「おはようございます。本日10時のお約束で二次面接……」
「そちらへ行ってください」
昨日の電話のことも、またここで起こったこともすべて水に流すことにした。
気分を新たに精一杯爽やかな声で挨拶をしたつもり。
にもかかわらず、受付の女性の対応は信じられないくらい冷たかった。
何か嫌なことでもあったんだろうか?
それくらいシャットアウトされた感覚。
まるで私がくさい臭いの元みたい。
もう一度場所を確認したかったのだが、もう彼女は私のほうを見ていなかった。既に忙しそうに
他の仕事に取り組んでいた。
どうしようかと思ったそのとき。
"Hi, Kagefumi. Do you remember me?"
昨日来たばかり。
それにかなりインパクトのある外見。
しかも日本人ではない。
イタリア系のアメリカ人。
いくら私の記憶力がたいしたことないといっても、忘れるわけがない。
"Of course. I remember you."
本当なら、もう少し気の利いたセリフを言うべきなんだろう。
ただいかんせん、英語の能動的に使える語彙があまりにも貧困。
ほぼ相手のセリフを繰り返したみたいなものだった。
"I'm glad that you're back here. It's gonna be a lovely day!"
"Thank you."
彼が最後に言った"lovely day"という意味をひょっとするとはき違えたかもしれない。
だが私を見る彼の目の輝きが、なんだか怖かった。
同性同士の会話ではない気がした。
今まで人に愛されたことがないが、でも愛がこもったセリフに聞こえてしかたなかった。