虐待で物理的に傷つく脳 1 |  虐待後遺症を生きる

 虐待後遺症を生きる

   
   母親からの虐待を生き抜いた娘
   虐待後遺症をどう生きていくのか
   娘とオヤジのリアル奮闘記です。

この3年、母親からの虐待で複雑性PTSDを発症している娘との

生活をいろいろと書き連ねてきました。

 

僕なりに娘の今までを見てきて

感じることや思うことがあるので書いてみます。

 

医学的なことで間違っていたらすいません。素人なので・・・

 

心的外傷後ストレス障害(PTSD)とは

戦争体験、暴力を受けた体験、性的犯罪被害、交通事故や

その現場を目撃した体験や、自然災害などで命が危険に

さらされたり、人としての尊厳が損なわれたりする経験などが

原因となって、強い恐怖感や無力感、戦慄(せんりつ)を感じたり、

悪夢を見たりするなど様々な症状が時や場所に関係なく表れ

一般的な社会生活を送るのが困難になる病気のことです。

また、家庭内での小児虐待のようにトラウマ体験が長期間

繰り返されると、より重症、慢性的な病状を示すようになり、

複雑性PTSDといわれます。

 

一般的に辛いことがあったとき「心が病む」とか言いますよね。

 

自分の思い通りにならないこと。

頑張ったのに報われなかったこと。

好きな人に想いを受け止めてもらえなかったこと。

 

そのたびに人は自分の心に傷を受けます。

 

ただ、その傷は時間と共に少しずつ癒えて、

いつの間にかその傷はその後の生きる経験値

として心に宿り、より強く柔軟に生きていく為の

肥やしになっていきます。

 

でもそれには

「自分を好きでいられる自分である」という前提が必要です。

 

PTSDを発症すると過去のトラウマにとらわれてしまい

自己肯定感が減少し生活のありとあらゆる場面で影響を

受けることになります。

 

特に虐待が原因の複雑性PTSDは幼少期からの養育が原因

であることから心の傷は一段と大きく、自己肯定感や自尊心が

育ちません。同時にストレス耐性が極端に低く少しのストレスでも

体調を崩します。

 

自尊心とは自分を大切にする心のことで

数多くの刺激から自分の心を守るシールドのようなものです。

 

一般の環境下で育った人たちには普通に備わる心のシールド。

 

自分を満たすために着飾って見栄を張り

自分を守るためについつい嘘をついちゃう

自分の希望を叶えるために信じてもいない神様に祈り

自分の非を涙で誤魔化し他人の共感を得て安心する

 

ちょっとずるいことなのかもしれませんが

誰にでも普通にあることです。

 

普通に生活する上での心の活動は

育った環境によって違いはあるものの、

概ね周りの人に迷惑をかけない範囲で

無意識に制御され調整されつつ周りとの

調和の下で行動にうつされていきます。

 

そうやって社会の荒波に耐えうる力を身に付ける。

 

でもね長時間、虐待にあってきた子供たちは

自尊心(心のシールド)が希薄で自分を守れないことが多いんです。

 

どうしてなんでしょう・・・・

娘のカルテです。左下所見の欄に

「前頭葉、軽度萎縮」とあります。

 

「脳の萎縮」とは

 

自分が置かれた環境に適応するため

脳が自ら変異するということのようです。

 

前頭葉の萎縮は情報処理能力を自ら減らし

命を致命的な危機に陥らせないための変異だと思われます。

 

生きるために過剰な刺激から自らを守ること。

これは刺激に対して反応を鈍くする防衛反応の一種かと思われます。

 

過剰な刺激とは

 

娘の場合は 母親からの虐待でした。

 

逃れられない恐怖から自分を守るため

娘の脳は萎縮し刺激を感じにくい脳に変化したのだと思います。

 

脳をも破壊する虐待とはどんなものなんでしょう。

厚生労働省の定義によると

 

<身体的虐待>

殴る、蹴る、叩く、投げ落とす、激しく揺さぶる、やけどを負わせる、溺れさせる、首を絞める、縄などにより一室に拘束する など

 

<性的虐待>

子どもへの性的行為、性的行為を見せる、性器を触る又は触らせる、ポルノグラフィの被写体にする など

 

<ネグレクト>

家に閉じ込める、食事を与えない、ひどく不潔にする、自動車の中に放置する、重い病気になっても病院に連れて行かない など

 

<心理的虐待>

言葉による脅し、無視、きょうだい間での差別的扱い、子どもの目の前で家族に対して暴力をふるう(ドメスティック・バイオレンス:DV)、きょうだいに虐待行為を行う などとなっています。

 

娘が受けてきたとされる虐待は赤文字にしてあります。

 

「マルトリートメント(maltreatment)」、という言葉があります。

日本語で言うと「不適切な養育」ということです。

 

この不適切な養育は子どもの脳を物理的に変形させます。

危険な状態に長いあいだ置かれると、異常なモルモン分泌が

続き脳そのものが萎縮、または増大していきます。

 

自分が置かれた苦しい状況を耐え抜くため、

脳の反応を鈍くして刺激を減らす。

生き延びる為の脳の苦肉の策なんですよね。

 

脳の萎縮と並行して自尊心も壊れていくように感じます。

 

大人の激しい虐待にあがらえず、

自分を認めてもらえず

従うしかない状況が続けば、

相手の顔色を伺い、

地雷を踏まない行動を取るしかない。

生きること、殺されないことだけに注意を向けるしかない。

 

愛されることで育つはずの自尊心が育つはずもなく

虐待から解放されたあとでも

ダメージを受けた脳に支配され

自分を好きになれない。守れない。

 

生きるために一番大切な自分を守る心が

脳と一緒に育てなかったからだと思います。

 

虐待は脳の成長過程で一番大事なシナプスの構築に

甚大なダメージを与えます。大量の情報をやり取りする

脳が正常に成長ができなければ無意識下で自分の制御が

できなくなります。

 

娘が今、あれやこれやにチャレンジして、

自分が出来ること

自分にしかできないことを懸命に捜し求めているのは

自分に自信が持ちたいからです。

 

自尊心を取り戻したくて一生懸命なのです。

 

いろいろ調べてみると脳には回復力があると聞いた。

若いうちの方が回復の時間は短いけれど

脳は20代後半までシナプスを作り続け

痛んだところを修復する能力があるらしい。

 

娘の生活は世間から、甘い!って思われても仕方ない。

でもね、僕は今、娘の脳の再生を促すために必死なのです。

自分の好きな生活時間の中で好きなことをして

できることを捜して、自分の自尊心を培って欲しい。

 

娘の脳と心の回復を願いながら

焦る自分と戦いながら生きています。

 

続く

 

 

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