入院中の母から
電話がかかりだした
車庫脇の南天も雨に打たれてお辞儀をしていました

と云うことは少し体調が良くなってきたのであろう。
「tsuneちゃん、今日退院するから迎えに来て!!」
もう今では慌てない。
後で病院に行くと
「今から退院するから看護婦さんに云って来て」
私の返辞は何時も同じである。
「先生が退院しても良いと云ったらね」・・・とか
「よしっ、明日退院しょう!!明日なら迎えに来てあげる」
こんな会話を何回も聞いている病室の人達は
私が行くと笑う
「ほら、彼氏が来たよ!あんたの可愛い1番好きな彼氏が・・・」
照れくさくて同室の人達に挨拶しながら
「ばあちやん、退院するなら歩く練習しようか?そこの休息室まで」
廊下の片隅にある休息室。
そう云っては、
廊下へ連れ出して手すりにつかまらせ
少しづつ歩いてみる。
ここ暫くで大分筋力も落ちて見るからに頼りない歩き方である。
少し歩いて休み、
暫くするとまた歩きはじめる。
こんな歩き方で、こんな体力で良く
ナースセンター前の公衆電話の処まで歩いて
電話をかけて来ると思う。
誰が考えてもそれは私への電話の執念であるのかもしれない。
それでももう間近であるだろう退院への為にも
歩行の練習は欠かせないと思う。
休息室とは云えない廊下の隅の長椅子に座らせて、
階下の売店まで冷えたジュースを買いに走る。
「冷たくて美味しいね・・・」
そして二口、三口飲んで
「tsuneちゃん、私の年金大丈夫かね。
もう兄貴とは付き合わない方がいいよ。
あんな汚い奴は・・・
きっと女がいるんだね。
私の年金にまで目をつけると云うのは・・・・」
「分からん、そんなこと」
「でも・・・・tsuneちゃん、騙されないようにしないと。
あいつは人を騙して通帳も年金も持って行ってしまうから・・・・」
ほんの暫くの間の会話も結局そうなってしまう・・・・
何回聞いただろうかそんな話・・・・