力が鈍るなかで衰えないのは協調性の無い我儘、気儘。
でも私にはそんな気儘は見せないし、穏やかな表情である。
時には幼児をあやすような顔で私を見つめている。
何時までも私は母の子供。
それでも子供の時は成長して何時かは慣れると思ったけれど
母の場合はどうなるのだろう。
何時かは通る老いの二文字・・・・
ま、良いか・・・・そんな思い・・・