マージナルゲインというものがある。
小さなことの積み重ねが大きな進歩に繋がるという考え方だ。

イギリスのプロ自転車ロードレースチーム「チームスカイ」のゼネラルマネージャー、デイブ・ブレイルスフォードの提唱した考えだ。

彼はこの考え方に沿ったチーム強化策を打ち出し、チームスカイから、イギリス人初のツール・ド・フランス総合優勝者を出した。しかも、二人もだ。

これは、誰からも不可能と思われていたことだった。

この「マージナルゲイン」とは小さな改善を積み重ねるというものだ。

ブレイルスフォード曰く、

「大きなゴールを小さく分解して、一つ一つ改善して積み重ねていけば、大きく前進できるんです」

彼の行った改善とは、

・専用マットレスと枕を導入して睡眠の質を高める
・選手がホテルに泊まる時は、スタッフが部屋に事前に掃除機をかけ、感染症予防率を高める
・肌に優しい洗剤でユニフォームを洗い、快適感を高める

など、そんなに効果があるのかと疑わしいものもある。

だが、今やこの方法は世界中の様々な分野で大きく成長するための効果的なアプローチとして評価されている。

ここで俺はふと思った。

似たような発想は二千年以上昔にもあった、と。

孔子の正名運動というものだ。

孔子は弟子の子路(しろ)に「もしも先生が政治をするとしたら何をなさいますか?」と聞かれてこう答えた。

「まず名(投稿主注:言葉のこと)の秩序を正すつもりだ。」

政治をするのに言葉を正すなんていう関係なさそうなことをなぜやるのか?孔子はその真意を聞かれて、こう答えた。

もし名の秩序が正しくなければ、言葉の意味が混乱する。
言葉の意味が混乱すれば、何事もできなくなってしまう。
何事もできなければ、文化が盛んになることも無い。
文化が盛んでなければ、刑罰をもって公正に人を裁くことができなくなる。
刑罰が公正でなければ、人々は安心して体を休めることもできなくなってしまうだろう。


これも一つの「マージナルゲイン」と言えるだろう。

さらに似たような言葉をマザーテレサも残している。

思考に気をつけなさい、それはいつか言葉になるから。
言葉に気をつけなさい、それはいつか行動になるから。
行動に気をつけなさい、それはいつか習慣になるから。
習慣に気をつけなさい、それはいつか性格になるから。
性格に気をつけなさい、それはいつか運命になるから。


現代の最新の改善アプローチにすでに気づいていた孔子の慧眼には驚くべきものがある。そして、それを現代によみがえらせたマザーテレサとブレイルスフォードの慧眼にもだ。

そして、偶然だが、俺がこの唯言でやっていることはこのマージナルゲインそして正名運動なのだろう。

論理的な過ちを正す。

ひとつひとつはものすごく些細で、とるに足らないと思うかもしれないが、俺はしばしば、そこを放置したせいで、今大問題になっているんじゃないか、と思うような出来事もいくつか見てきたし、聞いてもきた。

重大な害が出た、その一歩も二歩も手前の考え方を治すことができていたらこんなことにはならなかっただろうという問題を。

だから、俺はこれをやめることはないと思う。
俺は、世の中のほとんどの人間からクズ扱いされている。
親、兄弟をはじめ、これまでに出会った人などなど。

そこには俺に原因があるのもあるだろうが、明らかに相手に非がある場合もある。

ただ、理由はなんであれ、そんな事情だから、今後俺の人生がいい方向に向かって行くこともないだろう。

だから、せめて俺の今書いている唯言が、のちのちまで残り、ほんのちょっとでも誰かの目を覚まさせるように願って書き続ける。

この社会の底辺で。

偉大な先人の言葉を胸に。

思考に気をつけなさい、それはいつか運命になるから。

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