甲子園思い出の投手 松尾洋和 | ほぼ日刊ベースボール

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野球選手の熱い過去や意外な背景を主な切り口に、野球への熱い想いを綴ります。

佐賀商の劇的な優勝で幕を閉じたこの年は、九州勢の活躍が目立った年だった。そして中でも、近年の清峰並みの旋風を巻き起こした学校がある。

「県内有数の進学校」、「優勝候補を破ってのベスト8入り」、ユニフォームやスクールカラーから「青い旋風」と称された長崎北陽台である。




1回戦関東一高を2-0と完封勝ち、2回戦宿毛を4-1、3回戦中越を3-2、準々決勝でエースの松尾洋和が連投の疲れから樟南打線に捕まってボコボコに打たれて5-14で負けた。


関東一が相手をナメてかかっていたというのもあったかもしれない。小江主将がセンターへの大飛球を背面キャッチしてピンチを救った大ファインプレー。

全くの無名校がノーマークだった強豪校を破って快進撃だったが、打線は絶望的な貧打線。確かチーム打率が2割そこそこだった。

いかに松尾の力が大きかったか分かる。




準々決勝、樟南打線に打ち込まれて最後のマウンドに上がった松尾の天を見上げた笑顔は今でも忘れられない。「やるだけの事はやった」という感じの表情だった。




松尾はその後慶応大に推薦で入り、卒業後は社会人野球の大阪ガスへ。

何でも本人は九州大志望だったのが(九州六大学リーグで野球が出来る)、浪人する可能性もあったので監督の勧めもあって慶応大にしたのだという。

しかし慶応大ではエースと期待されながら思うほどの活躍をできず、社会人の名門、大阪ガスへ進む。




大阪ガスでは能見篤史投手が阪神に入団した穴を埋めるべく現在主戦級として活躍中。昨年の第76回都市対抗野球大会で補強選手に選ばれて2試合に先発した。

第57回JABA京都大会ではチームを優勝に導き最優秀選手にも選ばれている。

 

長崎北陽台の活躍を取り上げた本「青い旋風in甲子園―ドキュメンタリー’94 県立長崎北陽台高校野球部の熱い夏」に当時の様子は詳しい。

因みに長崎北陽台のメンバーは松尾投手以外全員国公立大に進学。これは甲子園出場校中新記録だったという。




余談だが、現在長崎北陽台ではベスト8入りした時の外野手で主将だった小江が長崎大学教育学部を卒業後、昨春から晴れて母校の監督に就任した。歴史がどう受け継がれるのか、楽しみである。