こんにちは、内科医 ひとちゃんです
7月最後の休日の午後は、まさに「灼熱( しゃくねつ)の太陽」という言葉がアタマに浮かんでくるような感じがしました。
明日からは、8月となりますね。
皆さまの体調は、いかがでしょうか?
「健康寿命」を伸ばしていくために「免疫力」を高め、BMI を「22」程度にし、悪玉コレステロール「LDL-G」を低下させ、適度に運動することにより「筋肉の量」を維持する。そして、「癌」の早期発見を心がけていく。
もちろん、こうしたことで・・・「健康」に生活できる時間は、かなり、伸びていくことと思います。
しかしながら・・・「寿命」を伸ばそうとすることで、目立ってくる疾患も出てくることが予想されます。
例えば・・・「老人性痴呆(ちほう)」などは「アルツハイマー病」を含め、その診断や新しい治療も登場したりしていますね。
また、高齢化しても「筋肉」を保つなどの健康状態を保つには「タンパク質」を積極的に摂取する必要がある・・・などの栄養学分野からの方針も示されています。
個人的には、少しレベルは違うかもしれませんが・・・もうひとつ、解決されないだろうか?・・・と思っていた問題があります。
それは、高齢者の膝の関節症である「変形性膝関節症(knee osteoarthritis:膝 OA)」です。
膝の痛みにより、歩行に不便を感じている方はどのぐらいいるのかと言いますと・・・次のような統計があります。
日本における「変形性膝関節症」の有病者数は約 2,530 万人,その中で関節の痛みなどの症状のある有症状患者数は約 800 万人と推定されているのだそうです。
健康寿命 の維持や生活の質(quality of life:QOL)向上 など社会生活にかかわる幅広い観点からも,「変形性膝関節症」の診断・治療の重要性は増しつつあると考えられているようです。
「変形性膝関節症」とは、どのような疾患なのでしょうか?
簡単に言いますと・・・
関節のクッションである軟骨が、加齢や筋肉量の低下などによりすり減って、痛みが生じる病気です。軟骨がすり減った分、膝関節の骨と骨のすき間が狭くなって内側の骨があらわになり、骨のへりにトゲのような突起物(骨棘:こつきょく)ができたり、骨が変形したりすることを示します。
関節の軟骨組織の損傷や変性によって引き起こされる慢性的な疾患であるとされています。
実は、「変形性関節症(OA)」は最もよくみられる関節疾患であり,40代および50代に症状が出現することが多く,80歳までにはほぼ普遍的にみられるとされるのですね。
ただし,必ずしも症状が現れるわけではなく、症状が現れるのは半数に過ぎないともされています。
40歳から70歳の年齢層では、女性の患者数が優勢になり,その後は男女に等しく発生するとされています。
治療としては、ある程度は確立していると言ってもよいかもしれません。
治療法は、非薬物療法(リハビリテーションなど)と薬物療法になります。
「リハビリテーション(理学療法)」も次のような有効性が示されています。
例えば・・・過体重の患者では、体重の減量によって疼痛が軽減することが多く,変形性膝関節症の進行が遅くなることさえあるとされています。
「リハビリテーション」は障害が発生する前に開始するのが最もよい。
その目的は、関節可動域を維持し,腱および筋肉が関節を動かす際に応力を吸収する能力を増強することにありまして、
運動によって,変形性股関節症および変形性膝関節症の進行がときに停止することがあり,回復することさえある・・・というのですから、いかに「リハビリテーション」が重要であるかがお分かりいただけるかと思います。
薬物療法については、最近、ある薬剤が有効なのではないか?・・・
という報告がありました。
これは、ちょっと驚いたのですが・・・現在の薬物療法と併せて、後日の話題にしたいと思います。
くれぐれも水分補給などを心がけ、熱中症にならないようにお気をつけくださいね。
素敵な1週間をお過ごしください
それでは、また
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<ブログ後記>8月1日
8月となりましたね。
英語で8月を「August(オーガスト)」というわけですが、この言葉は
ローマ帝国の初代皇帝のオクタウィアヌスの尊称にあたる
「アウグストゥス(Augustus)」の名に由来する言葉なのだとか。
今回は「変形性膝関節症」について、お話をさせていただきました。
本文内でもご紹介させていただきましたが・・・
「変形性膝関節症」は、加齢などが原因で膝関節の軟骨が弾力性を失い、使いすぎによるすり減りや関節の変形が起こる疾患とされています。
もちろん、変形性関節症(OA)の手の病変というものもあります。
関節リウマチが第2関節(PIP関節)の痛みが多いのに対して、変形性関節症(OA)は、第1関節(DIP関節)の痛みや腫れが多いとされています(もちろん、例外はあります)。
下の図の矢印に示したように変形した第1関節(DIP関節)の腫れた部分を「ヘバーデン結節」と呼び、「変形性関節症(OA)」の典型的な所見とされるのですね。
(図は一部をお借りしました)
もちろん、関節痛などが生じた場合には、採血検査や画像検査によって、「関節リウマチ」などの自己免疫疾患の可能性をきちんと除外しておく必要があります。
「変形性膝関節症」に話を戻しますと・・・最近、新しい知見がいくつか発表されました。
それまでは、その詳細な発症のメカニズムは解明されていなかったのですね。
1つ目は、名古屋大学の飯島弘貴YLC特任助教らの国際共同研究グループにより、変形性膝関節症は加齢に伴い硬くなった関節軟骨が
「長寿タンパク質」を抑制することで発症することが明らかになった。研究には、米国のハーバード大学、ピッツバーグ大学、メイヨ―クリニック、カリフォルニア工科大学、および京都大学が参加しているそうです。
研究グループは「α-Klotho(クロトー)」と呼ばれる長寿タンパク質に着目し、加齢によって発現が減少する「α-Klotho(クロトー)」の関節軟骨における機能解析を進めてきた。その結果、加齢に伴い硬くなった軟骨組織が「α-Klotho(クロトー)」を低下させ、変形性膝関節症を誘発することが判明したというのですね。
「α-Klotho(クロトー)」とは・・・老化を抑制して寿命を延長する作用のある「抗老化ホルモン」であるとされ、研究が盛んに行われているものになります。
2つ目は、変形性膝関節症(膝OA)に対する「ヒアルロン酸関節内注射(関節内補充療法)」は、プラセボと比較して痛みの軽減効果はわずかであり、両者間の臨床的意義のある差はごくわずかであるというエビデンスが示された・・・というのですね。
カナダ・St. Michael’s HospitalのTiago V. Pereira氏らが、解析の結果を報告しています。
そして、「関節内補充療法」はプラセボと比較して重篤な有害事象のリスク増加と関連することも示されたとしています。
(BMJ誌2022年7月6日号掲載の報告)
3つ目は、2000年以上前から抗炎症薬として使用されてきた「コルヒチン」が、「変形性膝関節症」の関節変形のスピードを遅くして
膝関節などの人工関節置換術が必要となる状態を遅らせるのに役立つ可能性が示されています。
低用量の「コルヒチン」を使用していた高齢者では、プラセボを使用していた高齢者と比べて、その後2年間に膝関節や股関節の人工関節置換術を受けた人の割合が低かったとする研究結果を、シント・マールテン・クリニック(オランダ)のMichelle Heijman氏らが、「Annals of Internal Medicine」に2023年5月30日発表しています。
「コルヒチン」は、聞き慣れない薬剤であるかもしれません。
痛風発作の緩解と予防に用いられている薬剤となります。
副作用も多いので、慎重に使う必要はありますが・・・低容量であれば、服用を継続するのは不可能ではないかもしれませんね。
「変形性関節症」の治療薬は痛みの緩和には有効だが、現状では、痛みの原因となっている関節の破壊を遅らせる薬はない・・・とするのが、これまでの常識でした・・・なので、現状においては「リハビリテーション(理学療法)」が重要とされているわけですが・・・
今後、これに加えて、新しい薬剤や治療法が出てくる可能性は高いような気がします。
個人的には、老化を抑制して寿命を延長する作用のある「抗老化ホルモン」である「α-Klotho(クロトー)」に関連するものであればよいなあ〜と思っています。
今回も最後までお付き合いいただきまして
ありがとうございました
参考)
1.ケアネット内の記事より
2大学ジャーナルONLINE 内記事より
3. HealthDay News 内記事より
(以前のphoto:筆者撮影)
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理事長、院長
小笠原 均 (Hitoshi Ogasawara)
医学博士, 内科医
(総合内科、リウマチ専門医)
新潟大医学部卒
<JTKクリニック・アンチエイジング治療>
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