保護者側から見た放課後児童クラブは、働いている間の預け先としてのニーズしかないのでしょうか。

意識調査したら面白い結果が出そうですよね。どなたか研究していませんか。

公立や過疎地域にある放課後児童クラブの場合は特に、そこに預け先が存在することだけがニーズになっている場合もあります。

しかしながら放課後児童クラブは、そのニーズのためだけに存在しているものではありません。

児童健全育成事業ですから、現場は学童期の児童保育であり、担う業務も多岐に渡ります。

家庭保育と幼稚園や保育園での保育の積み重ねが大前提にあり、その上に学校での教育、そこに並列して放課後児童クラブがあるはずなのですが、どうもそうイメージしているのは現場の支援員のみなのです。

自治体の公務員からは「ただ子どもを見ていればいい」「安全に過ごして親に返せればいい」と言われます。


保護者も似たようなものと思います。放課後迎えに行くまで遊べる場、宿題終わらせとく場と思っている方もいますよね。

現場は様々な発達の子ども達と向き合うべく、まるで療育と化しているにも関わらず。誰も子ども達がどういう保育環境でどんな介入を必要とし、実際介入されているのか知ろうともしません。

ただ子どもを見るということは、保育でも何でもありません。

保育はアセスメントし、介入し、それを継続して積み重ねます。

例えば子ども同士が喧嘩をします。ただ子どもを見ている人は、原因を探して双方または片方を注意します。子どもを保育している人は、まず日頃から気持ちを上手く伝えられる子か、言動の攻撃性などをアセスメントしています。そして言い分を双方から聞きながら真実を探します。決して否定はせず、それぞれの気持ちを代弁しながら相互理解を支援します。そして子ども達と一緒にどうしたら良いか話し合って決めます。これを時に毎日行います。

大人の中には、「喧嘩ばかりしている」と言う人がいます。ですが、子ども達が揉める時、必ず理由があります。そこに双方の性格や特性が絡んでいることも多く、ただその場を収めただけでは何の解決にもならないことがほとんどです。

これがただ見ることと保育の違い、無資格者と有資格者の技術の違いだと思います。


保護者としてどちらを望みますか?

望まれなくても現場はこのように保育しているのです。このように保育する必要が学童期の子ども達にも必要なのです。

このように望まれなくても高い保育技術を必要とされる現場と、我が子や子ども達がそんな風に介入されていると知らない保護者や設置者の間で齟齬が生まれるのは当たり前だと容易に想像できますよね。

それが積み重なることで何が起きると思いますか。

現場の支援員だけが苦悩して疲弊していきます。どんなに子ども達のためにと頑張っていた人達も士気や向上心が低下していきます。

私自身も他職種としての視点や個人の能力を使ってくれとは言いましたが、無駄遣いしてくれとは言っていません。

放課後児童クラブの在り方はこうですよ、こうしていきたいですよと何度言ってもかきけされ、へし折られ続ければ、さすがの私もこう思うわけです。

ああ、なるほどね。この自治体はどうしても放課後児童クラブの質は上げたくないんだな。ただ預かることだけをやりたいんだな。現場の人材を大事にする気も無いんだな。

そうか、そうか。ただ見ていることだけを求められているのか。ならば、ただ子どもを見ているだけにしよう。喧嘩の仲裁も発達障がいで困っていても、最低限の関わりでやめておこう。深く考えても無駄だ。

ただ子どもが怪我をしないようにだけ見ているだけで時給がもらえるなら、そんな楽な仕事はないな。これは無能でも出来る仕事らしいよ。

こんな風に思う人間に、大事な子どもを預けたいと思いますか。いくら預けられればOKと思っていても、嫌悪感抱きませんか。

支援員のやる気を削いで、保育の質を低下させる魂胆でもあるのでしょうか。

実際、保育の質を向上出来ない所で何が起きていますか。

事件、事故、ニュースにならずともインシデントは沢山起きているはずです。



さて、この現場の実情が保護者や地域社会に伝わらないは支援員側にも問題もあります。

どんな保育環境を整えているのか、保護者や地域社会への情報提供が圧倒的に足りていません。

月に一度程度手紙は発行しますが、私の働く放課後児童クラブは多少の子ども達の様子やお願い事項ばかりでした。

迎えの時間は子ども達の様子を話しますが、支援員の頑張りが伝わることが目的の会話ではありませんからね。

不一致を改善するためにはどうすればいいのでしょうか。

一つはやはり現場からの情報提供の質を考える必要があります。

【設備運営基準第5条第3項】
放課後児童健全育成事業者は、地域社会との合流及び連携を図り、児童の保護者及び地域社会に対し、当該放課後児童健全育成事業者が行う放課後児童健全育成事業の運営の内容を適切に説明するよう努めなければならない。

とありますから、そもそも自治体からの案内も設置目的等について、省かずに記さねばいけないのではないでしょうか。

支援員はどんな人物が揃っているのか。それこそ看護師や保健師、発達支援アドバイザーなどの資格の保持を明らかにすることも、組織や支援員の信用度を上げるために有効かもしれません。

日頃支援員が子ども達とどう関わっているか、具体的に示すことも大事かもしれません。例えばおやつの提供について、与えられたものを食べるだけなのと、自分で選んで食べるのとでは違いますよね。自ら選択するということを大事にしていますと手紙で紹介するだけでも、印象は変わってきます。

どの程度自由に手紙に表すことが出来るかはわかりませんが、やってみる価値はあるかもしれません。



もう一つは、そもそも放課後児童クラブや学童保育所が何のためにあるのか、正しい認識をしてもらうための啓蒙活動を、このシステムを作った大元の国なり自治体が責任を持って行うことでしょう。

ミスリードすることなく、預ける側と預かる側の双方が正しい認識を持ち、共に子どもの成育を見守る関係を作らなければ、システムの限界は必ずやってくるでしょう。