経済界倶楽部東京10月例会に参加しました。
講師は、㈱ミライロ代表取締役社長の垣内俊哉さん。テーマは「バリアバリュー~障害を価値に変える~」でした。
垣内さんには、生まれながらにして持った障害があります。「骨形成不全症」。これは先天的に骨がもろく、変形しやすくなるという遺伝性の病気で、いまも車椅子の生活を余儀なくされています。
その垣内さんが語る「障害を価値に変える」。
講演を聞くとこれに至るまでには言葉に表せない心の葛藤があったことがわかります。
私たちが障碍者といえばハンデ、かわいそうな人、不幸な人…そんな印象があるかもしれません。垣内さんもそう思っていたそうです。だから、普通になりたいという思いも強かった。手術、リハビリなど、障害を克服しようと一所懸命努力しましたといいます。しかしそれは叶いませんでした。
大きな失望の中、自ら命を絶とうとビルの屋上に行くも、不自由な体のため、飛び降りることすらできなかったそうです。
死ぬことすらできなかった…と垣内さんはその時の心境を思い返すように話ました。
この時の心境たるや、聞いているこちらも胸を締め付けられる思いでした。
「歩けなくてもできることは何か」。
死ぬこともできず、仕方なく生きるしかないと思っていた垣内さんは就職活動を始めたそうです。その時に唯一受かったのがWEB制作会社でした。そして、ここでの体験が、いまの垣内さん、ミライロにつながっていきます。
WEB制作会社ですから、デスクワークを予想していた垣内さんでしたが、実際に与えられた仕事は営業だったそうです。そして、そこで一番の営業成績を収めることになります。
「理由はシンプルです。障害があることでお客様から覚えていただけました」と、垣内さんは謙遜気味に話していましたが、これも人となりを表すエピソードだと思います。
話は私事になりますが、私は講師の方に講演の後にちょっとした感想を添えてお礼のハガキを出すようにしています。それに対して、垣内さんからご丁寧に封書でお手紙をいただきました。返信を期待してのハガキではありませんがとても嬉しいものです。
人との縁を大事にする。そういう人は周囲の人から応援されるといいます。垣内さんにもそれが当てはまったという出来事がありました。
「歩けないことに胸を張れ。営業にとっても、お前にとっても強みだ。誇りにもて」。
これは、その会社の社長の言葉だそうです。この言葉に涙が止まらなかったことを覚えていると話す垣内さんの眼にもうっすらとこぼれそうなものがあったのを一番前で見ていた私は見逃しませんでした。
この社長の言葉で、垣内さんは気づいたそうです。
それは、“歩けなくてもできること”から“歩けないからできること”。これにフォーカスを当てていけばいい。そして、このことに気づいたことで、これまでの人生が決して不幸ではなかったと確信したと話していました。
“障害とは何か?”
障害はない方がいいに決まっています。しかし、不幸ではなかった。それは障害があったからこそできたこと、挑戦できたことがあったから。このことを社会に、世界に伝えたい。この強い思いが垣内さんを起業に突き動かしました。
自治体ごとに違う障碍者手帳をアプリとして一元化して交通機関や公共施設で使用できるようにした「ミライロID」や障碍者に対してのコミュニケーションマナーを学び、身に付けるための「ユニバーサルマナー検定」など、垣内さんが社長を務めるミライロの事業はいままで自治体や企業がなかなか手を出しにくかった分野なのかもしれません。
それだけに、障害がある垣内さんだからできることだともいえます。
そして、私が何よりも特出していると思ったのは、“社会貢献という側面から儲けにする時代”という視点に立っていることにあります。
垣内さんも講演の中で話していましたが、障害者の対応は高齢者にも当てはまります。
今後、高齢化社会が進んでいく中、そこには膨大なマーケットが見込まれます。
また、社会性や経済性を考えれば、持続性も視野に入れておかなければなりません。
持続可能な開発目標「SDGs」に掲げられている17個の目標のうち9個は障害者に関係しているといいます。
医療や介護費用を国の予算(税金)で賄っていくには限界があります。そこに新たな価値(儲け)を生み出し分配していかなければ、いずれは破綻と言った状況になりかねません。
そうならないためにも、垣内さんがいわれる“バリアバリュー~障害を価値に変える”という発想が持続可能な未来への道標となる。
そのことを実感した講演でした。
次回、経済界俱楽部東京11月例会は、11月18日(金)、講師に㈱UPDATERの大石英司社長を迎えて開催されます。
ブロックチェーン技術の活用がSDGsの実現にどうかかわってくるのか。
時代の流れに敏感な経営者なら要チェックです。
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