最近急に耳が遠くなったようで、私が安くもない補聴器を買ってきて母に使用方法を教えてやると
 
 『邪魔くさい』 とか
 
 『面倒くさい』 とか言うけれど、耳にセットすると
 
 
 「聞こえる、聞こえる ちゃんと聞こえる」 などと喜んだりしていた。
 
でも夕方に行くともう耳から外していて
 
 「ばあちゃん、補聴器は?」 と聞くと
 
 「どっかその辺や」 と答える。
 
 「ちゃんとしていないとダメじゃない」
 
 「邪魔くさいし、分からん」
 
 「こっち向いて、どうや、聞こえるか?」
 
 「おっ、聞こえる、聞こえる」
 
 「どうや、人と話しをする時聞こえんとつまらんやろ、これを付けとると人の云うこと も自分のでも分かるやろ」
 
そんな話をしながら台所へ回る。
 
 
簡単ではあるが洗いものをしながら夕食の支度を済ませる。
 
 「おまえ、おかず作るの上手いね。板前さんになればよかったのに」
 
なんておだてながら一生懸命に食べている。
 
 
傍に座って新聞を広げていたけれど食べ終わった頃を見計って台所に立つ。
 
 「いいから、そのままにしておいて。そこまでして貰ったらバチがあたる」
 
とかなんとか云っているけれど自分で出来る筈もない。
 
 
自己の痕か、左足のひざから下は大きくむくんでいる。
 
 
そして30分程、入れてくれたお茶を飲みながら母の話を聞いて
 
 「ばあちゃん、帰るわ」 
 
 「もう帰るの? ・・・・・・・ まだ居てよ」
 
 「家に帰ってすることもあるし・・・・」
 
 「ここはおまえの生まれた?家だから泊っていけば・・・・そうやな、おまえにも家庭 があるもんな・・・・」
 
 
また、10分が過ぎる。
 
 
 「ばあちゃん、やっぱり帰るわっ」
 
勝手口から外へ廻ると戸締りした玄関の鍵をもう開いて外へ出ている母。
 
 
 「ばあちゃん、早く寝ないと。ありがと、おやすみ」
 
 「・・・・・・気を付けてね、サイナラ」。。。。。。。