こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

8月最後の休日となっていますね。

 

相変わらず日中は蒸し暑い日もあるわけですが、夕方になりますと

これまでに聞こえていた蟬(せみ)の声はなく、秋の虫の声に変わっていることに気がつきました。

 

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

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今回は、『血管内皮細胞(けっかんないひさいぼう)』についてのお話をしてみたいと思います。

 

『血管内皮細胞』は、全身をめぐる血管の最内層にある細胞で、血管の健康状態を維持するのに非常に重要な役割を果たしていることが知られています。

 

では、『血管内皮細胞』とは、どこに存在する細胞なのでしょうか?

 

 

         (図はお借りしました)

 

上に示した図は、動脈の断面を示しています。

 

『血管内皮細胞』は、血管の最も内側を覆う(おおう)ように存在していることが、ご理解していただけると思います。

 

では・・・なぜ、『血管内皮細胞』に注目するのかと言いますと・・・『血管内皮細胞』の重要な機能を持っているから・・・ということになります。

 

では、その重要な機能とは、どのようなものなのでしょうか?

 

以下に、『血管内皮細胞』の主な機能を詳しく説明してみたいと思います。

 

 

 1. 血管壁のバリア機能

 

『血管内皮細胞』は、血管壁のバリアとして機能し、血液成分や細胞の浸透を制御します。

 

これにより、血管内の環境を一定に保ち、組織や臓器への適切な栄養や酸素の供給を確保します。

 

 

 2. 血管拡張・収縮の制御

 

『血管内皮細胞』は、血管の平滑筋細胞に対して血管拡張・収縮の信号を送ることにより、血管の直径を制御します。

 

これにより、血圧や血流量を調節し、組織や臓器への適切な血液供給を維持します。

 

 3. 血液凝固の制御

 

『血管内皮細胞』は、血液凝固因子や抗凝固因子を産生し、血液凝固のバランスを維持する働きがあります。

 

また、『血管内皮細胞』の表面には、血小板が付着することを防ぐための「抗血小板作用」があることも知られています。

 

 4. 炎症反応の制御

 

『血管内皮細胞』、炎症反応の制御にも重要な役割を果たしています。

 

炎症刺激が生じますと・・・『血管内皮細胞』は、「炎症性サイトカイン」などを産生し、白血球の接着や移動を促進します。

 

これにより、炎症部位への免疫細胞の集まりを調節し、炎症反応を制御します。

 

 5. 血管新生の調節

 

『血管内皮細胞』、血管新生(angiogenesis)の調節にも関与しています。

 

血管内皮細胞は、血管内皮増殖因子(VEGF)などの分泌により、新しい血管の形成を促進します。これにより、組織や臓器の再生や修復を助けるのですね。

 

 6. 血管透過性の制御

 

『血管内皮細胞』は、血管透過性の制御にも関与しています。

 

『血管内皮細胞』の細胞間には、「タイトジャンクション」と呼ばれる接着タンパク質が存在し、血液成分の漏出を防いでいます。

 

しかし、炎症や組織損傷などの刺激が生じますと、血管透過性が亢進することもあります。

 

 7. エンドセリンの産生

 

『血管内皮細胞』は、「エンドセリン」という強力な血管収縮物質を産生します。

 

「エンドセリン」は、血管平滑筋細胞を収縮させることにより、血管の直径を狭めます。この機能により、血圧の調節や血流の制御に関与します。

 

 以上のように『血管内皮細胞』が、血管の健康維持や循環系の正常な機能に不可欠な役割を果たしていることがお分かりいただけると思います。

 

この『血管内皮細胞』の機能を障害する疾患が、いくつか存在するわけですが・・・どのような疾患があるのでしょうか?

 

そして、『血管内皮細胞』が障害されると、血液検査などの臨床検査に、どのような変化が出現するのでしょうか?

 

お話の続きは、後日の話題にしたいと思います。

 

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

 

参考)

1. Nature Review Immunology.  2007 Oct;7(10):803-15. 

Evolving functions of endothelial cells in inflammation 

Jordan S Poberら

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< ブログ後記  >  8月29日

 

8月も残りわずかとなりましたね。

まだまだ、蒸し暑い日が続きそうです。たと

体調管理には、まだまだ、気をつけなければいけませんね。

 

今回は、『血管内皮細胞』を話題にさせていただきました。

 

ヒトの身体に張りめぐらされている血管には、動脈、静脈、そして、毛細血管があります。

 

1人の人間の血管を繋いで(つないで)みると・・・

 

その総距離は10万キロになるそうです。この距離は、地球を約2周半した時と同じであるというのですから、驚かれる方も多いのではないでしょうか。

 

そして、『血管内皮細胞』は、動脈、静脈、毛細血管にまでも存在します。

 

(余談ですが・・・毛細血管壁は、単層の『血管内皮細胞』と、その周囲の壁細胞で構成されています)

 

血管壁の最も内側の、血液に触れる位置にある『血管内皮細胞』であるわけですので、血管を良好に保つためには・・・

 

『血管内皮細胞』をよい状態に保つことが重要である・・・と言えるわけですね。

 

では、『血管内皮細胞』を傷害するものには、どのようなものがあるでしょうか?

 

例を挙げますと・・・次にようになります。

 

1.高血圧

高血圧は、血管壁に継続的な圧力をかけることで、『血管内皮細胞』に物理的なストレスを与えることが知られています。

 

2.喫煙

タバコの成分、特にニコチンや酸化物質は、『血管内皮細胞』に有害で、炎症や酸化ストレスを引き起こします。

 

3.糖尿病

高血糖は、『血管内皮細胞』に傷害を与える可能性があり、その結果、動脈硬化やその他の循環器疾患のリスクが高まることが知られています。

 

そのほかには・・・

 

4.高LDL-C血症

5.酸化ストレス

6.内臓脂肪型肥満    

 

などとなります。

 

 

このうち、ひとつの例として、高 LDL-C(低密度リポタンパク質コレステロール)血症が『血管内皮細胞』に傷害を与えるメカニズムの詳細を見てみたいと思います。

 

高 LDL-C(低密度リポタンパク質コレステロール)血症とは、血中の

LDL-Cの濃度が異常に高い状態を指します。

 

この状態は、動脈硬化や冠状動脈疾患などの心血管疾患の主要なリスク因子とされていますよね

 

これを『血管内皮細胞』の 傷害という観点から考えると、どのようなメカニズムとして説明できるのでしょうか?

 

そのメカニズムは、以下のような過程によって引き起こされます。

 

 まず、高LDL-C血症により血中のLDL-C濃度が上昇すると、LDL-Cは『血管内皮細胞』の表面のLDL受容体に結合します。

 

この結合により、LDL-Cは『血管内皮細胞内』に取り込まれます。

 

LDL-Cは『血管内皮細胞』内でリソソームに蓄積され、酸化ストレスや炎症応答を引き起こす「酸化型LDL」に変化します。

 

「酸化型LDL」は、『血管内皮細胞』の細胞膜を損傷し、細胞内の

「酸化ストレス」を増加させます。

 

この「酸化ストレス」は、細胞内の酸化的ダメージや炎症応答を引き起こし、『血管内皮細胞』の機能を極端に低下させます。

 

これに加えて、上に示した炎症応答が引き起こされることになります。

この炎症応答とは、炎症性サイトカインやケモカインの産生が促進されることを示しています。

 

さらに、高LDL-C血症も『血管内皮細胞』の炎症応答を活性化させます。

 

これらのことにより、『血管内皮細胞』は、炎症性細胞接着分子(ICAM-1、VCAM-1など)の発現を増加させ、白血球の接着や浸潤を誘導します。

 

この白血球の浸潤は、炎症性細胞が『血管内皮細胞』に接触し、さらなる酸化ストレスや炎症応答を拡大させることになるわけですね。

 

 さらに、高LDL-C血症は、『血管内皮細胞』の一酸化窒素(NO)合成を抑制することが知られています。

 

一酸化窒素(NO)は、『血管内皮細胞』から放出される重要なシグナル分子であり、血管の拡張や血小板凝集の抑制など、血管の正常な機能を維持する役割を果たしていますので、これらの機能が喪失することになります。

 

上にあげたようなメカニズムで、「高LDL-C血症」は『血管内皮細胞』の機能低下や損傷を引き起こします。この結果、血管内皮細胞のバリア機能が低下し、炎症性細胞の浸潤や血小板の凝集が促進されるわけです。

 

が、・・・これで終わりではありません。

 

さらに続きがありまして、『血管内皮細胞』の損傷は、血管壁の線維化や平滑筋細胞の増殖を誘導し、動脈硬化を進行させていく・・・ということになるわけですね。

 

やれやれ・・・という感じで・・・とても長い、ややこしいストーリーではあるのですが・・・

 

高LDL-C血症は、『血管内皮細胞』の障害や機能不全を引き起こす多くのメカニズムを持っており、これが心血管疾患のリスクを増加させる主要な要因となっている・・とイメージを持ってもらえたら・・・と思います。

 

今回も最後までお読みいただきまして

誠にありがとうございましたお願い

 

 

参考)

2. atherosclerosis. 2008 Mar;197(1):1-11.

Endothelial dysfunction:a key to the pathophysiology and natural history of peripheral arterial disiase?

Gregorio Brevettiら

 

3.Nature Review Immunology. 2006 Jul;6(7):508-19.

The immune response in atherosclerosis: a double-edged sword

Goran K Hannsonら

 

 (筆者撮影)

 

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 理事長、院長  

小笠原  均  (Hitoshi Ogasawara)   

医学博士, 内科医

(総合内科、リウマチ専門医)

新潟大医学部卒

 

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