サボテンの花と実


      書籍「ダンス•ダンス•ダンス(上•下) 」
                   村上春樹 著より
   (1949年、京都府で生まれ、後 兵庫県へ移る。 小説家 、 翻訳家 )

「上」巻
🐑やる事がないと、いろんなことを時間をかけて丹念にやるようになる。


🐑何もやらないよりは動いた方がいい。何か試してみた方がいい。理力が僕とともにありますように。


🐏フォクナーとフィリップ•K•ディックの小説は、神経がある種のくたびれ方をしている時に読むと、とても上手く理解出来る。


🐑僕の人生は僕のものだし、君の人生は君のものだ。何を求めるかさえ はっきりしていれば、君は君の好きなように生きればいいんだ。人が何と言おうと知ったこっちゃない。


 「下」巻
 🐑奇妙なことには、人間にはそれぞれピークというものがある。そこを登ってしまえば、あとは下りるしかない。
それはどうしようもないことなのだ。そして、そのピークが何処にあるのかは誰にもわからない。まだ大丈夫だろうと思っている。そして、突然その分水嶺がやってくる。ある者は、十二歳でピークに達する。ある者は死ぬまで上がり続ける。ある者はピークで死ぬ。


🐏意志のあるところに 方法は生じるものなのだ。


🐑同世代の人間と話していると、確かにある種の手間が省ける。


🐑「様々な物を愛そうと努めれば、ある程度までは愛せる。気持ちよく生きていこうと努めれば、ある程度までは気持ちよく生きていける。」
「でも、それ以上は無理なのね ?」
「それ以上の事は運だ。」


🐏「暗示性が具体的な形をとるのをじっと待って、それから対処すればいいんだと思う。」
「それ、どういうこと ? 」
「待てばいいということだよ。」「ゆっくりとしかるべき時が来るのを待てばいいんだ。何かを無理に変えようとせずに、物事が流れて行く方向を見ればいいんだ。そして、公平な目で物を見ようと努めればいいんだ。そうすれば、どうすればいいのかが自然に理解できる。
でも、みんな忙しすぎる。才能がありすぎて、やるべきことが多すぎる。公平さについて真剣に考えるには、自分に対する興味が大きすぎる。」


🐏その前に結び目をきちんと整理しなくてはならない。中途半端なままで、物事を放り出すことはできない。そんなことをしたら、その中途半端さを次の段階までずるずると引きずっていくことになる。どこまで進んでも、すべての事物が中途半端さの薄暗い影に染まることになる。そしてそれは、僕の理想とする世界の在り方ではない


🐑何かがやって来るのを待てばいいのだ。手詰まりになった時には、慌てて動く必要はない。じっと待っていれば何かが起こる。それはいつか必ず動くのだ。
もし、それが必要なものであるなら、それは必ず動く。


🐑言葉にならないものを大事にすればいいんだ。それが死者に対する礼儀だ。時間が多くの部分を解決してくれる。時間が解決できないことを君が解決するんだ。


🐑人というものは、あっけなく死んでしまうものだ。だから人は、悔いの残らないように人と接するべきなんだ。公平に、できることなら誠実に。
そういう努力をしないで、人が死んで簡単に泣いて後悔したりするような人間を僕は好まない。


🐏本当に何かをやるというのは、惨めに混乱して骨の折れることだよ。意味のない部分が多すぎるしね。
でも何かをしたくなるっていうのはいいことだ。そういうものがないと上手く生きていけない。


🐑どんなものでも いつかは消えるんだ。
我々はみんな移動して生きてるんだ。
僕らのまわりにある大抵のものは、僕らの移動に合わせて みんないつか消えていく。それは どうしようもないことなんだ。消えるべき時がくれば、消える。そして消える時がくるまで消えないんだよ。


🐏🐑🐏🐑🐑後記
「こと花」へようこそ。訪ねてきて下さってありがとうございました。😌
古いホテルの亡霊の残りが、それを壊して作られた新ホテルの中に現れ、その暗闇の世界には羊男が住んでいる。住んでいて、この世( 現世)とあの世(幻想)の結び目を繋いでいる。怪奇小説かと思ったけど、違いました。これは村上氏の生き方に対するメッセージですね。
主人公は偶然再会した羊男に、主人公がこの世で失った大事な存在のせいで、現実の自分に結びついていない、と告げられます。そう言われた主人公が自分を取り戻す為に選んだ道は、音楽の続く限り「踊る」ことでした。
村上春樹の際立った文章の特徴は、心に訴えかける「文体」と「メタファー」と言われています。メタファーとは、比喩の中の一種で暗喩、暈しとでもいいますか、局所のみならず世界全体を陰喩で表現し、まか不思議な世界を作りあげることです。ですから登場人物の羊男とか、ここは現実なのか幻想の世界なのか「ここはどこ、私は誰?」みたいな戸惑いを感じたりします。
読んでいる最中は、この作者は一体何を言わんとしているか疑問だらけでした。けれど今一度、抜粋したものを読み直してみると納得いきました。
本を読む際には、年齢や経てきた経験、時代、心理状態等々、色々な事が大きく関係してきて理解の程度にも結びつくんだなあということにも気付かされたりしました。

7月、熱中症等 お気をつけて、快適な夏場をお過ごし下さい。