しかし、本来の梅雨明けの平年値は、7月20日頃だそうですのですので、今後、雨が降ればその後に蝉(せみ)鳴き始める可能性があるのだとか
長い夏になりそうですね
皆さまの体調は、いかがでしょうか?
(筆者撮影)
先日、面白いニュースがありました
2022年6月22日付の「Nature(ネーチャー)」という科学雑誌に次のような論文が掲載されたのですね
「がん細胞」は血液中を循環することで、体の別の場所へと転移することが知られています
では、転移はどういうタイミングで起きているのか?・・・という疑問から、科学的な検証(実験)がされたようです
その結果、ヒトが活動する時間帯よりも睡眠中に「がん細胞」が血管内に侵入する可能性が高い・・・という報告がされたのですね
この論文を書いたのは、スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETHZ)に所属するがん生物学者「ニコラ・アチェート」氏ら研究チームは、活動する時間帯よりも睡眠中にがん細胞が血管内に侵入する可能性が高いと報告をしたのですね
ここまでは、そうなのか・・・と納得される方もいらっしゃることと思いますが・・・上記のような所見を「CTC検査」で確認した・・・
と聞きますと・・・そんな検査があるの?と疑問を持たれる方も多かったのではないでしょうか?
この「CTC」は、<Circulating tumor cells>の略ですので、この「CTC検査」とは、「血中循環腫瘍細胞検査」ということになります
(図はお借りしました)
上の図は、「癌の原発部位」から、どのようにして「転移巣」が生じるのか・・・を示しています
その過程は、以下のとおりとなります
①原発巣から周辺組織への浸潤・原発巣からの離脱
→②周囲リンパ管・血管へ侵入
→③リンパ流・血流内での生存
→④遠隔臓器の血管床への付着
→⑤血管からの脱出・遠隔臓器への侵入
→⑥遠隔臓器内での生着・増殖、
という複数のステップを経る必要があるのですね
こうした転移の過程で、血管内に侵入した癌細胞が「CTC」であるというわけです
では、どのような方法で、血液中の「癌細胞」を見つけるのか?・・・と疑問に思う方も多いと思います
「CTC」は、血液1 mlあたりに含まれる約数十億個の血球に対して、数個から数十個程度しか存在していないと言われています
これまでに、様々なCTC検出法が開発されてきた歴史があります
当院の「CTC検査」は、外部の研究機関である「(株)日本遺伝子研究所」に委託して、検査を行なっています
ここで、行われている検査方法は、次のようなものになります
「微小流路デバイス法(Microfluidic Chip)」という方法ですね
血液を流し、Microfluidicチップ にある「56,320個のtrapping chamber」に細胞を捕捉するのだそうです
(図はお借りしました)
上記の③がその「trapping chamber」の断面となりますが、現在は改良されていまして、以下のような形となっているようです
ここに血液を流しますと・・・癌細胞(CTC)と白血球の変形特性が大きく異なりますので、癌細胞(CTC)のみが捕捉されます
白血球は変形特性が大きく・・・つまり、よく変形しますので、この穴の下部にある細くなっている部分を通り抜けることができます
しかしながら、癌細胞(CTC)は変形特性が小さい・・・細胞のサイズが大きいことに加えて、その柔軟性がなくなっており、変形しないことから、通過することができないのですね
微小流路デバイス法(Microfluidic Chip)はこの原理に基づいて設計されているのだそうです
(図はお借りしました)
これが、JTKクリニックでも予約制で施行している「CTC検査」となります
この検査の結果で、アチェート氏ら研究チームは、活動する時間帯よりも睡眠中にがん細胞が血管内に侵入する可能性が高いという結果を出した・・・ということになりますね
では、眠らない方がよいのか?・・・というと、そうではなくて、検査の時間帯が午前中の早い時間にした方がよい・・・ということになりますよね
血液中に流れる癌細胞は壊れる(こわれる)可能性は、ほぼゼロとなりますので、時間が経てば・・・いずれ、新たな転移巣を生じさせることが考えられます
また、見方を変えれば「癌の早期発見」をするためにも、有用である可能性もありますね
例えば・・・ヒトの体内の臓器に癌が発生したとします
いつ、この癌が見つかるのでしょうか?
たいていの場合は、画像的な検査で見つかりますよね
具体的にお話をしますと・・・
CT検査などの画像検査では1cm以上、PET検査でも直径5mm以上にならないと検出は難しいとされています
それよりも、かなり早い段階で、CTCの数や濃度などでを計測することで、超早期に癌の発生の検知することも可能である・・・とも
考えられているのですね
もし、癌ができているのなら・・・私は少しでも早く知りたいですね
こちらは、地中の蝉(せみ)がいつ、地表に出てくるのか?・・・とのんびりと待つというわけには、いきませんからね
皆さまは、どのように考えますか?
それでは、素敵な1週間をお過ごしください
それでは、また
< ブログ後記 >7月12日
夕刻から、都内は雨が降り出しています。
なんとも重苦しく感じる雨だなあ〜 と思いながらハンドルを握っておりました。
しかし、この雨が止む(やむ)頃には、蝉(せみ)が大空に飛び立てるかも・・・と考えたりもしました。
さて、今回は「CTC検査」についての話題とさせていただきました。
聞いたことがない・・・という方も多いことと思います。
癌細胞は、分裂を重ねて「がん腫瘍組織」となり、大きさが1〜1.5mm程度になると、栄養や酸素を得るために血管内へ浸潤すると言われています。
血管とつながると、がん細胞が血液中を巡りだし、遠隔地で定着するなどで転移をくり返します。
本文内でも触れましたが・・・CT検査などの画像検査では1cm以上、PET検査でも直径5mm以上にならないと検出は難しいため、言い方を変えれば、画像検査では異常のない時期であっても、近い将来に癌が発生する可能性が高いことを予測できるとも言えます。
もちろん、単に小さい穴をすり抜けることができなければ「癌細胞」であるとする単純なものでなく、「免疫染色」など複雑な検査を行った上で、これは「癌細胞」である・・・可能性が極めて高いと判断されるのですね。
① ② ③
(図はお借りしました)
上の図は、すべて癌細胞の形態を示しているのですが・・・次のようなことが知られています。
一般的な話として・・・癌細胞は本来、発生元である「上皮細胞」①の特徴を有していますが、浸潤能を獲得した悪性度の高いがんでは、しばしば上皮間葉転換(EMT:Epithelial-mesenchymal transition)と呼ばれる現象が生じ上皮細胞の特徴が失われていく③ことが知られています
①→②→③の順に悪性度が上がっていくとされますが、当院で採用している遺伝子研究所の「微小流路デバイス法」は、この3種類を分けることが可能である精度の高い検査となっています。
他に、どのような使われ方があるのか?・・・という例を海外の論文からご紹介したいと思います。
ステージIVの肺がん患者に「NK細胞の投与を行い、CTC検査を施行したレポートがあります。
この肺がんは、非小細胞癌というタイプです。
ステージIVのNSCLC患者31名の末梢血中のCTCの数を見ています。
「NK細胞療法」の投与1日前、投与後7日目と投与後30日目に測定をしていますね。
その結果は、どうなったのでしょうか?
CTCの数はそれぞれ
投与1日前 18.11±5.813
投与後7日目 15.13±5.984
投与後30日目 10.32±5.623
となりまして、CTCの数は、時間の経過とともに有意に減少したとされています。
つまり、癌の治療の効果判定にも有用である可能性が高いということにもなりますよね。
今回も最後までお読みいただきまして
ありがとうございました。
(参考)
Clinical utility of circulating tumor cells; an update
Vasseur A, Kiavue N, Bidard FC, Pierga JY, Cabel L.Mol Oncol. 2021 Jun;15(6)
(株)日本遺伝子研究所 資料など
(以前のphoto: 筆者撮影)
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