東京大学先端科学技術研究センター名誉教授である児玉龍彦先生の説の一部を前回のブログでご紹介させていただいたのですが、実際の感染者の新型コロナウイルスの遺伝子を解析したものですので、とても説得力がありますよね
児玉先生の解析によりますと、ウイルスの複製ミスを修正する
「ポリメレース」という酵素を作る部分の遺伝子変異が生じていることが確認されている・・・ということです。
どのようなことか?・・・
新型コロナウイルスは、RNAウイルスですので、ウイルスが増加するには、RNAの複製を繰り返さなければならない・・・わけですね
以前のブログ内でもお話をさせて頂きましたが、RNAの複製・・・を行うときには、常に「コピーのミス」が生じるという危険性があるのです
必ず、一定の割合で「ミス」を生じるので、もし、遺伝子のミスを生じた時には、すぐに「ポリメレース」という酵素を使って、オリジナルのRNAと同じ遺伝子になるように修復をしなければ・・・
例えば、デルタ型の新型コロナウイルスであれば、同じデルタ型の特徴を持ったウイルス遺伝子を作ることは難しい・・・ということになりますよね
新型コロナウイルスは、自ら、コピーミスを修復する能力を備えていたわけですが、「ポリメレース」自体をつくる遺伝子の変異が生じてしまった・・・というのです
この「ポリメレース」自体をつくる遺伝子の変異は、正常な遺伝子修復能力を持った「ポリメレース」が作れないわけですから、・・・
「変異速度が格段に上がっている」と児玉先生は、指摘しています
変異のスピードが上がっているなら、マズイんじゃないの?・・・と
思う方もいらっしゃるかもしれませんが・・・実際は、そうでもありません
新型コロナウイルスの流行「第5波」の収束には、流行を引き起こしたデルタ株でゲノム(全遺伝情報)の変異を修復する酵素が変化し、働きが落ちたことが影響した可能性があるとの研究結果を「国立遺伝学研究所」と「新潟大」のチームが30日までにまとめた
8月下旬のピーク前にはほとんどのウイルスが酵素の変化したタイプに置き換わっていた。このウイルスではゲノム全体に変異が蓄積しており、同研究所の井ノ上逸朗教授は「修復が追いつかず死滅していったのではないか」と指摘する。
研究は10月に開かれた日本人類遺伝学会で発表した。
この酵素は「nsp14」である・・・というニュースです
この「nsp 14」は、児玉先生の論文の中でも紹介されておりましたが、コロナウイルスの遺伝子の一部から作られるタンパク質で、そのタンパク質の働きは、遺伝子の複製をチェックするエキソヌクレアーゼ活性を持つのですね
この「nsp14」が欠損すると・・・遺伝子の変異率は15倍程度上昇し、ウイルスは自壊すると考えられる・・・と1971年にノーベル賞受賞者のEigenが予言をしていたそうです
そうですね
Eigenは、「エラー・カタストロフ(ミスによる破局)の限界」を提唱した偉人ですよね
(図はお借りしました)
<ブログ後記>11月2日
今回は、新型コロナウイルス感染者の減少が、単なる偶然でない可能性がある・・・ということについて、お話をさせていただきました。
50年程度前にEigenの提唱した「エラー・カタストロフ(ミスによる破局)の限界」という理論・・・というと、そんな古臭い話と思う方もいらっしゃると思いますね。
世界中の国々に多くの犠牲者を出し、今も尚(なお)、多くの新型コロナウイルス感染の後遺症に苦しむ方もいらっしゃるのに、もう、新型コロナウイルス自体は、みずから、崩壊の道を辿り(たどり)始めた・・・ということは、信じられないとおっしゃる方もいらっしゃることと思います。
もちろん、国内のワクチン接種した人の割合が多くなったからじゃないの・・・と主張する方もいらっしゃると思います。
実際のデータを見てみますと・・接種開始が今年2月となった日本ですが、その後、急速に追い上げ、世界の国々の接種率と同等か、それ以上になっています。
10月21日現在の日本国内の接種完了率は69%で、カナダ(73%)、イタリア(71%)に次いで、主要先進7カ国(G7)で第3位となっていますね。すでにフランス(68%)、イギリス(67%)、ドイツ(66%)などよりも接種率が高くなっています。
(もちろん、RNAワクチンの性質として、時間が経つ(たつ)ほど、抗体量は減少していくわけですので、3回目の追加接種が必要な時期となってくるわけですが・・・)
一方で、世界保健機関(WHO)は、専門家による緊急委員会が22日に開いた新型コロナウイルスについての定例会合の結果を公表した。委員会は、ワクチンや治療薬の普及で進展はあるものの、パンデミック(世界的大流行)の「収束は遠い」と指摘もしているのですね。
相反する(あいはんする)国内と世界の他の国々の新型コロナウイルスに対する考え方の違いは、何を意味するのでしょうか?
次のような考え方もできますね。
日本国内の新型コロナウイルスは、たまたま偶然に遺伝子の複製のミスを修正する「ポリメレース」を作る遺伝子が変異した・・・
この変異をしたウイルスが、いわば「幹ウイルス」という親玉になり、このウイルスを基本として、さらに多くの変異株が出現した結果、日本国内の新型コロナウイルス感染の減少があったのではないか
・・・と児玉先生は、述べています。
次のことは、私個人の考えですが・・
海外の新型コロナウイルスで、「ポリメレース」の遺伝子が正常なものが、万が一、国内に流入した場合には、すぐに現在の国内の感染状況が崩れ、また、収束と再拡大を繰り返す・・・ということになります。
新型コロナウイルス感染の心配は、もう終わりだとか、やっぱり、ワクチン接種は、もう必要がないよね・・・とおっしゃる方がいたり、
次の感染の第6波は、いつ頃、生じるのか?・・・という話題ばかりが目立つのですが・・・
実は、この結果は、ただただ、どの時期に海外の「ポリメレース」の遺伝子が正常な新型コロナウイルスを入れてしまうのか?・・・という問題なのだろうと思ったりもします。
いずれにしても、明るい光は見えている・・・お思いますがね。
今回も最後までお読みいただきまして
ありがとうございました