梶井基次郎「檸檬」 | 和して同ぜず

和して同ぜず

頭の中の整理、アウトプットの場として利用さしていただいています。書籍の解釈にはネタバレを含みます。

なぜ<あの檸檬>でなければならなかったのだろうか。それは病気を患い、借金まみれの主人公が確固たる<具体>を欲していたからだ。じっくりと観察し、手触りを確かめ、臭いを嗅ぐことで執拗にその存在を確かめていく。果物屋の描写は存在する<モノ>に焦点をあわせる機能を果たしたと言える。丸善で本に実際に触れ、感じ、檸檬が完全なる<一個>の<具体>であることを確信する。