年季だけは積んでいる、元ボードゲームデザイナーの北条投了です。
色々作ったなあ。
アメリカのボドゲデザイナー、ドナルド・X・ヴァッカリーノ。
彼の代表作『ドミニオン』は、21世紀のボドゲ史に燦然と輝く、掛け値なしの名作です。
いわゆる「デック構築系」と呼ばれるゲームの始祖であり、おそらく最終形です。
これほど完璧な作品の作者となる栄誉を与えられるのであれば、悪魔に魂を売ってもよいと考えたボドゲデザイナーは、私だけではなかったと思います。
しかし私に与えられた天啓は、なぜか名作ボドゲのアイデアではなく、「社会改革の提言」でした。
そのため今、仕方なく慣れないブロガーなんぞをやっております。
つらい。
あの『ドミニオン』を作ったヴァッカリーノが、次に繰り出してきた本格作品が『キングダムビルダー』だったので、我々は随分安堵したのです。
『キングダムビルダー』は2012年のドイツゲーム大賞で、もちろん凡作ではありません。
しかし、『ドミニオン』が与えたインパクトは、こんなものではなかったのです。
もしヴァッカリーノが、『ドミニオン』クラスの作品を次々と繰り出してきていたとしたら、我々同年代のボドゲデザイナーたちはみんな、
「天は無情なり! なぜ我とヴァッカリーノを同じ時代に生まれしめた!?」
と叫んで、口から血を吐いて死ななければならなかったのです。
『ドミニオン』とは、それほどの作品でした。
そんな伝説の巨匠、ドナルド・ヴァッカリーノの最新作がこちら。

「月面!
コロニー!
大惨事~~!!
説明!!」
バカゲー枠です。
プレイヤーはそれぞれ、自分が管理する月面コロニーを発展させます。
ただし、さまざまなトラブルやロボットの暴走により、コロニー住民の命はどんどん失われていきます。
ひとりのプレイヤーが住民をすべて失った時ゲームは終了し、最も住民を多く残していたプレイヤーが、このゲームの勝者となります。
このゲームには、よりによって個人ボードの中央に、大きなキズがあります。

ボードの右側にある扇形のタイルは「アクショントークン」という名前で、ゲーム開始時にはボードの外側に置かれており、作業アクションを行うたびに、選んだアクションの上に置いて、アクション処理後に中央の扇形のスペースに移動するよう、ルールには書かれてあります。
しかし、この手順を行わなくても、ゲームの進行自体に支障はありません。
この「アクショントークン」は、実はこのゲームには不要なのです。
なぜこんなことが起こったのかというと、おそらく当初は「同じターンに同じアクションを行ってはならない」というルールがあり、アクショントークンでアクションスペースをふさぐという手順を入れる予定だったのだと思われます。
しかし本作の販売直前に、「同じ作業アクションを連続使用していい」とルール変更することになり、余ったアクショントークンでルール上まったく無駄な手順を踏ませることになってしまったのでしょう。
テストプレイの不足を示す物証であり、非常に恥ずかしい代物です。
実際のプレイにおいては、アクショントークンを一切使用しないことを、お勧めします。
ユーザーによるルールの独自改変となりますが、ゲームの欠陥を補正するものなので、問題ありません。
ルール解釈で他プレイヤーとモメたら、「北条投了が省略してもいいと言っていた!」と主張してくれてかまいません。
このゲームにはプレイヤー間インタラクティブがほとんどなく、1人でも5人でもプレイ感が変わりません。
トップ独走のプレイヤーが仮に出ても、その邪魔をすることはほぼ不可能です。
「自分で構築したエンジンを、自分の手で壊す」という体験は斬新で、かつテーマにも合ってるのですが、その手法があまりにも雑に見える。また、そもそもこのテーマはユーザーのコア層に響くのかどうか。
あと、単純に高え。
大箱とはいえ、バカゲーに税込9,350円はいくらなんでも強気すぎんだろホビージャパン。
全般的にキツい物言いになってしまいましたが。
しかし、これはあのドナルド・ヴァッカリーノの作品なのです。
彼の作品をオブラートに包んで評するなんて芸当ができるほど、私は大人ではなかった。
あの日『ドミニオン』から受けた衝撃は、それほど眩しく、それほど妬ましいものだったのです。
いかがでしょうか?
ご意見ご感想を、お待ち申し上げております。
本日はここまで。
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