―――もしもし。北川さんの携帯電話ですか?
「はい、そうです。先ほどは貴重な時間を頂戴しまして、どうも有難うございました」
電話の主がカエルであることは、すぐに分かった。
と同時に、採用を確信し、かなり力の入った声で礼を述べた。
―――北川さん。正直言って、あなたを採用すべきかどうか迷ってます。
「はい? ど、どういうことでございますか?」
今までそれほど多くの採用面接試験を受けているわけではない。
しかし常識的に考えて、こんな心境を正直に告白する失礼極まりない採用担当者は他にいない。
しかし、腸が煮えくり返ることはなかった。
正直、呆然とするほかなかった。
―――ですから、あなたを採用すべき人物と認められないんです。
「認められないってことは、不採用っていうことになるんでしょうか?」
―――そういった連絡ではないから、ほとほと困っているんです。
彼が、いや彼らが困っているかどうかなんて、私にはどうでもいいこと。
ただそんなことを私にぶつけてくるのは、理解の域を超越している。
そんなことを聞かされた私のほうがもっと困るということを、彼は気づいているとは思い難い。
この学校が大好きとか、そういう理由でこの職に応募したのではない。
だからこの学校が好きになれなくても、まったくそんなことは歯牙にもかけない。
私にとっては、この職を手に入れることだけが最大の関心事。
―――You know what I mean?
「えっ? どうして英語なんですか?」
言うべきではないのは分かっている。
でも、咄嗟に体が反応してしまった。
私よりは、このカエルのほうが英語の単語とか知識は間違いなくやまほどあるだろう。
しかし、彼の発音はひどすぎる。
インド人もびっくり。
そんな彼が英語で私に話しかけたものだから、思わず理性が抑止力を失ってしまった。