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「岩崎良美 Debut 30th Anniversary CD-BOX」

1980年デビューで、怒濤の30周年アニバーサリーのリリースが連続したのは松田聖子。
ポニーキャニオン所属だったアイドルで、怒濤の紙ジャケ&HQCDで復刻が実現したのは斉藤由貴。
そしてダークホース(?)で登場が岩崎良美!でした。それがデビュー30thアニバーサリーBOXです。

80年の1stアルバム「Ring-a-Ding」から87年の「床に、シンデレラのTシャツ。」まで、
キャニオン時代に出た12枚のオリジナルアルバムを紙ジャケット&HQCDで復刻。
そしてメモリアル特典(なんとジャケに巻いてあった「帯」の復刻とか。)も付いた豪華仕様です。
しかも、アルバム未収録曲やバージョン違いなどもボーナストラックとして収録されて、
キャニオン時代のコンプリート仕様になりました。

松田聖子が松本隆と手を組んでニューミュージック路線を走るより前に
実はすでに一歩先んじていたのが良美さんでした。(早々の尾崎亜美の起用とか。)
今改めて聴いてもハイクオリティなのには驚いてしまいます。

1stと2ndアルバムには、彼女の歌唱力を生かし、
なかにし礼氏が作詞したやや大仰な文学路線を含みつつ、
既に「歌謡曲」と「シティポップス寄りのニューミュージック」をうまく取り入れた佳曲が詰まっています。
デビュー曲「赤と黒」や第2弾「涼風」(資生堂シャワーコロンのCMソングでしたね。)を含む
1stアルバム「Ring-a-Ding」は、70年代を引きずったような雰囲気も残っていますが、
作曲は芳野藤丸さんを中心にミッチー長岡さん、そして全曲アレンジを大谷和夫さん担当と、
かのSHOGUNのメンバーがバックアップという強力な布陣でした。

ただ、マチルドだのマノン・レスコー、ローレライなど、なかにし氏が歌詞に投影した世界は
文学要素?がとっても濃くって、フツーの中高生にとっては難しいものでした。
来生さんが詞を書き藤丸さんのコーラスもピッタリだった「涼風」の爽快なフィーリングが
もっと前面に出ていればなぁ・・・、などと残念に思っていました。
まぁ、本当はもっと上の年齢層のファンを意識してのデビューだったのかも知れませんが・・・。

かの篠山紀信さん撮影のジャケット写真などもありますが、ドキッとする写真は少ないようです。
が、これだけは例外、ジャケットが幻想的な2ndアルバム「SAISONS」。
なお、前作同様に藤丸さん作が入っているもののSHOGUN色は薄れて、
姉「岩崎宏美風」と言いますか、前作より一歩後退?の歌謡ポップス的な曲が多いです。
でも宏美さんが歌うとかなりコッテリしそうなドラマチックナンバーでも
良美さんが歌うとそうでもなくって、とってもイイ感じなのですが。

ところで80年代アイドルのアルバムというと、歌謡曲とニューミュージックとの融合が顕著ですが、
どうしても同期の松田聖子だけがクローズアップされがちです。
でも、声を大にして言いたいのは、最初から「ハイクオリティ」だったのは岩崎良美の方。
キャニオン直系、金井夕子の流れを汲む成果だと思っているのですが、
金井夕子→良美の発展的展開は、残念な事にフツーのアイドルファンにはとても難解だったようです。

もし、疑問に思う方は3rdアルバムの「Weather Report」をぜひ聴いてみて下さい。
カラリと晴れたA面も、曇り空や雨模様のB面も実に爽快で、彼女のボーカルも抜けきった感じ。
個人的にはいまだに初夏を迎えると必ず流しているアルバムなのです。
尾崎亜美との出会いをはじめ、南佳孝さんやブレッド&バター、ケン田村など作家陣も
当時はかなり新鮮でしたが、本当にサウンドが「ナウ」かったなぁ・・・。
もう、ニューミュージックを通り越してフュージョン系のイメージも満載でした。
作品トータルの雰囲気を尊重したのか、シングル曲のボーカルを新録音しているのも嬉しい配慮でした。

そして尾崎亜美による提供&コーラスまで入っているシングル「ごめんねDarlin」や、
当時はクリスマス用クリスタルシングル付きだった「心のアトリエ」もこれまた名作です。
一段と軽やかに、上質ポップスに弾ける”ヨシリン”が心地いいんです。
あの「チャー」提供の「あの時…」みたいな実験的世界もモノともしない実力が堪能できる仕上がりです。
(チャーがアイドルに曲提供したのは珍しいのでは?)

82年にはシングル「愛してモナムール」「どきどき旅行」をリリース。
デビュー当時とは比べ物にならないほど洗練された欧州的エッセンスを振りかけ、
先輩・金井夕子作詞のシングル「Vacance」ではあのパンタが曲提供するなど、
より独自の世界を構築した到達点作品が「セシル」でしょう。
加藤和彦、大貫妙子らおフランスにふさわしい作家陣が集結、
清水信之アレンジということもあって小粋な欧州ムードがいっぱいであります。
イメージチェンジと捉える人も多いようですが、デビューアルバムからヨーロッパの匂いが
テーマの一つとしてありましたので、むしろそれをバージョンアップしたと見るべきでしょう。
なお、このアルバムがキャニオン・レコードの邦楽初CDだった事も忘れてはならない事実です。
(同時期、CBSソニーの初CD群の中には松田聖子の「パイナップル」がありました。)

卓越したポップセンスを持っていたせいで、より高度な方にしか向かえなかったのかも知れませんが、
83年初頭には日清サラダ油の豆乳ソングにしてハイレベルな名曲「恋ほど素敵なショーはない」が
久々にスマッシュヒット。
コレを含むのがタイトルも素敵な「唇に夢の跡」です。

この時期のシングルって、「ラストダンスには早過ぎる」にしても「月の浜辺」にしても
「オシャレにKiss me」にしても、それぞれに非常にクオリティが高いのですが、
難曲すぎるのかヒットには結び付かず、結果としてアルバムセールスにも結びつかなかったのは
次作の「Save me」もしかりです。

そして、翌年にはあの「タッチ」へと辿り着いてしまい、
それが彼女の代名詞になってしまうのですけど、その前に出た8曲入りミニ・アルバムを聴くと
なんとも口惜しい限りになるのです。
それが、シングル「愛はどこに行ったの」「くちびるからサスペンス」を含む傑作「Wardrobe」。
康珍化+林哲司のシティポップス満載(=杉山清貴&オメガトライブの世界!)で、
都会的センスいっぱいの大人なアルバムです。
今回ボーナストラックの「ジャスミンの頃」(大村雅朗作品です。)は個人的にはNo.1だと思いますし、
地味でもこういう「シティポップス」を続け欲しかった、というのが多くのファンの要望だったと思います。

確かに、「タッチ」は自身の最高ヒットではありますし、
一時は遠ざかっていたヒット曲の世界へ呼び戻したのも「タッチ」の再評価だったようですし、
アニメソングNo.1として、いまだに多くの人に愛されているのは素晴らしい事だと思いますが・・・。
であるからして、このボックスをきっかけにして「タッチ」以前のポップスシンガーとしての実力を
再確認して下さる方が増えればなぁ、なんて思います。

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