消化器外科病棟で働いていた時に、看護研究として術後せん妄リスク評価の指標作りをしたことがあります。

※術後せん妄:手術侵襲によって起きる混乱状態
見当識障害(日時や場所がわからなくなる)、興奮、妄想幻覚、記憶力低下など。
一過性で身体の回復と共に改善される。

術前にチェックリストを用いて、術後せん妄のリスク因子を把握し、因子の多さ(リスクの高さ)に応じて対策を講じていくというものでした。

ルートやドレーンなどの誤抜去や転倒予防、抑制帯の使用の有無など、患者さんの身体の安全のためです。

もちろん、術後も評価をして不必要な対策をやめる適切なタイミングを見極めるためにも使いました。

人権やQOL(生活の質)を守るために、日々変わりゆく術後経過に合わせるためです。

その指標、チェックリストに入院前の認知機能(認知症の有無)や身体機能(歩行機能や聴力など)、既往歴、手術侵襲の大きさなど入れていたわけです。で、そこに発達障がいなんてものはありませんでした。

もし、それが事前にわかることが出来たなら、このチェックリストに入れていたでしょう。

指示の通りやすさ、記憶力、感情のコントロール、衝動性など、より細かくアセスメント出来たかもしれません。

そして取り得る対策が他にもあったかもしれないし、それらを患者さんや家族に伝える時の伝え方を工夫出来たかもしれない。

そしたら患者さんの治療や入院生活についてもう少し理解できて、不安をもう少し取り除けたかもしれないなと思うのです。


他にも雑念として…

術後せん妄だけでなく、神経発達症と認知症に関連性はないのかなと思ったりして。全くの別の現象として起きるものなのか、神経発達症のメモリーの少なさは認知症に影響を及ぼさないのかとか。

より日常に近いものとして利用する在宅看護とか、老健施設とか介護サービスでも、情報として知ることができたら、サービスの提供の仕方が少し変わるんじゃないのかなとか。利用者側もより良いサービスを実感できるようになるとか。

対応する側が苦労することに変わりはないけど、情報が一つ増えて多角的に見ることができたら、何か変わるかもしれないのでは。なんて。


とにかく、発達特性があることは恥じることではないのですよ。

自分を正しく理解して、相手にも正しく理解してもらえたら、生きづらい思いは少し減らせるかもしれないし、アイデンティティの確立に実は大事なことかもしれない。

自分にどんな発達特性がどの程度あるのかを知ることは、その後の人生を豊かにできるヒントになるかもしれない。

ライフステージで何かあった時も、特に何もない時も、入院するようなピンチの時だって、「何回聞いてもわからない」とか「忘れちゃった」とかで不安が増強したり、「そんなこと言われてない」なんて医療従事者への攻撃性が増したりなんてことを防げるかもしれない。

そんな風に思うんですよね。

現場に戻らないので思うだけなんですけどね…