白猫プロジェクト5周年記念イベント「ダークラグナロク~黒の後継者~」が炎上している。

そう言っていいだろう。

運営が祝賀ムードを盛り上げ、華々しく始まったイベントに悪評が泉のごとく湧いている。

いったいどうしてなのか?

最大の理由は、「ケンセイ」と言うキャラクターがイベント中で死んだこと。

しかも、これは生半可な死ではない。

イベント中で死にざまが、一枚絵によってはっきりと示されている。

白猫のストーリー部分と言うのは「紙芝居」とたとえられるている。その他多くのソシャゲと同様に、使いまわしの背景に、一種類だけのキャラの立ち絵がならび、その下にテキストウインドウが表示されるという、コンシューマーゲームと比べればひどく簡素な作りになっている。

それが突然、画面全体が、ケンセイの死の瞬間を描いた一枚絵に切り替わるのだ。

さらに言うと、白猫には「タウン」と呼ばれるいわゆる「箱庭要素(様々な建物やデコレーションを配置して楽しむもの)」があり、普通ならキャラクターがそこをてくてくと歩いている。

ケンセイも、ダークラグナロクまでは同様に歩いていた。

しかし、このイベントのストーリーを終えるとケンセイはタウンを歩かなくなり、代わりに「静謐の祠(せいひつのほこら)」という施設を建てられるようになる。
中に入ると石碑があり、そこにケンセイの名前が刻まれている。

これは、白猫プロジェクトにとって初めてのことだ。

それどころか、ここまで「キャラの死」と言うものを印象付けたことのあるソシャゲと言うのも珍しいのではないか?しかも、NPCではなくプレイアブルキャラクターを。

その意味で、今回白猫公式は、かなり大胆な試みを行ったと言える。

だが、それがよくなかった。

そのおかげで大きなヘイトを集めることになってしまい、売り上げにも大きく響いたともうわさされる。

その中で最も強くヘイトを集めたのが「セレナ」と言うキャラクターだ。

彼女は本イベントの主人公であり、ケンセイは彼女を敵の攻撃からかばって死んだのだ。

そのせいで「ケンセイが死んだのはセレナのせいだ」と言う認識が一部のユーザーの間に起こってしまった。

ただ、俺はその風潮に「ちょっと待ってくれ」と言いたい。

本当にケンセイが死んだのはセレナのせいだったのか?

そのことを、以下に、単純な俺の推測、もうそうではなく、物語中に根拠を求めて検証していきたい。

ケンセイが死んだのはなぜなのか?
まず、本当に初歩的な指摘からしよう。

ケンセイは、セレナを敵の攻撃からかばった。
その時、その攻撃を放ったのは「モルデウス」と言うキャラクターだ。

つまり、

ケンセイが死んだのはモルデウスのせいだ。

この点を見過ごして、「セレナのせい」としてしまうのは不当だ。

まるで「痴漢にあったのは隙があるせいだ」とか「いじめられる側にも問題がある」とかいう理屈と同じだ。

露出の高い服装をしていても、わきまえている人間は触らない。いやな奴だからっていじめないことはできるし、いじめない人もいる。

それでもやってしまうのは、やる側に問題があるからだ。

それなのに、なぜか被害者側を責めてしまう。これは、人間に本能的に備わっている思考回路なのだろう。
だが、そうだからこそ、しっかり理性を働かせて直接の原因を見極める必要がある。

セレナが死んだのはモルデウスのせい。

大事なことなので2回言いました。

とはいえ、ただそれだけで終わらせてしまってはあまりに単純すぎる。

直接の原因はモルデウスでも、ストーリーを運命論的にとらえて、そこに至るまでの過程の中でケンセイが死んだ間接的な原因を検証してみよう。

まずは、セレナの行動を見ていこう。

セレナはまずケンセイに「お前は前線に出るな」と命じられた。だが、その命令に反し、小さな部隊を率いて伝令の役を買って出ている。

そこを敵に見つけられ、襲撃を受けている。

しかし、ケンセイ率いる救出の部隊が到着し、敵の軍師・シンラとその部下の将軍3名を撃破、敗色濃厚となり逃亡したシンラをケンセイとともに追撃している。

追い詰めた先で、シンラを撃破した。
ただ、追い詰められたはずのシンラは、闇に触れたことで過去の、自身が最も力にあふれていた時の姿・モルデウスとなり復活する。

そして、そのモルデウスは、セレナの師であるアマリアを殺害した犯人だった。

激昂したセレナは、モルデウスに襲い掛かる。しかし、力及ばず、軽くあしらわれ、モルデウスの反撃を受け、その攻撃からかばった結果、ケンセイが死亡した。

なるほど、セレナは何度か問題行動を起こしているようにも見える。

しかし、本当にそうだろうか?

実は、セレナの一連の行動は、必ずしもケンセイの死につながっていない。

まずは、一つ目の、セレナがケンセイの命令に反して前線に出て、そこを敵に狙われた件。

確かにこれは問題だが(この時、連邦のパラケス将軍がそれを容認しているので彼にも責任の一端がある)、ケンセイの機転によって、結果的にはそこに集まった敵の主要戦力を打ち倒すことに成功している。

そして、ここが大事なのだが、ケンセイが本当にセレナを「何があってもセレナを前線には出さない」と決意していたのなら、この段階で「俺はこれからシンラを追撃するがお前はここに残っていろ」と言うこともできた。

しかし、ケンセイはしなかった。

この理由は明らかにはされていない。セレナならやれると思い直したのか、残りはシンラ一人だから問題ないと思ったのか。

とにかく、ケンセイはセレナを連れていく選択をした。

つまり、セレナ自身の行動による悪影響は、この時点で終了している。むしろこのケンセイの選択の方が大きく影響したと判断する方が妥当だ。

その意味では、ケンセイ自身の判断ミスによって、自身の死を招いたともいえる。

2つ目は、シンラが覚醒してモルデウスになった件。

この覚醒は、実は誰にも予想のつかなかったことだった。

シンラは闇に飲まれた結果覚醒したのだが、この直前のセリフは「闇よ、なぜ、わたくしを、飲み込もうと…」だ。

つまり、シンラ自身、闇に飲まれて自身が死ぬことにおびえていた。もともと闇の住人であったシンラだが、だとしても闇によって力をつけるとは限らなかった。しかし、シンラは力をつけた。

これは、シンラ自身にさえ予想外の出来事だったのだ。

この出来事がなければ、シンラを打ち倒して戦争に対する勝利が約束されていた。

先ほどは、「ケンセイの判断ミス」と言ったが、それはある意味間違いだ。あの段階では、油断があったとしても、「セレナを連れて行っても問題ない」と思ったとしても仕方がない。

この完全なイレギュラーがケンセイの死の重要な要因と言えるだろう。

3つ目。
セレナが怒りのあまりにモルデウスに襲い掛かった点。

これこそ「セレナがケンセイを殺した」という印象をもたせるが、だがこれもストーリーのディテールを抑えられれば、そこまで重要な要因ではないとわかる。

シンラが闇に飲まれた直後、そしてモルデウスとして現れる直前、闇の塊のような姿でシンラは強大な攻撃を放っている。

負傷しながらも、その攻撃を何とかかわしたケンセイは、「逃げよう」と主張するセレナに対して、あの塊はこちらを見ているからと言う理由で「背は向けられない」と返答している。

つまり、その時のケンセイとセレナに「逃げる」という選択はなかった。

残る選択は、「何もしない」「戦う」の二つだ。

さて、この時「何もしない」を選択していたら、事態は好転したか?

残念ながらそれはあり得ないだろうと思われる。ストーリー中に明言されているわけではないが、目の前には、自分たちにあふれんばかりの敵意を向ける者がいる。それが、「自分たちがじっとしていれば、何も攻撃してこない」なんてことがあるだろうか?変身ヒーローもので、「変身中は攻撃してこない敵」じゃあるまいし。

そう考えたとき、遅かれ早かれセレナも、なんだったらケンセイも、モルデウスに立ち向かわざるを得なかったのではないだろうか?

セレナの行動は感情的なもので、勝算も何もなかった。だが、悪いものではなかった。事実上、その選択しかなかった。

その意味でも、やはり、「モルデウスの覚醒」という想定外の事態が最も重要な要因だったと言えるのではないだろうか?

さて、セレナ他シンラを追撃した部隊のうち生き残った者はケンセイの死後、モルデウスから逃げることに成功している。

その理由は何か?

ケンセイの副官、リーランをはじめとする仲間たちが駆け付けたからだ。

ここも注目すべき点だ。

つまり、もっと早く彼女たちが駆け付けていれば、ケンセイは死なずに済んだかもしれない。

その意味では、リーランに責任を求めることもできる。とはいえ、そこにリーランの不手際があったとは描かれてはいないが。また、ここを問題にする場合、別の見方もできる。

ケンセイが、リーランとの合流を待てばよかった。

なぜそれをしなかったのか。理由はシナリオの中には見られない。勝機を逃すと思ったのか、単純に知らなかったのか。

わかるのは、結果的にはその判断が文字通り命取りになったということだけだ。

全体の流れの中に見受けられるケンセイの”死因”はこんなところだ。
まとめよう。

①セレナ
・ケンセイの命令に背いた
・激昂してモルデウスに襲い掛かった
②ケンセイ
・一度後方にひっこめたはずのセレナと共にシンラを追撃した
・リーランとの合流を待たなかった
③シンラ
・モルデウスとして覚醒した
④リーラン
・ケンセイとの合流が遅れた

さて、結局ケンセイを死なせたのは誰だったのか?

俺は誰のせいでもないと思う。
キャラクター全員がそれぞれの状況で、それぞれの思いを抱き、しかし、「闇を倒す」という共通の目的のために行動しただけだ。
そこには、いい判断もあったし、ミスもあった。だが、戦争という極限状態の中、一瞬でぎりぎりの判断を繰り返さなければならない状態で、それをだれが責められるだろう。

ひょっとしたら、「悪い結果になった以上、誰かが責任を取らなければならない!それが軍隊じゃないか!」と言う人もあるかもしれない。

それを言うなら、ケンセイこそ軍の最高責任者だ。

結局、誰が悪いでもない。
不運もあった。幸運もあった。想いをかけ、死力を尽くして戦った。その結果に過ぎない。
それを、運命と言うのではないだろうか?

ただし、モルデウス、てめーはダメだ。

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