私用で忙しく、ブログは書けないかなと思っていましたが、タイトルにある新聞があまりにも
身勝手な意見を平気で書いているので、つい。

問題の社説は、9月2日の「週のはじめに考える 「エネルギー選択」の虚構」です。

まずはじめに、私の立場を言っておかないと誤解を招くでしょう。下衆の言い分、聞いてね。

1)市場の声を拾った場所
・大阪と東京を主な対象とする企業相談に関係しており、そこで聞いた素朴な意見です。
・聞いた対象は中小企業主が多いですね。

2)原発についての思い
・ないのが一番。だって、最終処理までのシステムが出来ていない。そんなもの、あかん。
・すぐになくすのは、今年の夏を見て無理だとわかった。代替施設での発電が急務。
・原発なくすなら、海外に輸出している事業を違約金払って即時やめるべき。無責任だろ。

さて。
ここからが、東京新聞に対する侮蔑です。
この社説は結論が「原発再稼働は間違いだった」という前提で書かれているので、細部がお粗末
なのだと解釈しております。
勝手に各部分を引っ張り出してみてみますと。

A)東京新聞の調べによると「関電管内では二十六日までの八週間で事前の需要予測を10%も
  下回り、原発なしでも余力があった(中略)大阪府市・エネルギー戦略会議の調査では、
  西日本の六電力合計で約一千万キロワット分も余剰電力があったことが分かっています」
B)「万が一、関電だけでは足りなくなっても、各社でやりくりすれば十分な数字です」
C)「三〇年を待たずに「いますぐゼロ」という選択肢だってあるはずです」
D)「原発を動かすなら、まず安全確保体制を整えて、それから国民の理解を得る。依存度が決
  まるのは結果にすぎません。つまり手順が完全に逆なのです」

まず、A)。これは客観的な事実でもあるでしょう。ですから正しい話です。
私もこのブログで、関西電力が隠している揚水発電の本当のキャパを取り上げました。
問題は、この正しいデータから、どういう結論が導き出されるのか、その論理的思考が客観的
なものなのか、それともある「結論」に誘導するものなのか、です。
後者はもちろん、このブログで繰り返しとりあげている「詐欺師の理論」ですね。

A)から論理的に展開させるためには、前提条件がいくつか必要となります。
ところが、この社説には「前提条件に触れた部分がない」のです。
つまり、A)という事実が、いついかなる場合でも成立するという前提で話が進むのです。
この論理展開の異常さ(詐術に近い)はあとで生の声とともに述べましょう。

次のB)ですが、これは導き出される結論のうち、都合の悪い選択肢を排除しているのです。
ここも「前提条件が必要なのですがどこにも触れていない」という身勝手な展開です。

そしてC)は、前提条件を無視して論理段階をいくつも飛び越えて出現した「結論」です。
社説の主張の一つがこれだったのでしょう。
逆にこの結論を出すためには「前提条件が判明すると邪魔」だったのでしょう。

D)正論です。その通りです。私もそう思います。
ただし、これも「詐欺師の理論」の一つなのです。
つまり「曖昧な結論を出したあとで正論を述べて曖昧さを誤魔化し正当化する」詐術です。

では、どのような前提条件が隠されたのか。簡潔に列記しましょう。
・この夏の消費電力は個人や企業の節電努力による数字である。
・その節電努力には、継続可能なものと不可能なものがある。
・大阪の中小企業主の話では、職人のシフトや創業時間でこの夏はかなり無理をしている。
・この夏以上の猛暑がこの先数年以内に来る可能性がある。
・火力発電所の多くは老朽化しており、この夏のような連続運転は続かない。
・火力発電に必要な職人は退職しておりノウハウの伝承がされていない。(原子力依存故)
・当然ながら、火力発電は資源消費と二酸化炭素排出と貿易赤字の増加を促進する。
・電力供給に安全シロがない地域で企業活動(特に製造業)はできない。
などなど。

お分かりでしょうが、東京新聞の社説にある理論展開を正しいとすれば、原発をゼロにして、
中小の製造業を倒産させ、基本企業の海外進出を促進し、環境を破壊し、日本国の経済を劣
化させる未来が「正しい」ということになります。
我々庶民への多大な悪影響は、全てこの社説では隠されているわけです。

東京新聞の社説が「本当に正しい」ものになるためには、上の「前提条件」が全て解決され
ていることが必要なのです。
ところが東京新聞は、こういう問題点には触れず、自分の都合のいい結論に導くため購買者
を騙しているのです。

何故に朝から一生懸命こんなブログで書いているのかと言われたら、この夏に会話をした全
国(特に大阪)の中小規模の製造業の現状を見てきたからです。
生産シフトを無理やり変え、職人に無理強いをし、なんとか注文に応えているのです。
社長さんたちは弱りきっています。
「この節電対策をあと何年続ければいいのか」と。
「限界利益を割っている部分もあり、赤字経営になる」と。

ぜひ皆さんは、この東京新聞の愚かな社説のような発想をせず、そして同時に安易な妥協も
せず、目標に向けたステップを明確にし、実行するべきです。
政府による中小企業へのフォローも不十分です。

ここで蛇足。
詐欺師なら、上記のような話が出ると、なんといって誤魔化すでしょうか?
答えは、

「原発に頼らなければならない現状を作り出した今までの政府が悪い」

と、論点のはぐらかしをする、です。
過去の責任追及は別にやってください。
今、ここでいかに経済をつなげるのか、が最重要課題なのです。

原発撤廃でも構いません。それを目標にした時に、今、どういうステップを踏んでいくべき
なのかを明確にすることが重要なのです。

中小企業の製造業こそ、世界を圧倒する技術とノウハウの宝庫です。日本国の資源です。
これを失うことは絶対に避けなくてはいけないのです。
原発の再稼働許可基準、最終処理方法の明確化、このあたりが心血を注ぐべき「論点」だと
思うのですが。
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