<危険な坂道>
「ブレーキが効かない」ともいう。これも「真ん中の排除」と関係がある。

例:妊娠初期の中絶を許せば、月満ちて生まれた子供も殺されてしまうだろう。
例(逆の例):いったん国が中絶を禁止すれば、妊娠期間中ずっと女性の体についてあれこれ指図するようになるだろう。それゆえ、たとえ臨月であっても中絶を禁止すべきではない。

<相関と因果関係の混同>
例:調査から明らかなように、大学卒業者には、それ以下の教育しか受けていない層にくらべて同性愛者が多い。したがって、教育は人をゲイにする。
例:アンデス山系の自信は、天王星の最接近と相関がある。したがって、天王星が最接近するとアンデス山系に地震が起こる。(天王星よりも近くて重い木星については、そのような相関が起こらないのだが。)

<わら人形>
「架空の論敵にほえる」ともいう。
例:科学者という連中は、生物は単なる偶然でひょっこりできあがったと考えている。(こういう問題設定は、ダーウィン主義の中心概念をわざと無視している。その中心概念とは、「自然はうまく行くものは残し、うまく行かないものは捨てることによって、徐々に今のような姿になった」という考え方である。)
例:(これは短期と長期の混同にも関係する。)環境保護論者は、人間よりもスネイル・だーたー(絶滅の危機に瀕しているスズキ目パーチ科の小魚)やニシアメリカフクロウの方を大切にしている。

<証拠隠し>
真理の反面しか語らない。
例:レーガン大統領暗殺計画の「予言」がテレビで放映された。その予言は驚くほどよく当たっていて、広く話題になった。(しかし、その予言は、事件が起こる前に収録されたのだろうか、それとも事件後に収録されたのだろうか?細かいことを言うようだが、これは重要なポイントだ。)
例:政府は腐りきっているから革命を起こさなければならない。革命を起こす以上、多少の犠牲はしかたがない。(それはそうだろう。しかし、前体制よりもはるかに多くの人々が殺されるような革命でもいいのだろうか?革命に関するこれまでの経験は何を物語っているだろう?圧政に対する革命は、どれもみな人民のために起こったのだろうか?)

<故意に意味をぼかす>
「逃げ口上」ともいう。

例:アメリカ合衆国憲法に明記された三権分立によれば、合衆国は議会の宣言なしに戦争をはじめることはできない。一方、大統領には対外政策についての権限が与えられており、戦争の指揮が任されている。これをうまく利用すれば、大統領が再選を果たすための強力な切り札になるだろう。そこで、どちらの政党から出た大統領も、愛国心を煽り立て、戦争に何かほかの名前をつけて戦争の種をまくという誘惑にかられる(戦争の別名としては、政治行動、武装襲撃、防御反応、紛争解決、アメリカの権益防衛、大義名分のつくさまざまな作戦名などがある)。政治的なもくろみのもとに言葉が再発明されることはめずらしくない。なかでも戦争に対する婉曲語法は一大ジャンルになっている。タレーランはこう言った。「民衆にとって唾棄すべきものとなった古い名前の制度に、新しい名前をつけること―これは政治家としての重要なテクニックである」

(続く)

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