新しい年があけて、年始に仕事等のエンジンがかからない時によく「お屠蘇気分が
まだ抜けていない」等と表現しますが「お屠蘇」がお酒であることすら知らない方が
多くなっていると聞きます。今回はその「屠蘇」についてお話したいと思います。
私は以前日本の漢方には「古方(コホウ)」と「後世方(ゴセイホウ)」の大きな
二派があるとお話したと思いますが(まだかも知れない、また書きます)
その後世方の中心人物である孫思邈(ソンシバクまたはソンシビョウ581?-682)が
屠蘇は「鬼気を屠絶し、人魂を蘇生(省)する効能がある」と仰ったそうです。
ただ本来お屠蘇というのは屠蘇散という処方がありお正月の三が日で一献から
三献を服用するそうです。そしてその一献が屠蘇散なのでお屠蘇というお酒と
いうよりも習慣になったようです。お正月にお酒と一緒に服用する屠蘇散の
処方内容は諸説ありますが、一般的には白朮(ビャクジュツ)桂枝(ケイシ)桔梗
(キキョウ)防風(ボウフウ)で山椒(サンショウ)を入れます。白朮は以前に
「関節痛」で触れましたが和名をオケラと言い
京都の八坂神社(一般的には祇園さん)の初詣はオケラ参りとも言いオケラで
作った小さな輪に祇園さんからもらった火を付けてくるくると回しながら消えない
よう家に持ち帰りその火で年始のご飯を炊くと無病息災であると言われています。
この処方では健胃剤また利尿剤として入っておりお餅の食べ過ぎよる水毒(簡単に
言うとこの場合は浮腫み)を防止します。実はもち米は漢方で言う水の巡りを緩慢
にします良い方向ではそれこそ餅肌つまり弾力性のある肌を作りますが悪く出ると
浮腫みます。桂枝は血の循環を良くし体を温めながら悪い熱を発散させます(反対
のようですが発散させる熱は風邪を引いたとき等の熱とご理解ください)桔梗は
袪痰(キョタン痰を切ります)白朮と一緒になって水毒の除去をします。防風は風
による病気(この場合は風湿つまりリュウマチ・風邪等)を防ぎます。また、山椒を
入れた場合やはり桂枝の作用を補助します。
屠蘇は華佗(後漢;109?-207?)が配合して孫思邈等の歴代の医聖が推薦していま
すがその処方内容は多種多様で、今回はその中でも一般的な宮中の作法による
一献から三献までのお話をいたしますが、屠蘇酒はお正月の風俗となり、あちこち
で伝承されています。中には屠蘇風呂という入浴剤もあります。そして屠蘇という
「神話」は百病を予防したり治したりするだけでなく、吉祥を与えて福祉を降ろすと
まで言われるようになっています。そして二献と三献ですがこれは次回に触れたい
と思います。ハイ!引っ張ります。
今日の1曲はPatti Pageで「You Belong To Me 」です。