国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 ワクチン・アジュバント研究センターセンター長の國澤純(くにさわ・じゅん)先生が、コラム内でお話をされていたものをもとにしています
國澤先生は「ビタミンB1は、免疫機能を正常に維持するのに重要である」というお話をされているのですね
新型コロナウイルスを例にとると・・・どうしてもワクチンを注射して、抗体が作られるようにして、結果的に「防御する」と考えがちです
しかしながら、一方で、違う方法で免疫をつけた方が効率が良いのではないか?・・・という考え方もあります
「腸管免疫」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
実は、ヒトの免疫機能の50~70%が集まっているのは「腸の中」の「パイエル板」という部分であり、からだの中で最大の規模の免疫器官が配置されているとされているのですね
パイエル板は、小腸の絨毛(小腸内壁の無数のひだ)の間にある腸管特有の免疫組織なのですね
私の学生時代の恩師の一人である新潟大学名誉教授であった藤田 恒夫先生(故 2012年2月6日)は、「腸は、第2の脳である」ということをおっしゃっていましたのを懐かしく思い出しますが、免疫の分野でも、驚くような仕組みがあるのですね
この「パイエル板領域」には樹状細胞、T細胞、B細胞などの主要な免疫細胞が集中して存在していることが知られています
これらの細胞群は協力して侵入してきたウイルスや細菌抗原に対して免疫グロブリンAをつくり、これを用いて腸管に侵入してくる病原細菌の腸管壁を超えて体内への侵入を防ぐ働きをしています
また、「パイエル板」でB細胞が分化してできたIgAをつくる細胞(形質細胞)は腸だけではなく、口、鼻など移行し、そこでIgAをつくり、病原菌の侵入を防ぐ働きをするというのですから・・・
ヒトが、ウイルスに対する免疫を獲得するためには、この「パイエル板」を利用しない手はないのかもしれませんね
このような新型コロナウイルスの「経口ワクチン」も開発が進んでいるということも聞いたことがあります
ウイルスなどの病原体が体内に侵入してきたとき、人の体の中では、主に二つの免疫機構が働きます
①「抗体による防御機構」と②「免疫細胞による排除機構」です
①の抗体は、ウイルスが細胞に取りつくのを阻止し、細胞内に侵入するのを防いだり、ウイルスを殺傷したりして細胞への感染を防ぎます
②は、免疫細胞の一つであるT細胞が働き、ウイルスに感染した細胞を殺傷して排除するのですね
さて、ここで重要なことは何か?・・・
実は「ビタミンB1」が、これら2つの免疫機構の力を高める働きがあるのですね
腸管の免疫の働きをサポートしているのが、「パイエル板」であることは、お話をしましたが、ビタミンB1の摂取が不足すると、この「パイエル板」が明らかに小さくなってくるのだそうです
マウスの実験では、ビタミンB1不足が進むと、ふくらんでいたパイエル板が縮まり、ほとんど見つからないくらいまで小さくなってしまうケースもあるそうです
結果として、免疫機能自体が低下し、ワクチンを打っても、その効果が弱まり、感染症にかかりやすくなるそうです
滋養強壮作用が強く、疲労回復に効果的があるとされる
「ニンニク注射」ですが、主成分はにんにくと同じビタミンB1なのですね
ということは・・・「腸管免疫」の力を維持する意味でも重要だと言えそうですね
素敵な1週間をお過ごしください
それでは、また
<ブログ後記>3月23日
今回は、「ニンニク注射」と称されるビタミンB1などを中心とするビタミンの注射療法についてのお話をさせていただききました。
もちろん、ニンニクが入っているわけでなく、このビタミンB1の構成成分の中に含まれる硫化アリルが血管内に投与されると、ニンニク臭のすることから、「ニンニク注射」と呼ばれているのですね。
もちろん「ニンニク注射」は、慢性的な疲労を感じる時に症状を改善させる効果があります。
よく聞きますのは、筋肉内の「乳酸」を改善すると言われます。
運動後のだるい状態の時、筋肉に乳酸が溜まっているのは事実ですが、乳酸自体は筋肉が無酸素状態になると発生するのですが、
乳酸自体がだるさの原因というわけでもない・・・
というのが、最新の一般的な考え方のようです。
それでは、どのような機序で「疲れ」を改善するのでしょうか?
ちょっと言うか、かなり、メンドウな話となるのですが・・・
運動などのメインとなるエネルギー源は「糖質」です。その糖質からエネルギーを作り出すには、大きく分けて「解糖系」「TCA回路」
「電子伝達系」の3つの経路をたどります
「解糖系」とは、解糖とはグルコースがピルビン酸まで分解される代謝経路でして「細胞質」という部分にあります。
この「解糖系」でできたピルビン酸が、「ミトコンドリア」に入ると、脱炭酸酵素によって炭素2つの C2 化合物になるのですがこれにコエンザイムAが結合して、活性酢酸と呼ばれる「アセチルCoA」となります。
この「アセチルCoA」になり、これが「オキサロ酢酸」と結合して「クエン酸」になり、さらに脱炭酸酵素および脱水素酵素により「コハク酸」、「フマル酸」を経由して、「アセチルCoA」と結合する「オキサロ酢酸」となり、もとの「アセチルCoA」にもどるのですね。これを「TCA回路」と呼びます。
次に「電子伝達系」につながっていくのですが、グルコース1分子当たり最大34分子の「ATP」が産生されます。
「ATP」は、細胞のエネルギーのようなものですね。
(図はお借りしました)
エアロビクスや軽いジョギングなどの有酸素運動を行った場合、初期は解糖系でできたピルビン酸が「TCA回路」と「電子伝達系」に進み、水と二酸化炭素に分解されてエネルギー(ATP)が作られます。
しかし、運動の持続時間が長くなり、心肺機能や体力が限界に近づいてくると、エネルギーを作り出すために、からだは糖を猛スピードでエネルギーに変えようとします。
ビタミンB1は解糖系やクエン酸回路の代謝の一部で補酵素として働くため、これらの部分の働きを助けるのですね。
酸化系と言われる「TCA回路」と「電子伝達系」の部分は、精密にコントロールされているため、代謝のスピードが猛烈に速くなることはありません。
一方、「解糖系」は単純な糖の分解経路なため、スピードを上げてどんどん糖エネルギーを作ろうとするのですね。
そうなると、解糖系で作られたピルビン酸は、次の「TCA回路」へと入っていくことができなくなり、あふれてしまいます。
行き場のなくなったピルビン酸は不安定なため、安定型の「乳酸」へ一時的に姿を変えるのですね。このようにして「乳酸」ができるのです。
もしも、ビタミ ンB1が不足していると・・・
ピルビン酸からアセチルCoAが合成 できず体内にピルビン酸と乳酸が溜まっていくので、徐々 に血液が酸性に傾いていくために
疲れが抜けない状態となるのですね
このような点から考えると
「ビタミンB1を主成分とするニンニク注射の真の効果」は、
ビタミン B1不足から生じる「ピル ビン酸をアセチル CoA に変換できなくなる」ことで生じてしまう
「乳酸」が増加することを防ぐ・・・その結果として「慢性的な疲労が持続する状態を改善する」と言えますよね。
(図はお借りしました)
最後までお読み頂きまして
ありがとうございました
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