それでは地域の実情に合わせる必要があるのはどんなものでしょうか。

それは例えば利用人数が少ない曜日の支援員配置数でしょう。

筆者の放課後児童クラブは、土曜日の利用人数が平均2人です。それを3人いる放課後児童支援員のうち2人が午前一人午後一人でみています。

ある日自治体職員から通達がありました。自治体内の他の放課後児童クラブと統一します。土曜日も常勤二人体制にします。

確かに支援の単位ごとに2人以上配置(うち一人は補助員可)が参酌すべき基準としてあります。

しかし、児童2人に支援員2人必要でしょうか。いいえ、不要です。加配が必要な児童ならば必要かもしれませんが。

そして自治体内の他の放課後児童クラブは、参酌すべき基準以上のマンモスクラブです。

また勤務時間も、以前は児童の全体数や特性を踏まえて、下校時間以降に支援員を2人配置していました。

それをマンモスクラブに合わせるからと下校時間の2時間前から1人を配置し、帰宅時間や児童の遊びやトラブルのピークが重なる時間に勤務終了を迎えるという全く現場の実情に合わない統一がなされたのです。


保育の質を考えた時、合わせるべき先は参酌すべき基準以下で運営しているの放課後児童クラブではないでしょうか。

児童数の多い所に少数の所が合わせて、保育の質を下げようとする意図が全くわかりません。

なぜこのような向上させなければいけないはずのことに逆行するのでしょうか。

理由は簡単です。

設置者の放課後児童健全育成事業に対する無理解と現場の声を聞かないことが原因です。

公立の場合特に、放課後児童クラブの設置者は自治体です。公務員が我々放課後児童支援員の所謂直属の上司にあたります。

彼らは事務職であり住民サービスのプロです。

国や自治体が示した制度や施策の概要については知っています。しかし、放課後児童健全育成事業の目的や放課後児童支援員の役割については学んでいません。

結果、本質からずれた発想をしても誰も軌道修正出来ないのです。

出来ないのなら、無知ならば、有資格者に聞けば良いのです。現場を見に行き、支援員の話を聞けば良いのです。

しかし、その発想も彼らにはありません。

配置人数についてもう少し述べてみたいと思います。

自治体の議会での答弁を見ると、その市町村が学童保育をどう見ているかがよくわかります。

ある議員が参酌すべき基準よりはるかに多い人数で運営していることについて改善する意思はあるのか問いました。

答えた者は、各放課後児童クラブの利用人数に対する支援員数を挙げて十分基準を満たしていると言いました。

それは15人の利用人数に対して2人の支援員しかいない放課後児童クラブに対してもでした。

一週間は7日、そのうちの6日開所し、夏休みや冬休み、春休みは朝から夜までです。

常勤者2名で6連勤なら可能かもしれませんが、果たしてこれが基準を満たしていると言えるのでしょうか。

実際にこの放課後児童クラブがどのようなシフトで行われているのかわかりませんし、補助員数についての言及が無かったため、支援員としての総数なのか、別に補助員がいるのかはわかりません。

しかしいずれにせよ、数字だけ見ていて、現場が実際どのように回っているか、それが保育の質の維持向上にどう影響しているか、労働環境としてどうかといった点に全く着眼していないことは伝わってきます。

このような答弁を見聞きすると、その自治体が学童保育、つまりは学童期の児童への支援について、どう取り組むつもりなのかや熱量がどの程度なのかがわかります。

ぜひ、ご自分の自治体がどのような姿勢なのか、知ってください。

ただでさえ、保育・教育の地域格差は大きくなる一方なのに、地方自治体に子育て支援の熱量すら無かったら絶望しかありませんよね。